アパマン投資はそろそろ儲からなくなる?(写真:PIXTOKYO / PIXTA)

低金利や株高を追い風に、アパート・マンション投資が活況を呈している。6月末の全国銀行のアパートローン残高は22.7兆円と過去最高となった。また、新興企業のインベスターズクラウドが6月に募集した、アプリで1口1万円からのアパート小口投資ファンドには、何と募集額の9.4倍、3.4億円もの個人マネーが集まった。

一方、足元ではブームに微妙なかげりも見えてきた。4〜6月期にはアパートローンの新規の融資実行額が、統計開始以降、初めて前年同期比2桁の大幅減少を記録した。以前からこの分野を注視している金融庁は10月25日に発表した金融レポートで、改めてアパマンローンのリスクを強調している。銀行も慎重にならざるを得ないだろう。

アパマン市場は、過去にも2回のブームを経験している。いずれも銀行融資の拡大で火がつき、個人の賃貸物件の建築戸数が自己居住用住宅を上回るまでに活況を呈した。しかしその後、融資の縮小と金利の上昇や制度変更がトリガーとなり、大きな爪痕を残して終焉を迎えた。今回の新規融資減速も、ブームが過ぎ去る予兆なのだろうか。


過去のアパマンブームの顛末

日本で初めてのアパマンブームは土地バブル期に遡る。1972年に住友銀行などが土地を持つ富裕層の賃貸アパート建設ローンを始めたのがはしりだ。


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その後、地価上昇と、1981年の建物の耐震基準厳格化で、政府が木造アパートの建て替えを推進したことがブームに火をつけた。この時期に躍進したのが、投資用ワンルームマンション専門会社の「マルコー」だった。1件1000万円前後のマンション投資はサラリーマンの節税商品として大流行した。

しかし、物件価格の上昇で、都心の賃貸利回りは2%程度まで低下した 。金利が上昇し始めたうえ、税制改正でサラリーマンの税務メリットが縮小した 。さらに、総量規制を受けて銀行が不動産融資を急速に引き締めた。ブームは終焉し、マルコーは会社更生法申請に追い込まれた。

第2次ブームは、2000年代初頭である。J-REITの登場で大口投資家が登場し、不動産価格が持ち直したことから、銀行は再びアパマンローンを活発化させた。物件収益の範囲で返済すればいいというノンリコース型融資も登場した。なかには、北海道の遠軽信金のように、貸出残高全体の55%がアパートローンという"専業者"も登場した 。

このブームはリーマンショックを機に終了した。この時は、金利が低めだったことから、アパートローンの行き詰まりは前回ほどではなかったものの、不動産デベロッパーの相次ぐ倒産で銀行は不動産関連融資を一斉に手控えた。

そこから復活して迎えた第3次アパマンブームが今回である。後押ししたのは、やはり、超低金利を背景とした銀行の積極融資だ。

今回は、ビッグデータの活用やクラウドファンディングなどのフィンテックの台頭が特徴だ。例えば、アパートローンを注力分野の一つに挙げる千葉銀行は「賃貸王」「アパ助くん」 という独自の審査システムを開発し、昨年度1年間でアパマンローンを14%増やした。デフォルト率は同行の貸出全体の平均よりもはるかに低い模様だ。

前回のブームと異なる「救い」

そんな中、アパマン融資の増加ペースが鈍化し始めたことは、これまでのブーム終焉のトラウマを彷彿とさせる。

しかし、今回のブームは、前回までのブームと異なる救いもある。まず、頭金の割合が高いことと極端に金利が低いことである。バブル末期の頃は、銀行は物件価格の上昇を前提に融資していたため、頭金ゼロというフルローンもしばしばみられた。これに対し現在は、フルローンもあるものの、投資物件の頭金は2割程度が主流である。

これなら、現在の平均4.3%程度(東京23区)の賃貸利回りを前提とすれば、以下の概算の通り、ある程度の経年変化には耐えられそうだ。

たとえば、一般的な30年ローンの折り返し時点として、新築時から15年後の収支を考えてみたい。賃料は新築から10年目までで年1%ずつ、10〜20年目までは年0.5%程度ずつ下落し、その後は落ち着きはじめるとされる。15年目には賃料が累積で13%程度下落している可能性があるが、それでも利回りは約3.7%残る。また、空室率は15年では8.5%程度まで上昇するとされる(金融庁資料)ので、結果3.4%の利回りが残る。

借り入れ金利は1〜2.5%程度だ。当初の借入額が物件価格の8割で、その後、約定返済で5割まで減少しているとすれば、利払い負担は物件価格に対し0.5〜1.25%程度(1.0〜2.5%x5割)となる。これらを差し引いた後の利回りは2.1〜2.9%程度となる。さらにここから管理費や修繕費などが引かれるが、ほぼゼロの定期預金金利よりはマシだ。郊外の物件ならもっと利回りは高い。

しかも、借入金額が相続財産から差し引かれるので、相続税を圧縮できる。現在、日本の高齢者の1割近い人々が自宅以外の賃貸用不動産を保有しているが、ウラにはこうした背景がある(内閣府調査) 。

では、ここから先のアパマン投資に妙味はあるだろうか。

上記の通り、現在の損得勘定は預金よりはまだベターだが、実質利回りはじわじわと低下している。様々な費用を差し引くと、すぐに現金化できない割には、流動性の高い金融商品と大差のない利回りになってしまう。

残るは価格上昇期待が持てるかどうかである。

日本はほかの先進国ほど地価が上昇していないし、足元で株価も強い。東京などの大都市には、居住者数を上回る観光客が訪れて、しかも年々増えている。これらの点から、日本の住宅には上昇余地があるという意見も多い。

確かに他国に比べて日本の住宅価格上昇ペースは寂しい。たとえば米国では、金融危機が収まった2010年から2017年3月までの累計で住宅価格は38%上昇したが、日本は11%に過ぎない(BIS〈国際決済銀行〉の調査による)。しかし、他国では家賃の上昇率もかなり高い。米国では上記と同じ期間で26%上昇している。日本のように下落している国はまれだ。


デフレの解消で今後若干の持ち直しは期待できるであろうが、日本の賃料には"構造的な弱点"があるため、急速な上昇は期待しにくい。日本では借地借家法で住宅の借り手が厚く守られている。大家さんにとっては厳しい制度である。このため、賃料を引き上げるとしても借り手が入れ替わる時くらいであるが、それもこの20年くらいは極めて難しい。

一方、米国などでは日本に比べてはるかに貸し手が優位である。賃借人は毎年賃上げを要求されることもある。極端な例として、アーカンソー州などでは、借主が賃料を全額期日までに支払わない場合、家主は10日以内の退去を要求できる。賃料引き上げには交渉の余地もあるが、契約で合意できなければ立ち退きを要求されうる。

さらなるリスクは日銀の政策変更

今後のリスクとしては、日銀の年間900億円に上るJ-REITの購入停止がある。日銀保有のJ-REITの残高は4350億円まで積み上がった。まだJ-REIT市場時価総額の4%程度と小さいが、それでも、もし、日銀が購入を停止すれば心理的なマイナス影響は極めて大きいだろう。

日本不動産研究所の9月の調査によれば、70%の投資家が不動産価格は「既にピークか、それを超えている」と回答している。根拠として、「著しく低い利回りの取引がみられる」という見方が多い。確かに、直近で筆者のところに案内が来たマンションの想定利回りは(都心一等地の新築ぴかぴかの物件ではあるが)3%台である。それだけ物件価格が上昇してしまったということだ。

当局が目を光らせる状況で、アパマン融資がさらに過熱する可能性は低い。まだなんとか投資できる利回り水準だが、ここから先は、案件を慎重に選別することが一層重要になりそうだ。