今回の衆院選は、与党・自民党が284議席を獲得、連立を組む公明党と合わせて313議席に達し、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を確保しました。一方の野党は、公示直前に結成された立憲民主党と希望の党で明暗がくっきり。立憲民主党は公示前勢力の3倍を超える55議席を得ましたが、希望の党は公示前を割り込む50議席という結果でした。

 その希望の党が失速する原因となったのが、小池百合子代表の一部民進党議員に対する「排除」発言でしたが、政治家へのマナー指導や、企業・大学における人財育成、マナーコンサルティングなどを行い、マナー本が国内外で70冊以上(累計100万部超)のマナーコンサルタント・西出ひろ子さんは「いつも以上に他党や他者への批判が多かった選挙」と総括します。

「政治家である以前にマナー力」

Q.マナーの観点から、今回の総選挙についてどのようにお感じでしょうか。

西出さん「他党や他者への批判がいつも以上に目立った選挙だったように思います。批判することよりも、もっと大切な物事があるのではと感じました。選挙は、国民がその代表となる人を選ぶこと。政治家は、まず人として、それを踏まえた言動をしていただきたいとマナーの観点から思いました」

Q.選挙は「戦い」と言われますが、勝利とマナーは関係するのでしょうか。

西出さん「関係します。なぜなら、マナーの大前提は相手の立場に立つ、立てるかどうかの人間力だからです。立候補者の中には、国民に選ばれるという選挙の本質や、政治家としての本質的な部分を見失っている方が目立ったように感じました。目先の当選だけでよいという姿勢が浮き彫りになったように思います。そのことは、党の分裂や批判に終始した野党が勝利できなかったことにも表れているのではないでしょうか」

Q.具体的に、選挙戦で「マナーがある」と思われたシーンはありましたか。

西出さん「ありました。たとえば、ある2つの政党(与党と野党)が同じ場所で同時刻に演説が予定されていた場面で、ある議員が『選挙は戦(いくさ)だが、そこにもマナーは必要』だと、『マナー』という言葉を用いて他党の演説を優先させ、その後で、その党が演説をしたという場面がありました。本当の戦で相手に譲ることは『敗北』を意味するのかもしれません。しかし、マナーは、まずは相手を優先させるという先手で、結果的に自分にプラスが返ってくる『先手必勝』を生み出すものでもあるのです」

Q.反対に「マナーに欠けている」と思われたシーンはありましたか。

西出さん「ある選挙区の候補者同士が隣り合って並ぶシーンがありました。しかし、お互いを見ることもせず、あいさつすらしなかったのが印象的でした。このようなシーンが、テレビ番組で報道されるわけです。ここでどちらかが先に、腰を低く、謙虚にあいさつをすれば、それに好感を抱く国民はいると思います。『選挙に勝たなければ』という自分の思いと、同じ選挙を戦っている相手に対して敬意を表する気持ちは別物として捉えるのが真心あるマナーであると考えます。ただし、このことは『良し悪し』ではありません。政治家は、人前に立つ機会が多くあります。このような場面が報道された時、子どもたちなどのお手本となる言動をしていただけるとありがたいと思います。政治家以前に、まずは人としての『マナー力』つまり『人間力』が必要なのではないか、と感じました」

「心・言葉・行動」という3つの「こ」

Q.今回の選挙戦では「排除」という言葉が注目を集めました。

西出さん「先述の通り、議員は国民から選ばれた代表であるという根本を忘れてはいけないと思います。その原点を見失っていなければ、同じことを伝えるにも、相手の立場に立った思いやりのある言い方や言葉になるはずです。マナーには『心・言葉・行動』の3つの『こ』が必須。相手を思いやるマナー心で、相手を傷つける言動は避けたいものです。言われた言葉は、良くも悪くも人の心に残ります。そして、自分が発した言葉は自分に返ってくる、ということを教えられた気がします」

Q.今回の選挙をマナー的観点から総括してください。

西出さん「今回の選挙は、私たち国民が立候補者の『政治家』としての資質にまで、目をやり、考えさせられた選挙だったと思います。それは逆に、政治家の方々、また、今後の日本の政治のあり方に良い影響を及ぼしていく一つのきっかけになるのではないかと期待します。そして、私たちも日常の生活や仕事において、ただ他者を批判するだけではなく、今回の選挙や政治家を教訓として、お互いを思いやるマナー力でトラブルのない社会を目指したいものです」

(オトナンサー編集部)