毎年夏〜秋に日本へ接近して大きな影響を与える「台風」。今年は10月に入ってからも台風が多く発生し、各地に大きな被害が出ています。ところで、台風が日本列島を縦断した後、気象情報などで「温帯低気圧に変わりました」という解説をよく耳にしませんか。これを聞くと台風の脅威が去ったと安心する人が多いと思いますが、実は「温帯低気圧」は台風以上の被害を及ぼす可能性があるのです。

 オトナンサー編集部では、台風と温帯低気圧の違い、また温帯低気圧の“意外な”脅威について、雲研究者で気象庁気象研究所研究官の荒木健太郎さんに聞きました。

前線を伴わない「台風」、伴う「温帯低気圧」

 そもそも台風とは、熱帯や亜熱帯の海上で積乱雲が組織化して発生する「熱帯低気圧」がさらに発達したもの。北西太平洋または南シナ海(赤道以北、東経100度〜180度までの領域)にあり、低気圧域内の最大風速が約17メートル/秒以上のものを指します。

「台風は暖かい海面から供給された水蒸気が凝結し、雲になる時に出る熱をエネルギーとして発達します。台風の目の周りは、空高く発達した積乱雲が取り巻いており、激しい雨が連続的に降ります。熱帯低気圧や台風は暖かい空気だけでできており、前線を伴わないのが特徴です」(荒木さん)

 一方「温帯低気圧」は、冷たい空気と暖かい空気がぶつかる前線上で、上空の気圧の谷(周囲より気圧が低いところ)が近づいてきた時に、空気が渦を巻くことで発生します。台風とは異なり、南北の温度差があるため前線を伴うのが特徴。暖かい空気が冷たい空気に乗り上げてできる「温暖前線」と、冷たい空気が暖かい空気の下にもぐり込んでできる「寒冷前線」が降雨をもたらします。

「台風が北へ進むにつれ、台風に伴う暖かい空気と北の冷たい空気がぶつかって前線が発生するのに加え、上空の気圧の谷の影響を受けるようになります。そして、風速が台風の基準値以上であっても、気圧の谷や前線など台風の構造が変化したと認められた時点で、気象情報でよく耳にする『台風が温帯低気圧に変わった』と表現されるのです」

 温帯低気圧に変わった後も風速が17メートル/秒を超えていることがありますが、その場合も再び「台風」とは呼ばれません。「温帯低気圧に変わる」という表現には、風速の変化は含まれず、構造の変化のみを示したもの。また、低気圧の発達メカニズムが異なるため、台風の頃よりも中心気圧が低下することもあります。つまり、温帯低気圧への変化に伴って風速も弱まるとは限らず、時には台風以上の風速を保ったまま進む温帯低気圧もあるのです。

「台風では、特に風の強い『暴風域』が中心付近に集中しているのに対し、温帯低気圧では広い範囲で暴風が吹くのが特徴です。暴風や高波に加え、発達した低気圧の中心付近では台風と同様に高潮が起こる可能性もあります。また、低気圧南側の寒冷前線と温暖前線に挟まれた領域は大気の状態が非常に不安定になり、大雨や雷、竜巻などをもたらす積乱雲が発生する場合もあります。温帯低気圧に変わったからといって油断は禁物。防災上、温帯低気圧はとても危険な存在なのです。台風が温帯低気圧に変わった後も、最新の気象情報を確認して荒天に備えましょう」

■荒木健太郎さん公式ツイッター
https://twitter.com/arakencloud

(オトナンサー編集部)