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●プリンティングソリューションズの事業利益は前年同期比34%減

セイコーエプソンの大容量インクタンクプリンタの販売が好調だ。同社は、2017年10月26日に発表した2017年度上期(2017年4月〜9月)の連結業績発表にあわせ、大容量インクタンクプリンタの販売計画を上方修正してみせた。

今年度の新たな計画値は、780万台以上。7月に行われた第1四半期業績発表の席上でも、年初計画の730万台を740万台に上昇修正していたが、それをさらに引き上げた格好だ。前年比でいえば、30%増という大幅な成長を見込み、同社が全世界で出荷するプリンタの45%以上を大容量インクタンクプリンタが占めることになる。

セイコーエプソン 代表取締役社長の碓井 稔氏は、「大容量インクタンクプリンタは、当社の成長ドライバーである」と位置づけており、2018年度以降は、半数以上を大容量インクタンクプリンタが占める可能性も出てきた。

○新興国から先進国まで、大容量インクプリンタの裾野広がる

大容量インクタンクプリンタが好調な背景には、いくつかの理由がある。ひとつは、主力となる新興国での販売が好調なことだ。

碓井氏は、「いよいよ競合が市場に参入してきたが、品質などの差があり、当社の販売は好調。当初想定していた競合の脅威はない。そして、新興国において、大容量インクタンクプリンタ市場そのものが拡大傾向にある」と、差別化戦略が成功している点と、市場成長に自信をみせる。中でも、南米やアジア、インドなどの市場で成長が著しいという。

大量にプリントをする企業において、大容量インクタンクならではのコストパフォーマンスの高さや、インクカートリッジの交換がなくなること、それに伴ったインクカートリッジの在庫確保が必要ない利便性に加え、純正インクの利用による印刷品質の維持、独自のマイクロピエゾヘッドによる耐久性の高さなどが評価されている。

2つめは、先進国市場においても、着実に販売数量を増加させてきたことだ。

「先進国においても、市場認知度の高まりから販売数量が増加し、着実に大容量インクタンクプリンタの販売比率が高まっている。先進国で受け入れられるように、デザイン面も抜本的に見直し、インクのチューニングも遜色がない形にした。11月からは、さらに大容量インクタンクプリンタの販売を本格化する。日本でも柱のひとつになるような拡販体制を取りたい」(碓井氏)

また、同社 取締役執行役員 経営管理本部長の瀬木 達朗氏も、「オフィスや店舗での使用に適したモデルに加えて、日本では、家庭にも適したモデルを充実させることで、先進国でも順調な拡大を遂げている」と言及する。今回の会見では、先進国でも「柱」に位置づける姿勢を、初めて明確に示してみせたといえる。

○プリンタ好調も、増収減益

さらに、先進国を含む需要の高まりに対しても、生産体制を強化、万全な体制を構築しつつあるという。

実は第1四半期、インドネシアの工場が火災となり、部品の調達に遅れが生じて減産を余儀なくされている。だが、第2四半期には急きょ増産体制を敷いて、これをリカバリーした。さらに、インドネシアの工場に加えて、第2四半期にはフィリピンの新工場も稼働。ここでは省人化とともに、大型プリンタの生産にも最適化しているという。

セイコーエプソンが発表した2017年度上期業績は、売上高が前年同期比8.2%増の5273億円、営業利益が14.7%減の536億円、税引前利益が15.0%減の151億円、当期純利益が18.7%減の149億円の増収減益。そのうち、プリンティングソリューションは、前年同期比7.4%増の3420億円、事業利益は5.9%増の359億円となっている。

ただ、第2四半期では、プリンティングソリューションズの事業利益は前年同期比34%減となっており、火災の影響が生産、販売に及んだこと、インクカートリッジ型プリンタの出荷数量の変動による費用計上の増加などが減益に影響している。「第2四半期に増産を行ったことで、残業代や雇用に伴う労務費用の増加、さらには空輸によるコスト増がマイナスに影響している」(瀬木氏)と説明する。

また主要市場の日本では、個人向けプリンタ市場が縮小傾向にあるというマイナス面も見逃せない。

●大容量インクプリンタだけじゃない、エプソンのもう一つの武器

それでも同社のプリンティングソリューション事業が増収増益となっているのは、新興国を中心にした大容量インクタンクプリンタの成長が寄与しており、同時に、販売後のインクカートリッジでの収益確保に頼らないビジネスモデルへのシフトが、安定的な利益を生むことにつながっているからだ。

従来のインクカートリッジによる収益モデルは本体で利益が確保しにくく、年賀状印刷の減少や写真プリントの減少にともなって、インクカートリッジの販売数量が減少。収益性を悪化させることにつながっていた。だが、大容量インクタンクプリンタへのシフトによって、こうした課題の解決につながっている。

しかも、全出荷量の45%を大容量インクタンクプリンタが占めるようになることで、その安定感はさらに増すことになる。新興国から先進国へと大容量インクタンクプリンタの販売を拡大することで、エプソンは、プリンタビジネスの収益性をいち早く安定させることに成功したともいえそうだ。

同社のプリンティングソリューション事業におけるもうひとつの注目点が、2017年6月から出荷を開始した高速ラインインクジェット複合機/プリンタ「WorkForce Enterprise LXシリーズ」の動向だ。

高速性を生かして、既存のレーザー方式の複合機からの置き換えや、軽印刷分野での利用を想定し、エプソンにとっての新たな領域への挑戦として注目を集めていたが、「印刷性能や環境性能への評価が高く、顧客への納入実績も着実に増えている。将来成長を担う製品として順調なスタートを切っている」と、碓井氏は自己評価する。

長野県塩尻市の広丘事業所を拡張し、インクジェットプリンタヘッドの生産体制強化を進めるほか、高速ラインインクジェット複合機/プリンタの投入にあわせて、日本、米国、欧州において販売要員の採用を加速し、販売組織体制の強化を進めている。当初は軽印刷向けの比重が高いと想定していたものの、既存の複写機を置き換える形での導入の割合が多いという。

一方で、「商談そのものは予定通りに進んでいるが、導入を決定していた後に、稟議を通し、決裁し、実際の導入が始まるまでに時間がかかる。我々が考えていたスピードでは売りにつながっていない」とも語る。

○中期経営計画は合格点か

同社では、2016年度から2025年度の10年間にかけて、エプソンが向かうべき方向である新長期ビジョン「Epson 25」を定め、このビジョンの実現に向け、2016年度を初年度とした3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画」を実行している。2017年度上期で、第1期中期経営計画のちょうど半分が終了したことになる。

碓井氏は、「第1期中期経営計画は折り返し点を過ぎたことになるが、戦略は着実に進展していると考えている。インクジェット、ビジュアル、ウェアラブル、ロボティクスの4つの事業領域においてイノベーションを起こすべく、重点分野での販売拡大を進め、新製品の開発や生産体制の強化などの将来に向けた基盤づくりも同時に進めている。Epson25の実現に向けて、粘り強く取り組んでいく」と語る。

主力のプリンティングソリューション事業において、大容量インクタンクプリンタと、高速ラインインクジェット複合機/プリンタの2つの柱が、順調な事業拡大と滑り出しをみせている。第1期中期経営計画の折り返し点は、合格点といえそうだ。