ビットコインはバブルなのか(写真:David Gray/ロイター)

仮想通貨ビットコインはバブルなのか。それとも、金融とITが融合するフィンテック時代を先取りするすばらしい投資なのか。仮想通貨の技術は今後も発展するだろうが、高騰したビットコイン相場はいずれ崩壊する──これが私の見立てだ。

ビットコインの価格はこの1年で7倍、2年で17倍になった。1ビットコインは10月初旬時点で4200ドル以上の値をつけ、1オンスの金の3倍を超す価値がある。ビットコインの熱狂的な支持者の間には、今後数年間、価格はさらに上昇するとの見方がある。

日本で成功しているビットコイン

今後の展開は、政府の対応に大きく左右されるだろう。脱税や犯罪を容易にする匿名の決済システムを当局が許容し続けるのか、政府が自前のデジタル通貨を創り出すことはないのか、といった問題がある。「イーサリアム」など競合する仮想通貨がどこまで普及するかも重要なポイントになる。

ビットコインの技術をコピーしたり改良したりするのは、理論上は簡単だ。しかし、ビットコインが打ち立てた信用面でのアドバンテージや運用面での広がりを模倣するのは、それほど簡単ではない。

今のところ、世界各国の規制は錯綜している。中国政府はキャピタルフライト(資本逃避)や脱税に悪用されることをおそれ、ビットコインの取引を禁止したばかりだ。一方、日本はビットコインを正式な通貨として認めた。フィンテックの世界的拠点となることを狙った動きとみられる。仮想通貨の規制において、米国はためらいながらも日本に続こうとしている。だが、最終的な規制の形がどうなるかは、まったく見えていない。

空前の高値を正当化するのに、ビットコインはすべての戦いに勝つ必要はない。日本は世界第3位の経済大国だが、現金流通残高は国内総生産の約2割にもなり、現金を好む傾向が例外的に強い。そうした国でビットコインが成功を収めているということは、それだけで大きな勝利だ。

だが、ビットコインが中央銀行発行通貨に取って代わるようなことがありうると思ったら、大間違いだ。仮想通貨による匿名決済を部分的に許容するのと、それが大規模に行われるのを許容するのとでは話がまるで異なる。仮想通貨による匿名決済が大々的に行われるようになれば、税金の徴収や犯罪対策は極めて難しくなる。

もちろん高額紙幣を発行すれば、それによって脱税や犯罪のリスクが高まるのも確かだ。しかし、仮想通貨と違って、現金は少なくとも物理的にかさばる。

日本の実験はどんな展開を見せるか

日本の実験がどんな展開を見せるかは興味深いところだ。日本政府はビットコインの取引所に対し、犯罪活動の監視や口座保有者に関する情報収集を義務づける意向を示している。だが、世界を股にかけて活動する犯罪者が正体を隠してビットコインを取得し、日本の口座を通じてマネーロンダリングしようとするのは間違いない。国境を越えて紙幣を持ち出したり、持ち込んだりするのは、犯罪者にとって大きなコストだ。日本は仮想通貨を受け入れることで、スイスのような租税回避地となるリスクを背負い込んだのである。

仮にビットコインから匿名性がはぎ取られれば、現在のような高値は正当化できないだろう。

大事なのは、中央銀行が自前のデジタル通貨を発行したり、仮想通貨との戦いに勝てるように規制を変えたりするのを、誰も止めることはできないということだ。通貨の長い歴史が教えるように、民間が新たに生み出したものは、最終的に政府が規制し、自分のものにしてしまう。仮想通貨が同じ運命から逃れられると考える理由は、どこにもない。