「今は日本株の買い時ではない」という。それはなぜか(写真:shiii/PIXTA)

日経平均株価の終値が2万2000円を超えた。今後のシナリオについては、目先はさておき、少し長い目で見ると、今年末にかけては下落し、今より低い水準(2万円割れなど)となる。その後2018年に再度上昇基調に転じて、2018年の高値は今よりも高くなる(2万3000円超え)と予想している。こう考える要因を、一部は当コラムで述べてきた点とも重なるが、改めて展開してみたい。

日本国内では、株価の大幅下落要因は見出しにくい

まず、日本国内の投資環境には、日本株が大きく下落しなくてはいけないような要因は、見出しにくい。まず実態面では、次の8つがあげられる。

総じて、企業収益の増益基調が持続。すぐに悪い変化は生じにくい。始まった四半期決算の内容も、全般に良好だと見込まれる。

企業収益の改善は、事前に十分期待されている。なので個別には安川電機のように良い決算を発表しても、市場が織り込み済み、あるいは既に楽観に傾いた事前期待に届かなかったとして、株価反落で応じるケースは今後もありそう。だからと言って、株式市況全般が継続して押し下がるようなことにはなるまい。

予想PER(株価収益率)でみた国内株式市況の水準は、安倍政権発足後のレンジの中心値から、若干上回ったところに位置する。すなわち割安だとは言い難いが、かと言って目くじらを立てるほど割高でもない。

ただし、最近の国内株式市況の「相場付き」には、怪しさも漂っている。

日経平均の上昇が先行しすぎている。それは、NT倍率(日経平均÷TOPIX=東証株価指数)の上昇傾向に表れている。海外投機筋の日経平均先物買いがかさんでいることが背景にあると推察する。

海外投機筋の先物買いは、その前の先物売りの買い戻しの様相が濃い。そもそも投機筋が先物を売ったのは、「森友・加計問題」で内閣支持率が低下したことが、安倍政権の崩壊につながるとの懸念と、北朝鮮情勢の不安があったためだと考える。ところが衆議院解散後は、与党の優勢が伝えられたうえ、北朝鮮がおとなしいため、先物を買い戻したのだろう。こうした先物買いは、買い戻しが一巡してしまえば、終わってしまう。あるいは、一部新規の先物買いもあるだろうが、それも投機的性質からは、ずっと買い上げていくわけでもない。

日経平均2万2000円には「お化粧」が入っている

Π貶で、TOPIXの相対的な上昇の鈍さ(とは言っても、先週は、先々週までに比べれば劣後の度合いはかなり縮小した)をみると、長期的な投資家の現物株買いが、個々の企業収益の実態を踏まえて、しっかり入っているという感が薄い。とりわけ、東証マザーズ指数の頭の重さ(先週末は上振れしたものの)をみると、本来成長性の高い新興市場株が適正に評価されておらず、日経平均の上昇が日本企業全般の収益改善を口実にしている割には、個別にそうした動きを感じにくい。

ШG初からの日経平均とマザーズ指数のグラフを重ねると、ずっと並行的に動いてきたが、述べたように、足元は両者の乖離が大きい。そのグラフから、マザーズ指数の先週末の位置に符合する日経平均の水準を読むと、2万円割れ(1万9800円程度)だ。だからと言って「日経平均株価が今すぐ2万円を割れるべき」とは考えないが、2万2000円水準の日経平均には、かなり「お化粧」が入っていると解釈した方がよいだろう。

╋伴鑛未任澆討癲△燭箸┐仞莉気龍伴鑛務価指数の上昇率トップは、銀行だった。出遅れ株のキャッチアップだと前向きに評価する声もあるが、銀行株の上昇要因として、米国の金利上昇が挙げられている。確かに米国の銀行については、貸出金利も上昇し、融資採算が改善すると期待できるため、銀行株の上昇はうなずける。あるいは、百歩譲って日本のメガバンクについては、米国でも業務を行なっているため、無理やり株価上昇につなげられなくはない(とは言っても、国内と海外の利益額を比べれば、かなり無理のある説明だ)。それでも地銀を含め銀行株が全体相場を押し上げるような展開は危うい。

以上、国内における株価判断材料を並べてみたが、結局のところ、企業収益の実態なども含めれば、日本株が年末に向けて大きく下落する、とは言い難い。つまり、冒頭の「年内の日本株の下落シナリオ予想」は、日本以外に起因する。またそうした下落が一巡すれば、日本株は再度(2018年以降は)企業収益の改善を評価した上昇に転じると見込む。

話がややそれるが、最近の国内株価の上昇が、バブルだとかそうでないとかといった、論調を良く目にする。しかし、そもそも日経平均がたかだか2万円を少し超えたところでバブルでもないだろうし(4万円を超えたらわからなくもないが)、バブルかどうかの議論が生じている局面で、バブルはありえない。バブルが発生するのは、誰もバブルだとは微塵も思ってもいない時だ。

米国発の市場波乱を、引き続き警戒する理由

さて、年内の株価調整を引き起こすのは日本国内の要因ではないと言ったが、ではどこの国かと言えば、米国だと考える。

まず米国の市場動向をみると、次の3つの理由で楽観に傾きすぎている。

(胴颪S&P500の予想PERをみると、2006年以降のレンジ上限を大きく上にはみ出している。現在案として打ち出されている連邦法人税の引き下げ(35%→20%)が、議会でそのまま満額承認され、それが今すぐ企業収益に反映されたとすると(実際の減税実施は来年以降だが)、予想PERは何とか過去のレンジの中にはいる。ただそれでもレンジ上限に近いし、後述のように、法人減税が現在の案通りに実施される公算は低いと見込んでいる。

株式以外のリスク資産では、ジャンク債(低格付け債)がかなり買われている。ジャンク債と米国国債の利回り差は、かなりの低水準にあり、市場がデフォルト(債務不履行)リスクを軽視しすぎている。

VIX指数(恐怖指数)も歴史的な低水準にあり、投資家が、米国株価が急変動することはないだろうと、安心しきっていることが表れている。もはやVIX指数は「慢心指数」と化している。

こうした各市場の慢心、あるいは買われ過ぎの状況が、何によって崩壊するかと考えると、2つ想定される。1つは長期金利の上昇だ。というのは、国債利回りが低く、国債への投資だけでは十分な投資収益があがらないため、投資家が株式やジャンク債に資金を移し、その分だけ両資産が買われ過ぎになっていると考えられるためだ。長期金利が上昇すれば、そうした資金シフトが逆流するだろう。

長期金利の上昇に絡んで、次のような材料が注目される。今週決定されると伝えられている、FRB(米連邦準備理事会)議長の後任人事がどうなるかが、長期金利に影響を与えるかもしれない。本来は、連銀の金融政策は、議長一人で決めるものではないので、誰が議長になるかを騒ぎすぎるべきではない。ただし、仮にタカ派と目されているスタンフォード大学教授のジョン・テイラー氏が後任議長となれば、長期金利が跳ねあがることも否定できない。

一方、イエレン議長の再任、あるいは既に連銀理事であるジェローム・パウエル氏の議長就任が決定され、現路線が継続すると見込まれる展開になることもありうる。ただし、イエレン議長の下の現体制の連銀も、短期金利の引き上げや債券再投資の縮小は、既に進めてきている。ある米国の識者は「イエレンがハト派であるという『勝手なレッテル貼り』で、市場は今の連銀の緩和縮小は大したことがないと錯覚し、株価も長期国債価格もジャンク債価格も、現在の連銀の金融政策をなめきっている。いずれ大きなしっぺ返しが来る」と筆者に語ったが、全く同感だ。

もう一つ、米国の市場価格調整を引き起こす材料としては、減税を中心とするトランプ政権の経済政策に対する失望(余談だが、「インフラ投資」はどこへ行ってしまったのだろう?)や、財政審議を巡る混乱だ。

今までは、ハリケーン「ハービー」の被害という「国難」を口実とした、暫定予算の策定や債務上限引き上げに対する超党派合意、あるいは今月の予算決議(予算の大枠を示すもの)の上下院での可決といった推移で、財政関連の議会での審議は、大過なく進んできた。

しかし、予算決議の採決は、上院が51対49、下院が216対212という僅差であり、これは野党民主党が全員反対したのみならず、与党共和党からも造反票が出たためだ。つまり、薄氷の上の可決といった形で、今後の個別の歳出法や減税案の採決については、薄氷を踏むだろう。

現在の連邦法人税の20%への引き下げは、もともとはオバマケアの改廃や国境税の増税など、代替財源の存在を前提としたものだった。今はこの2つとも、ほぼ断念された状況だ(ドナルド・トランプ大統領は、オバマケアの改廃について、3度目のチャレンジを行なおうとしているようだが)。

このため先週は、代替財源として、401k(米国の確定拠出年金制度)の非課税枠を縮小する、という観測が飛び出した。極めて筋の悪い代替財源案であり、大統領はすぐに否定したが、それだけ議会が「何か代替財源を」と血眼になっているという状況がある。逆に言えば、何の代替財源も見つからなければ、減税案自体が縮小するものと見込まれる。

財政以外の論点と減税案の賛否が結びつく危険性も

さらに、減税案に対する議会の反対票が、財政の議論の外から湧き出す可能性がある。共和党内で、財政赤字の膨張に最も反対する勢力は、フリーダム・コーカス(自由議員連盟)と呼ばれるグループだが、他の議員も含めて、共和党内では、自由貿易も強く標榜する勢力がある。その考え方の背景には、政府の関与が少なく(財政赤字が小さく)、企業や個人が自由に活動すべきだ、という精神があるが、現在トランプ大統領はNAFTA(北米自由貿易協定)の見直しを進める構えだ。この見直しに反対し、NAFTAの堅持を主張する議員たちから、「修正するのであれば、減税案に賛成しない」との声が上がり始めている。このように、財政以外の論点と減税案への賛否が結びついてしまうことがありうる。前述のように、暫定予算も債務上限も、当初の9月の期限からは延長されたが、12月8日(金)に次の期限が来るため、その前に財政審議に対する不安が広がる局面がありうる。

以上を踏まえると、年内に、米国株価や米ジャンク債市況などのリスク資産価格が大きく調整し、それが米ドル相場も下振れさせることで、日本国内にさしたる悪材料が無いにもかかわらず、日本株が押し下げられてしまう、という展開を懸念しているわけだ。

なお、最近話題にされなくなった、いわゆる「ロシアゲート」について、早ければ10月30日(月)にも容疑者の身柄が確保されるだろう、と米国のCNNが報じている。その容疑者とは、いったい誰なのかは伝えられていない。だが、仮にトランプ政権の幹部だとすれば、政権の存続自体(あるいはトランプ大統領の去就自体)が揺らぐ可能性がある(もちろんそうならない可能性もある)。トランプ大統領が事態を挽回しようと、「冒険主義的な行動」に踏み切る恐れもある。

こうして年内の米国発の市場波乱(日米だけではなく、たぶん世界的な波乱)を懸念しているが、それは別に今週のことではなく、少し先かもしれない。もし今週でなければ、日経平均株価は、目先は余勢を駆って、今少し上値を伸ばす可能性はある。ただ、そこは買い場ではないだろう。
今週の日経平均株価については、2万1500〜2万2200円を予想する。