さらばマルチナ・ヒンギス、テニスの偉人。ー天才少女からパワーテニス全盛期、そしてダブルスのスペシャリストへ。数々の栄光に満ちた彼女のキャリアー

写真拡大

WTA公式サイトは、テニスライターのマーク・ホジキンソンがマルチナ・ヒンギス(スイス)のキャリアについて振り返った。と報じた。ヒンギスはシンガポールで行われた「WTAファイナルズ」ダブルス準決勝で敗退し、プロとしての最後の試合を終えた。このスイス人スター選手の輝かしいキャリアについて、改めて見ていきたい。

ヒンギスの全ての引退(ヒンギスはラケットバッグを永遠に閉じると決意したことが3回ある)のうち、この最新の引退は、群を抜いて栄光に満ちている。そして今回は、本当にこれで終わりではないか、これ以上の「引退撤回」は本当にないのではないか、と誰もが思うだろう。

アスリートなら誰でも、頂点にいる時にそのスポーツを去りたいと望み、ハリウッドのような劇的な別れを願う。そのような志は、エリートスポーツの現実の下で潰され、ライバルはもちろん、怪我や結果、逆らうことのできない時の流れに打ち負かされるのがほとんどだ。しかし、37歳で、ヒンギスはダブルス世界1位として退こうとしている。混合ダブルスで2つ、女子ダブルスで1つ、計3つの4大大会タイトルを制したシーズンの終了と共に。ヒンギスが望めば、すでに25個持つメジャータイトル(シングルスで5、女子ダブルスで13、混合ダブルスで7)に加えて、来シーズンでさらに積み重ねることができる。

そう考えるだけの理由は十分にある。10代でヒンギスは「非常にミスの少ない選手」だった。30代後半になって、今シーズンでもミスはほとんどしていなかった。

ヒンギスはの名前は、マルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)からとって名付けられ、他の大物のように、ヒンギスもテニス人生を多くの幕に分けた。第一幕で大きな成功を収め(16歳で、4大大会のシングルスのタイトルを3つ勝ち取り、シングルスランキングで1位を獲得した)、まだもっとできる間に一度辞めたことが、その後彼女の最高のキャリアを完成させたのかもしれない。

パワーテニスの時代には、ヒンギスは上位選手の中で最も爆発的でも、身体的に脅威的でもなかった。(何しろ身長170センチなのだ)しかし、このスポーツ史上、彼女は最も素晴らしいテニス脳を持っていたのかもしれない。タッチとタイミング、角度と回転の使用、そしてテニスのあらゆる繊細さを理解し、ヒンギスはテニスのインテリの中でも最も賢かった。身体は年々遅くなるが、テニスの知性は年とともに増やしていくことができる。ほとんどの場面で、ヒンギスは女子の大会を乗っ取った10代の若者として、第一に思い出されるだろうが、ダブルスに転向した後の30代半ばから後半の間が、自身には最も合っていたのかもしれない。テニスでも人生でも、その他のほとんどすべての物事と同様に、退くには少し練習がいる。2003年に22歳で辞めた時、ヒンギスは怪我を引き合いに出した。2007年には、その年のウィンブルドンでコカイン使用の陽性反応が出て、27歳の時に2回目のキャリアが終わった。今回でヒンギスがこのスポーツを辞めるのは3回目になるかもしれないが、実際は、自由に引退を選ぶことができたのは、今回が初めての事かもしれない。ヒンギスは「私にとってちょうどいい時だ。頂点にいる時に辞める方がいいし、とてもよい時間を過ごした言える」と語った。

女子大会史上、最も若いシングルス世界1位になってから20年。途中に多少の中断や合間があったが、今回はダブルスでランキング1位に再び上り詰めた。ヒンギスは、ある試合の形や、あるいはツアーにおいてさえ、いつも世界で一番上手かったわけではないが、間違いなく一貫しておもしろかった。テニスのおしゃべり批評家たちは、ヒンギスがシングルスとダブルスのどちらの方が上手い選手だったかを討論するだろう。しかしここに、まだ議論に上っていないことがある。つまり、彼女は偉人な選手の一人だったということだ。

1996年、15歳でヘレナ・スコバ(チェコスロバキア)と組み「ウィンブルドン」の女子ダブルスを制して初めて4大大会のタイトルを獲得してから、21年になる。翌年、シングルスで支配的な選手となり、3つのメジャー大会で勝利、最後の1つ「全仏オープン」でも決勝に達し、WTAの世界1位になった。4つ目と5つ目の4大大会のシングルスのタイトルは、「全豪オープン」でもたらされた。1997年から1999年まで、ヒンギスは「全豪オープン」を支配し続けた。そして今年、2013年に始まった3回目のキャリアで、再びこのスポーツの頂点に立つ力となった。ジェイミー・マレー(イギリス)と協力して「ウィンブルドン」と「全米オープン」で混合ダブルスを制し、チャン・ユンジャン(台湾)と組んでニューヨークで女子ダブルスの称号を得た。

つまり、自身最後の4大大会で、卓越したことをやってのけたのだ。ダブルスのダブル制覇。ヒンギスは、37歳の今もまだまだ良い状態でプレーできる。そしてそれこそが、ヒンギスの引退を大きな偉業にするのである。

数々の名シーン・名プレーを見せてくれたマルチナ・ヒンギス。彼女に心からの感謝と賛辞を贈りたい。

(テニスデイリー編集部)

※写真は、3回目の引退を決めたマルチナ・ヒンギス(1997年「全豪オープン」優勝時のもの)
(Photo by Clive Brunskill /Allsport)