今は排出削減の長期目標、再生エネ導入目標など将来に向けた戦略を問う設問が増えた。ESGを重視する投資家には、CO2排出規制が強化されても成長を継続できる企業を選ぶ材料となる。

 企業も変化が迫られている。排出量の実績なら環境担当者だけで回答できたが、目標となると事業計画と関連するため経営層の関与が必要となる。

 大塚氏は「経営者は生き残る戦略を考えるきっかけになる」と指摘する。長期目標は気候変動が厳しさを増しても、経営を持続可能にする意思表明となる。逆に目標がないと気候変動リスクに鈍感とのレッテルを貼られる。

 次回の18年版から日本も欧米と同様、CDPへの回答は有料となる。お金を払って回答することに価値を感じられない企業は、やめた方がいいだろう。回答を続ける企業は、ESG投資や持続可能な経営にCDPを生かす必要がある。

 すでにCDPをステップにESGへと取り組みを広げている企業がある。アサヒグループホールディングスは15年と16年、気候変動対策でAリスクに選ばれ、泉谷直木会長が報告会に登壇することもあった。グループのCSRを支援するアサヒプロマネジメントの三谷千花マネジャーは「環境や社会問題に取り組む指標としてCDPを意識している」と語る。

 参考となるが質問だ。CDPは社会要請を反映し毎年、設問を変えている。新しい設問を通して、社会が求めていることを社内に伝えられる。調達先を含めたCO2量の収集と検証も、CDPをきっかけに取り組んだ。

 松香容子マネジャーは「ESGでもCDPを重視している」と語る。アサヒグループは中期経営計画の3本柱の一つに「ESG」を据えた。欧米企業は、サステナビリティ(持続可能性)をコミットするのが当然となっている。同社もESGに取り組み、持続可能性を追求する。

 毎月の社長朝礼でもESGを報告するなど、社員への浸透を進めている。松香マネジャーは「事業を通した社会課題解決への貢献を強化しようとしている。アサヒにしかできない事業を発掘したい」と語る。