瞑想の「方法」で脳への影響に変化、複数組み合わせが有効か

写真拡大

脳を実際に変化させるのは、どのような精神活動なのだろうか。この点については、これまでさまざまな議論がなされてきた。過去の研究では、瞑想やマインドフルネスの練習を行うことで実際に脳の構造や機能、さらには行動や「その時々(瞬間ごと)の経験」も変化することが確認されている。

ドイツの学術研究機関、マックス・プランク研究所が10月上旬に米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表した研究結果によると、瞑想は行い方の種類によって、それぞれ脳の異なる領域に影響を及ぼしていることが確認できたという。

3種類の瞑想方法

研究チームは調査に協力した20〜55歳の参加者たちに、3種類の瞑想を3か月ずつにわたって(合計9か月間)実践してもらった。さらに、それぞれの瞑想の方法による脳の変化を見るため、3か月間ごとに脳のコンピューター断層撮影(CTスキャン)を行った。その結果、職場や学校にとどまらず、私たちの生活の多くの場面で役立つと思われる変化が見られた。

参加者が実践したのは、次の3種類の瞑想だ。

・集中瞑想──呼吸など、今自分が行っていることに意識を向ける。古くから行われてきた瞑想で、最も多くの研究がなされてきたもの。呼吸や体の内側の感覚に集中し、気が散り始めたら再び集中しなおす、ということを繰り返す。

・慈悲の瞑想──自分自身と他の人たち、世界のあらゆるものの幸せを願い、それを念じる。慈愛(慈しみ)の心が養われ、共感力が高まるとされてきた。

・観察瞑想──「マインドフルネス」や「解放観察瞑想」とも呼ばれる。判断や批判をせず自分の思考を観察することに集中する。それにより、他人のものの見方を理解する力が高まるとされている。

研究チームは3つの瞑想の方法について、それぞれが特定の脳の領域に影響を及ぼすと考えていた。そして、脳のCTスキャンの結果を比較したところ、実際に「集中瞑想」では注意力などに関連する脳の前頭前皮質(PFC)や前帯状皮質(ACC)の厚さが増し、集中力が高まっていたことが分かった。

また、「慈悲の瞑想」は共感など社会性に関わる感情と関連している領域に、「観察瞑想」は他人の精神状態を理解することに関連がある領域に変化が見られた。

瞑想を長く行っている人たちの脳の構造や機能が大きく変化していることは、すでに多くの研究によって確認されている。さらに、瞑想を始めてからの期間が比較的短い人でも同様の効果が得られることや、ウェルビーイング(心身が健康で満ち足りた生活を送っている状態)が促進され、うつや不安症の症状が緩和されることが、複数の研究によって示されている。

今回の調査結果で興味深いのは、瞑想の方法によって脳への変化の現れ方が異なることが確認されたという点だ。研究チームは、「結果が示すのは、マインドフルネスや社会的知性のその他の側面がいかに育まれるかについては、潜在的な生物学的基盤があるということだ」と説明している。

チームはまた、グローバル化が進み、他者の経験を理解できることの重要性が一層高まる現代社会において、思いやりを持つことは特に大切なことになっていると説明。そして、そうした中では「ソフトスキル」の重要度がますます高まっていると指摘している。

「共感できる、思いやりを持てる、そして他者の視点を取り入れられる、といった社会的能力は、人の気持ちや自分とは異なる考え方への私たちの理解を深めてくれる。これらは、他者と協調していく上で極めて重大なことだ」

私たちの知性の中で最も重要な部分を強化するためには、方法の異なる複数の瞑想を行うことが有効なのかもしれない。