“ベトナムのC・ロナウド”ことチャン・フィー・ソン(右)【写真:Getty Images】

写真拡大

“ベトナムのC・ロナウド”にJリーグ参戦の可能性

 近年、東南アジア出身選手のJリーグ移籍が加速化している。コンサドーレ札幌に所属するチャナティップを始め、高い技術を持った選手はJリーグでも通用することを証明した。そして最近、“ベトナムのC・ロナウド”と呼ばれている選手が日本行きを希望しているとの噂が出てきた。その実像に迫る。(取材・文:宇佐美淳【ベトナム】)

----------

 今年はJ1北海道コンサドーレ札幌に“タイのメッシ”ことチャナティップ・ソングラシンが期限付き移籍し、加入後すぐにレギュラーを奪取。また、J3の藤枝MYFCには現在、“カンボジアのメッシ”チャン・ワタナカが所属。昨年は“ベトナムのメッシ”グエン・コン・フオンがJ2水戸ホーリーホックでプレーするなど、このところのJリーグは、“東南アジアのメッシ”づくしだ。

 ところで、筆者が住むベトナムには“メッシ”だけでなく、“C・ロナウド”もいる。ベトナム国内では最近、この“ロナウド”が近々日本に移籍するとの噂が流れており、大勢のファンがヤキモキしながら、その去就に注目している。はたして“ベトナムのC・ロナウド”とはどんな選手なのだろうか。

 ベトナム1部ソンラム・ゲアン(SLNA)で10番を背負う168cmの小柄なサイドアタッカー、チャン・フィー・ソンが“ベトナムのC・ロナウド”と呼ばれる理由は、彼のプレーをみれば一目瞭然だ。両腕を大きく振る走り方やシザースなどのフェイントを多用するドリブルスタイル、ゴール後のパフォーマンスまで真似しているのだから、本人も明らかに“本家ロナウド”を意識しているのだろう。

 現在25歳のチャン・フィー・ソンは、“ベトナムの英雄”レ・コン・ビンをはじめ、多くの代表選手を輩出してきたSLNAの下部組織出身。2011年にトップチームに昇格すると、翌年のU-21選手権で大活躍して、同年の最優秀若手選手に選出され、トップチームでのレギュラーの座を確固たるものにした。

 2013シーズンの途中に、レ・コン・ビンが当時J2のコンサドーレ札幌に期限付き移籍して以降は、SLNA不動のエースに君臨している。

クラブは残留に全力を注ぐも…。本人はJリーグ行きを希望か

 過去には、年代別代表にも選出されてきたが、こちらでは、後半から投入されるジョーカーの役割が多かったため、数字上ではさしたる成績を残していない。また、この数年はオーバーウェイト気味で90分通して高いパフォーマンスを維持できないという欠点があり、このところはA代表からも遠ざかっている。

 因みに、かつてベトナム代表を率いていた三浦俊也監督は、チャン・フィー・ソンのテクニックに
ついて高く評価しながらも、「太りすぎ」と痛烈なダメ出しをしたことがある。

 しかし、今年は課題だったダイエットに成功。本人によると、5キロ落としたというが、その甲斐あって、かつての躍動感ある動きが戻ってきた。チームは相変わらず不振にあえいでいるが、攻撃陣の中
で1人気を吐き、ゴールとアシストを量産中だ。

 SLNAは現在、今シーズン終了後に契約満了を迎えるチャン・フィー・ソンの残留交渉を本格化させており、1年20億ドン(約1000万円)の3年契約、計60億ドン(約3000万円、※賞与含まず)というベトナム人選手としては、クラブ史上最高の条件を提示。しかし、かねてからJリーグ行きを希望しているという同選手は、サインを保留している。

 一部報道によると、同選手はJリーグの2クラブから練習参加に招待されており、シーズン終了後に日本に渡るのではないかとの噂されている。チャナティップが札幌で成功したことにより、タイ人選手のJリーグ進出加速が予想される中、ベトナムの秘密兵器もこの流れに乗ってJリーグ挑戦を表明するのだろうか…。

 取材の中でチャン・フィー・ソンは、日本行きについて否定も肯定もしなかったが、SLNAを退団することは、多くのメディアが確実視しており、移籍先はJクラブ、もしくはSLNAのOBであるレ・コン・ビンが今季から会長を務めるホーチミン・シティになるとみられる。

 優秀な下部組織を持つSLNAからは、毎年のように代表クラスの選手が他クラブに引き抜かれており、一番人気のチャン・フィー・ソンまでいなくなるとすれば、サポーターの落胆はかなり大きいだろう。

(取材・文:宇佐美淳【ベトナム】)

text by 宇佐美淳