コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんが詳細にレポートする当シリーズ。前回の「コンビニから出るゴミの処理」に続いて、今回取り上げるのは「コンビニチェーンの決算」について。ローソンとミニストップという2つのチェーンの決算を比べてみて改めて浮き彫りになった、今コンビニ業界が抱える大きな問題点について、日比谷さんが詳しく検証しています。

過去3年の決算から分かったローソンの問題点

今回は、コンビニチェーンとしては国内店舗数2位を誇るローソンの決算発表に注目し、そこから見えてくる“コンビニ業界が抱える課題”について検証していきたいと思います。

上の表は、ローソンの過去3か年の決算を一覧にしたもの。前々年と比べて店舗数は順調に増えており、それに伴って営業総収入も増えています。

しかし見逃せないのが、営業利益が前年比で約10億円の減益となっている点。営業利益率も2年前の14.5%と比較すると約3%も落ちています。それに伴って、企業財務の健全性を示す指標のひとつである自己資本比率も、31.5%に下がりました(とはいえ、31%という数字は非常に優秀ですが……)。

こちらは、過去3か年の決算の一覧表から前年比と前々年比の部分を抽出したもの。こうして見てみると、2つの大きな問題点が浮かび上がります。

まずひとつ目は、店舗数の伸び(116%)と営業総収入の伸び(113%)が一致していない点。店舗数が増えれば売上も同じように伸びるはずですが、実際には営業総収入の伸び率はやや鈍る結果に。この理由として考えられるのは、「1店舗あたりの売上高が下がっている」ということです。非効率的な店舗を作っていたり、競合チェーンとの競争により、売上が苦戦していることが見えてきます。

ふたつ目は、営業総収入の伸び(113%)と比較して、販管費(コスト)の伸び(116%)が大きい点。売上の伸びよりもコスト上昇が上回ると、結果的に営業利益は減少します。効率的な投資や必要経費を投下するタイミング・内容を間違うと、このような結果になります。ローソンでは廃棄商品の本部負担など、新たな経費増の取組みを行っていますが、その取組みが売上にうまくつながっていないようです。

では、どうしてローソンは経費が増え続けているのか。決算書の中で読みとれる理由としてひとつ挙げられるのが、経費の中でも大きなウエイトを占める人件費の増加です。

こちらは過去3か年の人件費のみをグラフ化したもの。2年前は340億円だった人件費が、392億円まで膨らんでいます。原因としては社員給与のベースアップ、直営店店舗でのアルバイト不足による時給高騰などが考えられます。

健全経営が続いているミニストップ

前段ではローソンの決算について取り上げましたが、ここからはさらに国内店舗数4位・ミニストップの決算も検証し、両社の状況を比較していきます。

上の表は、ミニストップの過去3か年の決算を一覧にしたもの。営業総収入は3年間順調に右肩上がりで推移し、店舗数も全世界合計で5314店と増えています。

また先ほどのローソンとは異なり、店舗数の伸びと営業総収入の伸びがほぼイコールですので、各店舗の生産性は大きく変化していないようです。自己資本比率も48%を超えており、健全経営ができています。また営業キャッシュフローも順調に増えています。

その反面で、本業の稼ぐ力の指標となる営業利益が3年間落ち続けており、3年前と比較すると約半分となっています。営業利益率も3%台から1%台に落ちています。

ミニストップとローソン、決算を比較すると……

さてローソンとミニストップの決算を比べてみると、同じコンビニチェーンでありながら大きな違いが見えてきます。

まず挙げられるのが、原価率の差です。ミニストップは63%が売上原価となっており、これは主に仕入れた商品代金と考えられます。ところがローソンの売上原価は27%となっており、これは非常に低い数値です。

また、販管費のほうも両社で大きな差が。「販売管理費及び一般管理費」の比率は、ミニストップが36%に対してローソンは61%となっています。

こちらは少し古いデータですが、ローソンとミニストップの社員給与を比較したもの。2015年度で比較すると、50万円ほどローソンの方が高くなっています。その他、販売促進費等の経費に関しても、ローソンの方が高くなっています。

同じコンビニチェーンでありながら、なぜ決算の内容がここまで違うのか。それは両社のビジネスモデルの違いに原因があります。

(直営店売上:FC売上)

ローソン  (95,957百万:1,052,587百万)……約9.1%

ミニストップ(17,202百万:28,613百万)………約60.1%

 ※ミニストップはこれ以外に卸売上が51,308百万円あります

上記は、ローソンとミニストップにおける直営店の売上比率を比較したものですが、ローソンの直営比率が1割弱なのに対し、ミニストップは約6割と半分以上を占めます。

これはどういうことかというと、ミニストップは自社社員で店舗を経営することをベースとしながら、FC店舗指導や商品卸によってビジネスを行うのに対し、ローソンはいわゆるFC(加盟店)事業をメインに据えているということです。

今後求められる新たな成長戦略

これまでのコンビニチェーンは、FC(加盟店)事業を強力に推進していくことで店舗数を急速に増やし、飛躍的な成長を遂げてきました。

また、競合チェーンに好立地を抑えられ成長の芽を摘まれないために、どのコンビニチェーンも常に店舗数を増やし続ける必要がありました。

ところが最近では、FC加盟を新たに希望するオーナーの数が頭打ちになっています。くわえて、すでにFC店として営業している店舗においては、後継者不足という問題が顕在化し始めています。

私見を述べるならば、これまで主流だったFC事業をメインに据えたビジネスモデルは、そろそろ曲がり角を迎えているように思えます。今後は、例えばチェーン本部社員が店長となって直営店で開業させて、その後にFC化を目指すといった、直営事業でも十分に経営できる新たな仕組みづくり……つまり、戦略の大きな転換が必要となるのではないでしょうか。

MAG2 NEWS