レンタル1年目からチームの主軸へと成長。湘南のJ2優勝に貢献した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J2リーグ39節]湘南1-1岡山/10月29日(日)/Shonan BMWスタジアム平塚
 
 それは驚きの決断だった。
 
 2016年シーズン、当時柏に所属していた秋野央樹はJ1で23試合・1得点と、自慢のパスセンスを活かして、ボランチで躍動。柏のバンディエラ・大谷秀和を抑えてスタメンを張る試合も少なくなく、キャプテンマークも託されるほど、主力として活躍した。
 
 しかしシーズン終了後、秋野は地位を確立しつつあったチームを離れ、J2に降格した湘南へのレンタル移籍を決めたのだ。
 
「プレーの幅を広げたい」。その一心だった。
 
 強い覚悟を持って新たなチャレンジに踏み出した今季、リーグ35試合・4得点。秋野はJ2優勝を決めたチームにとって、欠かせない戦力となっていた。
 
 とはいえ、まったく別のスタイルのチームですぐにレギュラーの座を掴むのは、簡単ではなかった。秋野は「自分なりにすごく考えて悩んだ」という。
 
「もともと湘南で1年目から馴染むのは難しいと聞いていたし、自分がやりたいプレーもあったけど、者(貴裁)さんに求められているものもあって……。ただ試合に出るために、まずチームに要求されていることを優先してやった、それにプラスして、自分がやりたいことを上乗せしていければ良いなと」
 
 者監督の下、湘南スタイルに馴染むことで、必然的に秋野のプレーの幅は広がっていった。柏時代は持ち前のパスセンスを活かしてゲームをコントロールする、いわゆるレジスタの印象だったが、今季は球際でのファイトを厭わず、運動量も増加。迫力を持ってゴール前に飛び出す動きも身に付け、決定機に絡む回数も増えた。見違えるように逞しくなった。
 
 秋野自身も「目に見える部分もそうですけど、特に数字に出ない評価されにくいところが伸びた。それこそ、ここに来て求めていたこと。まだまだ改善するところは多いですけど、少しずつ成長しているのかなと」と手応えを語る。
 
 湘南で一皮剥けた感のある秋野は、者監督のある言葉が心に響いたという。
『夢は、全部は掴めないけど、努力した者にしか掴めないものがある』
 
 開幕の頃はやや戦術への適応に戸惑いもあり、4月〜5月にかけて一時期スタメンを外された時期もあった。ただ、その後再び出番を増やしてかけていた秋野は、指揮官からかけられたこの言葉を胸に一層トレーニングに励んだ。そして、定位置を確固たるものにしていったのだ。
 
 不動のボランチに成長した秋野は、湘南のJ1昇格とJ2優勝に大きく貢献。チームが優勝を決めた39節の岡山戦後、秋野に記者からこんな質問が飛んだ。
 
『湘南に来て良かった?』
 
 秋野は少し笑みを浮かべながら答えた。
 
「それは来年になって、J1の舞台でやってみてわかる。その時に『良かったな』と言えれば良いですね」
 
 驚きの決断は正解だったのかーー。23歳のMFは自身の成長を証明する覚悟だ。

【湘南 1-1 岡山 PHOTO】前日にJ1昇格を決めた湘南は悪天候の中戦いドローで3年ぶり2度目のJ2優勝!!
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWeb)