歌手の石井竜也と、11月から海外ドラマ専門チャンネルAXNで放送される海外ドラマ『シカゴ・ファイア』『シカゴ P.D.』『シカゴ・メッド』とのコラボレーションが実現した。

 最新アルバム『DIAMOND MEMORIES』(9月27日発売)に収録された新曲「希望の未来へ」「砂の中の宝石~放浪者~」「虚構の光」がそれぞれのドラマのエンディングに使用されることが決定した。

 これらのドラマは、『シカゴ・ファイア』の放送を皮切りに、それぞれスピンオフの形で『シカゴ P.D.』『シカゴ・メッド』といったドラマが制作された。アメリカ・シカゴを舞台に消防士、警察官、救命病棟という、街を支える者たちの、人間模様を描いている。

 石井の最新アルバム『DIAMOND MEMORIES』は、渡辺真知子や八神純子、村下孝蔵さんにペドロ&カプリシャスなど、石井が敬愛する昭和の代表的なニューミュージックの数々をカバー。加えて石井が思いを込めて作ったオリジナル楽曲をちりばめた内容で、「希望の未来へ」「砂の中の宝石~放浪者~」「虚構の光」は、すべてこのアルバムのために作られたオリジナル楽曲となっている。

 今回は石井のこのドラマに対する印象や、コラボレーション楽曲への思いを語ってもらった。【取材・撮影=桂 伸也】

ドラマとの共通点、シカゴという街と70年代の日本

――石井さんは海外ドラマはよく見られますか? またこの『シカゴ・ファイア』『シカゴ P.D.』『シカゴ・メッド』というシリーズ作品に対して、どのような印象を受けられましたか?

石井竜也

 そうですね、『ツイン・ピークス』あたりから見ています。結構、いろいろ見ているけど、やっぱり向こうのドラマって、もうほとんど映画。確立されていますね。ただ、60年代頃のドラマを見るとまた違いもあり…、一方で『フレンズ』とかは、うちの嫁さんなんかが見ながらゲラゲラ笑うわけ。僕が見ても「何が面白いんだ? これって?」ってなるんだけど(笑)。

 まあそんな中で、海外ドラマは『X-ファイル』とかいろんなヒット作がありましたけど、荒唐無稽なものが多かったところに、だんだんアメリカの現実を露出させるようなものが増えてきた感じ。そんな傾向は社会的に、世界的にリアルな危険性みたいなものを、どこか世界中の人々がより感じるようになっている現れなんじゃないかと思うんです。

 例えばヨーロッパだったら移民問題とか、アメリカだったら今の北朝鮮情勢とか。それも今、僕たちがいるこの場所が中心地になっているわけで。今、あちこちで火種が起こっている状況がありますよね。

――本当に多くの問題がありますね。

 だからこういうドラマが世界的にヒットしていくというのも、どこかに自分たちとの共通点が見え隠れしているからなんじゃないかと。今までだったら「虹の向こうに、何がある?」なんて騙されていたところが(笑)。

 騙されなくなったんじゃないんでしょうか、「そんな綺麗なもんじゃないよ」って。だから歌も変わってきていると思うし、今回このドラマは、こんな世の中に合っていると思ったんですよ。

――石井さんが提供された楽曲は、不思議にフィットする感じがありますね。

 それは例えば、楽曲のバックグラウンドにある70年代頃の日本は、高度経済成長期ど真ん中で、大変な時期だったけど、逆にそれは活気がある時だったということがあるんじゃないでしょうか。

 マイナーな曲でも受け入れられたんだと思うし、実際それはヒットしたし。メロディが綺麗で、歌詞の世界が手に取るように分かったりすると、それが受けていた、それくらい人間が強かったんだと。

 だから「がんばれ! 明日はあるんだよ!」みたいなことを「今日も生きていけないんです…」みたいな人には言わないと(笑)、やってやれない感じ。だからそういう歌ばかりなんですよ、「元気を出そうよ」って。でも今は、それさえもカンフル剤にはならない時代になったと思う。とにかく忘れたいな、何かねえのかな、という感じで。

――なるほど。話は変わりますが、このシリーズでは消防士、警察官、医師という職業の人間を中心としたドラマがありますが、石井さんとして、この3つの職業のうち一つを選ぶとしたら、どれを選びますか?

 どうでしょう…。まあ、そんなに大変な火事は度々ないだろうな、と思うから「ファイア」ですかね(笑)。そんなに毎日はないでしょう、ブワーっとかいうのは(笑)。まあボヤが出ました、というので消しに行ったらワーッと拍手喝采を浴びて「いや〜大したものは消してないんだけど…」と照れ笑い、みたいな(笑)。

――でも消防士の方は、事件がない時も毎日、かなり体力作りを精力的に行われてますけど、それも大変そうですが…。

 そうなんですよね。毎日やらなければいけない。だから実は一番ハードなのは、下手すると彼らなのかもしれない。火の中に入って行くって、自殺行為もいいところじゃないですか? だからある意味ハードですよね。正直言うと、僕はどれも勘弁してほしい(笑)。

 でも、逆にこういった人たちがいなければ、巨大な街というのは形成されない。ある意味では戦士なんですよね、街を守る。どっちかというと善の方にいる。悪の方に行っちゃいけない。でもそれに限りなく近いところまで接近しなければいけない人たち。

今の世界を表すという部分で共通しているんじゃないかと

――今回は3つのドラマに対して、一度に3曲同時にタイアップということですが、こういった機会というのも、なかなかないですよね。

石井竜也

 ないですよね。「どうですかね? こんなお話があるんですけど…」とオファーをいただいた時は「いや、これ嘘だろ? 1曲じゃねえの?」って言ってたんだけど、「3つっすよ」って。「どうかしてるんじゃねえの?
って思ったけど(笑)。

――でもこのドラマはシリーズなので、確かに違うアーティストから違うテイストのものを出してくるよりも、一人のアーティストのものを出してきた方が、関連性は見えてくる気もしますよね。

 米米CLUBでデビューして今年で32年目なんですけど。今回、ソロでこうやって3曲、しかも大ヒットアメリカンドラマに使っていただく、しかもこのアメリカの縮図みたいなドラマ、人間関係とか、全部含めて。

 このドラマの様に緻密に人間関係をえぐっていくようなものは、何十回とやらないとやっぱり、掘り下げていけないというものがあるし、ドラマに使われるのは、何度も聴いてもらえるというのもある。

 一回かかるごとに、そのドラマとの相性もどんどん深まっていくし。だからすごく光栄で、嬉しいですよね。曲や詞なんかにも、自分が色濃く出ているし。それを色濃いアメリカンドラマに使われていくというのは、絶対に相性がいいだろうなと思います。

――今回使われた3曲についておうかがいしたいと思います、石井さんがリリースされた最新アルバム『DIAMOND MEMORIES』に収録されているこれらの曲は、どれも新曲ということですが、これは先にドラマを見て書かれたのでしょうか?

 いや、これはもうアルバムができている時点で、タイアップという格好だったんです。だけど実はこれは入れないはずでした。

――そうだったんですか?

 今回はほとんどがカバー曲で、「MEMORIES」っていうくらいですから、カバーアルバムで締めくくろうと思っていたんです。ただその中で、僕がその時代の雰囲気をちょっと匂わせるような楽曲を作ってみたいな、と思って。

 それで、やっぱりオリジナル曲を出してきてなんぼのアーティストなので、ここで何曲かはちゃんと自分の楽曲で、こういう人たちの中でも負けない楽曲を入れておかないと絶対だめだと思い、十数曲作ったんです。

 その中でこれはいけるなという曲を中に入れて、なおかつ同じアレンジャーにアレンジさせました。案の定、ほかのエッセンスと相性があってきて、良い雰囲気になってくれましたね。

――そうでしたか。でもドラマを見ずに作られたということでしたが、曲の雰囲気がそれぞれのドラマのバックグラウンドをすごく感じさせる雰囲気もありましたね。

 それは多分、今の世界を表すという部分で共通しているんじゃないでしょうか。アメリカの情勢とか、世界で巻き起こっていること。こんな中で「みんな、夢を見ようよ!」って言っちゃっても、なかなか「いつ見せるんだよ!」っていう話になるし(笑)。

 ここ50年くらいの間に生まれた人たちは、今起きていることに遭遇したことはなく育っているわけで、現在初めてこんな経験をしているわけです。開戦前夜みたいな事態もある中で「俺、来ちゃったんだな。しかも俺、歌っちゃったよ」って。そんなことも手伝っていると思うんです。

――確かに、近年は深刻とも思える状況もあちこちに起きていますね。

 その中でアメリカの社会は銃社会でもあるし、ある意味では鍛え上げられている社会でもあると思うんです。いろんな人種も混ざっているし、そこにはいろんな暗躍もあったと思う。その中で、それを必死になって食い止めようとしている、社会的に貢献しようとする人がいる、対してその人にはいろんな誘惑や落とし穴がある。このドラマに描かれている職業は、その中で暗部に入っていかなければいけない職種じゃないですか?

――厳しい環境下の職業だと思います。

 その中でも『シカゴ・ファイア』は正義感というか、それが一番求められるものという印象があります。『シカゴ・メッド』『シカゴ P.D.』の救命医や警官って、もちろん正義感もそうなんだけど、どちらかというと社会の影の方で、一生懸命がんばっている。

 消防士というのは、どちらかというと表に出ていくような、でも普通だったら本当に10〜20cmの差で命が変わっちゃうような世界だという話を聞いたことがあります。それと必ず古参の人と若手が必ずペアで入っていくそうなんですよね。

 それで仕事を教えながら、しかもそいつを助けていかなければいけないし、自分の身も守らなければいけない。そしてそこで倒れている人を助けなければいけないという一番の使命がある。本当に大変ですよね。だからちょっと応援歌みたいな感じの雰囲気にしたんです。

――使用されている楽曲「希望の未来へ」は、本当に後押しされそうな雰囲気の楽曲ですよね。比較して「虚構の光」「砂の中の宝石~放浪者~」は、かなり暗いというか、切ないというか…。

 やっぱりあとの2つは、笑えないと思うんです。よく映画にも取り上げられるというところからも分かる通り、それだけハードな仕事だと。だって、人の嫌なところを見に行くわけで。

 「一生見なくて済むのなら、そんなもの見ない方がいい」という場所に、敢えて行かなければいけない職業ですよね、警官と救命士って。だからどちらかというと厳しい、またはささくれ立った歌というか、そっちの方が合うなと思ったんですよね。

――なるほど。その中でも『シカゴ P.D』の楽曲「砂の中の宝石~放浪者~」は、そのイメージもありますけど、その中でも時に希望が見えるようなメロディがポッと出てくるような感じがあって、面白いなとは思いました。

 これは僕が、ある設定をして作った歌なんです。とある軍隊が、砂漠の遊撃隊として送り込まれるイメージを思い浮かべたんです。ところが、やっぱり仲間は死んでいく、砂漠の熱さにやられていく、そして何と戦っているかも分からない、さらに水もなくなっちゃって。こんな銃なんて持って歩いていたら、とてもじゃなくて生きていけない、だから捨てていく。

 そして裸で水を求めている自分しかいない。そこでオアシスを見つけた時には、戦争をやっていることなんて、忘れていると思うんですよ、既に。しかも水を飲んだ瞬間に「俺、ここに何をしに来たんだろう?」と考えるんですが、そのオアシスからまた、砂漠を通って帰れるかというと帰れない、自分の家に。そうすると、その戦士はそこでどういう考えに行きつくんだろう? ということを思って作った曲なんです。

――設定が明確ですが、その戦士の心情という部分も深く伝わってきますね。

 だから今、こんな状態にあるアジアの片隅の歌手が、何を歌うんだという時に、僕たちが未知の世界、分からない世界にさらされているいるわけですよね。ひょっとしたらこの一人一人が戦死になるかもしれない。

 可能性はあるじゃないですか? そんな時に、俺たちは何に向かっていくのだろう?だからこういう何か、ある意味では何に向かっていくのかも分からなくなってしまった戦士を歌ってみたいな、と思ったんです。

――アルバムでは一曲目に収録されていますね。

 そう、これを1曲目にしていきたいと思ったのは、ある意味ノスタルジックなイメージもあるし、これから起こるかもしれない、巨大な何か、恐怖とかそういうものの時代感じとして、歌いたいなと思って作ったからなんです。

 だからこそこの曲は『シカゴ P.D.』にピッタリきているんじゃないかと思います。砂漠の不毛な雰囲気と、シカゴという街の暗部とが重なって。ある意味では町の戦士ですよね、警察官というのは。

日本でいえば、名古屋。シカゴはアメリカを象徴する街ではないかと

――シカゴという場所について、華やかさとか、その危険なイメージがあるとおっしゃっていたんですけど、このドラマシリーズをご覧になって、その印象に変化はありましたか?

石井竜也

 いや、それはなかったですね。ドラマを見て「やっぱりこう来るだろうな」というのは何となく。まあ監督目線ですけどね。ただ多分シカゴを題材にして何かを作るとしたら、ミュージカルの『キャバレー』みたいなものは作らないだろうな、と。

 『シカゴ』というミュージカル作品がありますけど。あれはシカゴという街のギャングを一つの題材にしたミュージカルじゃないですか?

――ありますね。ミュージカルとしてもとても有名な作品ですね。

 シカゴって、そんな一面がある街なんだと思うんですよね。やっぱりいろんなものが暗躍していたり、ミシシッピとか五大湖の端の方で、ワシントンからもちょっと遠くて、見えないところでいろんなことが起きている。同時に、とてつもないお金も生まれる産業も発展していたり。

 かつてヨーロッパ人たちはニューヨークに入植してきたけど、シカゴまで来たというのは、相当奥地まで行ったという距離感だと思うんです。彼らがそこまでたどり着かなければやれなかったことというのは、何だったのだろう? と考えると、ここシカゴの街というのはアメリカの縮図の様な印象があるんです。

 だからアメリカ人がアメリカを一言でいえば、どこの町か? とたずねられたら、カリフォルニアとは言わないんじゃないかな。例えばシカゴとかボストン、シアトルなんかの方だと言うんじゃないかと思うんです。

――ではやはり、「シカゴ」シリーズというのも、場所が同じとか、そういうことだけじゃなくて、彼らの何か、共通の軸みたいなものが…。

 あるんじゃないかと思いますね。日本人が、日本の真ん中は京都だと思っていないのと同じだと思います(笑)。「日本といえば京都だよ!」なんていう日本人はいないでしょ? でも外国の人に「ドコニ行ッタライイカナ?」って聞かれたら、まずは「キョウト! キョウト!」って(笑)。確かに一番分かりやすいだろうな、って。

 でも本当に日本を分かりたいのであれば、東京でもいっぱいあるから「葛飾に行ってみれば?」とか「江戸川区に行ったら面白いよ」と多分言うでしょう。東京の中でも目立たない、下町情緒が残っている町って、いっぱいあるわけで、市の商店街みたいなものいっぱい残っている。シカゴもきっとそんな一角なんだと思うんですよね。

――言われてみると、確かにという感じではありますね。では、最後にこの海外ドラマを楽しみにしているファンの方にメッセージを。

 例えば、まあ『シカゴ・ファイア』だったら、火事の多い町はどこだろう? 『シカゴP.D』だったら、銃の事件の多いところは? と場所を変えられると、それほど面白くなかったかもしれない。シカゴという、あまり日本人には紹介されていない街、ちょっとまだつかめてない街をポッと見せるところに面白さがあると思います。例えば日本でいえば、世界に向けて名古屋を出すというか(笑)。

 ポッと出された時に、実はそこに縮図があったという、そんな街。そこだと思うんですよね、名古屋って。東京、大阪に囲まれていて、東京、大阪の両方の文化も、さらに日本古来の文化もあって、しかもTOYOTAという大きな会社もあり、経済成長している町で、ボンボンとビルが建っている不思議な街。

 あそこをポッと一つ取ると、日本の縮図があそこにあるような気がするんです。だから世界中からはあまり見られていないけど、日本というものの一つ縮図を見せろと言われて、どこかと言われたら、名古屋とか札幌とか。ちょっとそういうところを出すかもしれないですよね。

――確かに、東京や京都だけだと、逆に「それだけじゃないだろ?」という感じもあるかもしれませんね。

 やっぱり、そういうちょっと外したところに面白みがあると思う。アメリカ人の本音で言ってしまうと、ひょっとするとシカゴという街、ボストンとかシカゴという街の方がアメリカなのかもしれない。だからニューヨークとかロサンゼルスというのは「アメリカを分かってもらうんだったら、そう言っておけばいいか」みたいな。

 シカゴに遊びに行こう、なんてなかなか言わないでしょう。でもやっぱりアメリカを本当に知ろうと思ったら、そういうところに行かないと、本当に分からないと思う。大きな街の中に、いろんな差別とかお金の流通、それに暗躍しているマフィアとか、そういうものがごった煮の様にそこに集約しているところ。でも、そこもやっぱり心臓の一部だと思うんです。

石井竜也 石井竜也 石井竜也 石井竜也 石井竜也
石井竜也

<「シカゴ」シリーズ3部作 海外ドラマ専門チャンネルAXNで放送>
「シカゴ・ファイア」シーズン4 【字幕版】11月2日(木)10:00PM 【二ヶ国語版】11月3日(金)11:00PMスタート
「シカゴ P.D.」シーズン3 【字幕版】11月3日(金)10:00PM 【二ヶ国語版】11月4日(土)11:00PMスタート
「シカゴ・メッド」 【字幕版】12月9日(土)10:00PM 【二ヶ国語版】12月10日(日)11:00PMスタート
※エンディングテーマは、二ヶ国語版の放送後に流れます。

楽曲情報

「シカゴ・ファイア」エンディングテーマ:石井竜也「希望の未来へ」
「シカゴ P.D.」エンディングテーマ:石井竜也「砂の中の宝石 〜放浪者〜」
「シカゴ・メッド」エンディングテーマ:石井竜也「虚構の光」
9月27日(水)発売 ニューアルバム「DIAMOND MEMORIES」収録