村田諒太【写真:Getty Images】

写真拡大

村田の真価を測るには? 元王者ジェイコブスが説く「ワールドクラス」と対戦の必要性

 ボクシングの2012年ロンドン五輪ミドル級金メダリストの村田諒太(帝拳)は、10月22日に行われたアッサン・エンダム(フランス)とのWBA世界ミドル級タイトルマッチでTKO勝ち。新チャンピオンの座に就いたことで、「MURATA」の名が世界の猛者たちの耳にも入ったのは間違いない。では、現役ボクサーには村田の現在地はどのように映っているのか。元WBA世界ミドル級王者ダニエル・ジェイコブス(米国)は「新たに鍵となる選手が誕生した」と語り、「真のワールドクラスのファイターと戦った時、彼の真価が測られるだろう」と分析する。

 今年3月、WBA、WBC、IBF世界ミドル級スーパー王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との統一戦に僅差の判定負けを喫したジェイコブスだが、「(試合に)勝っていた」と見る米メディアも存在した。32勝(29KO)2敗という戦績を誇り、かつて脊髄の骨肉腫を克服したことから、“ミラクルマン”(奇跡の男)の異名を取る30歳。11月11日にルイス・アリアス(キューバ)との復帰戦を前に、「村田VSエンダム」戦もチェックしたという。

「ムラタはパワーとスキルをハイレベルで備えた好ファイターだと思う。(エンダム戦は)良い試合で、結果としてミドル級に新たに鍵となる選手が誕生した」

 エンダムにTKO勝ちを収めたパワーと技術を認める一方で、現段階で「ボクサー村田」のすべてを評価するのは時期尚早だと話す。

「僕らは、ムラタがエリートファイターと対峙した時に何ができるかを目にしていない。エンダムは良い選手だけど、彼はエリートじゃない。いずれ真のワールドクラスのファイターと戦った時、ムラタの真価が測られるだろう。もちろん、ムラタはまだ若く、エキサイティングなファイターであることには変わりはないよ」

元王者は対戦を歓迎「米国でタイトル戦をする気があるなら、僕はここで待っている」

 ミドル級にはゴロフキン、ジェイコブスの他にも、カネロ・アルバレス(メキシコ)、ジャーモール・チャーロ(米国)、デメトリアス・アンドレード(米国)、デビッド・レミュー(カナダ)など実力者揃い。人々の注目は当然、今後のマッチメークに移っている。現時点では決して「現実的」とは言えないが、ジェイコブスら“ビッグネーム”との対戦が実現した暁には大きな話題になるだろう。

「エキサイティングなことだ。僕は自分こそが世界最高のミドル級ボクサーだと思っている。トップ中のトップの選手たち(ゴロフキン、カネロ)が僕との即座の対戦を望まなかったとしても、チャーロでも、ムラタでも話があれば誰とでも戦う心構えだ。もし、アメリカでタイトル戦をする気があるなら、僕はここで待っているよ。そして、それは僕だけでなく、多くのミドル級強豪ボクサーたちが同じ思いだろう。ムラタの今後を楽しみにしているし、ぜひ実現するように動いてほしいね」

 ボクシング界屈指の好漢として知られるジェイコブス。村田に関する好意的な言葉には、リップサービスも少なからずあっただろう。ただ、その中でも「エリートたちと対戦した時に村田に何ができるか?」という言葉には、世界を舞台に戦ってきた“ベテラン”としてのプライドが滲んだ。

 現状、世界王座を保持しているのは村田で、ジェイコブスは無冠の前王者。それでも、世界的な評価はジェイコブスの方が上で、「村田はまだ自分たちのレベルに達したわけではない」という想いはあるはずだ。

名の通った実力者との防衛戦を重ね、評価と知名度を高めていけば…

 実際のところ、村田の世界的な知名度はまだ低い。ジェイコブスらビッグネームと早い段階でアメリカ開催のカードを組めることは考えづらく、日本で戦おうにもファイトマネーの高さがネックになる。

 ただ、ゴロフキンとカネロは来春にリマッチを予定。その勝者が12月に行われるWBO世界ミドル級王者ビリー・ジョー・サンダース(英国)対レミューの勝者との4団体統一戦を望むとすれば、ジェイコブスの“ダンスパートナー”が不在になるシチュエーションも考えられるだろう。

 そんな状況下で、村田が防衛戦を重ねて評価と知名度を高めた場合、あるいは……。楽しみなカード実現の可能性を少しでも上げるべく、名の通った実力者との対戦を望みたい。