肥満の男性が少子化の原因?(depositphotos.com)

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 体育の日の翌10月10日、世界保健機関(WHO)は、2016年に世界中で肥満の子どもたち(5〜19歳)が推定1億2400万人に達しているとの報告書を発表した。その数は、ほぼ日本の総人口(約1億2709万人:2015年10月の国勢調査より)に匹敵している。

 さらに、肥満ではないものの「太り気味」とみられる層が推定2億1000万人いる一方、「痩せ気味」や「痩せ過ぎ」の子どもたちは1億9200万人おり、とりわけインドが深刻であると報告書は伝えている。

 今回紹介するのは、そんなインド発の「肥満」と「不妊事情」に関する最新知見だ。

肥満の男性が少子化の原因?

 まずは、話題の研究を率いたGottumukkala Achyuta Ramaraju氏(クリシュナIVFクリニック生殖補助センター)の談話から聞いてほしい。

 「肥満の女性が妊娠しにくい点については従来から知られているが、われわれの今回の研究から男性にも同様の傾向(受胎の遅れの原因)がみられることが裏付けられた。受胎時の親の肥満が、胚の健康、移植、妊娠、出生率に悪影響を及ぼしているわけです」

 Ramaraju氏らは研究に際し、2016年にインド国内の不妊治療施設に通院した男性1285人の精子を対象に、コンピュータ査定による精子画像解析法(CASA)のデータに基づく評価を行なった。

 その結果、体格指数上で肥満(BMI30以上)の男性の場合、そうでない男性陣と比べて精子の量が少ないばかりか、精子の数そのものや濃度、女性の生殖管をすばやく移動する運動率においても低いことが読み取れた。

 また、肥満男性の精子の欠陥点として、頭部が薄かったり、洋梨状に細長かったりする傾向も見られ、これらの異常が性交やIVF(In Vitro Fertilization:体外受精)による着床をより困難にする可能性が示唆された。

 「わわわれとしては、不妊治療に携わっている医師陣が体外受精を実施する前にぜひ、コンピュータによる精子の画像解析を行なうことを推奨したい」とRamaraju氏は話す。

半世紀で50%減の精子事情

 一方、米国ノースウェルヘルス・ファーティリティのAvner Hershlag氏は、「男性の約3人に1人が肥満という実情を抱えるわが国にとって、Ramaraju氏らの知見は大変重要なものと捉えている」と強調。「Androgia」9月19日オンライン版に掲載された今回の研究報告の意義を、同氏は以下のように解説する。

 「米国の肥満人口は膨れ上がる一途だが、その一方で精子の質は低下し続けている。今回の研究結果は肥満が不妊の直接的な要因であることを示したわけではないが、現実の、こうした気がかりな傾向を裏付けるものとはいえるだろう」

 精子数の減少傾向は何も人間だけに限らず、動物全体にも認められ、WHOの調査ではわずか半世紀の間に「50%減」という現状も報告されている。また、前掲の子どもたちの肥満推計を見ても、1975年時は約1100万人の割合で1%未満だったものが、2016年時点で約1億2400万人と10倍強になった事実が浮き彫りにされている。

WHOの報告書では清涼飲料水や加工食品などの摂り過ぎを指摘

 同報告書でWHOは、砂糖を多く含む清涼飲料水や加工食品などの摂り過ぎが原因であると指摘。子どもたちを不健康な食事から守る対策を各国政府に訴えているが、そういう日常的な健康への自覚(摂生)はオトナにも肝要だ。

 前述のように成人後の「肥満」による欠陥精子は受胎能力や受胎の可能性自体を大きく左右しかねないからである。40歳以下の男性の場合、禁煙や高脂肪の食品などを控え、環境汚染のない環境などで暮らしていれば、その精子は概ね健康だとされている。

 日頃のカロリー摂取量を調整し、ビタミンC・D・E、カルシウムや亜鉛を意識して摂るようにするのも精子改善のためには有効だ。ジャンクフードや添加物が豊富なインスタント食品などの好む向きは「精子の健康」にも少しは気を使ってみよう。
(文=編集部)