パナソニックコネクティッドソリューションズ社の植物工場

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 施設園芸というと、まずは昔ながらのガラス温室、ビニールハウスが頭に浮かぶ。だが最近では植物工場やIoT(モノのインターネット)など最新技術の活用が盛んに試みられている。特許庁がまとめた特許出願技術動向調査によると、施設園芸に関する特許出願は2008年以降、毎年数百件ペースで増加。年間2000件を突破した。農業人口の減少に対応し、食料自給率向上や日本ブランドの作物の輸出を促進する上で、IoTなどを活用した施設園芸の技術進化は欠かせない。同調査を基に施設園芸農業の競争力を分析する。

 施設園芸農業はガラス温室やビニールハウスなどの構造物内で、生育環境を制御した形で野菜や果物を栽培する農業だ。国土の狭いオランダを中心に発展し、90年代以降急速に拡大。高度で複雑な環境制御技術により、イチゴやレタスなどの葉物野菜を、季節を問わず毎日収穫でき、食の安定供給に寄与する。

 要素技術はセンサーや画像処理、ICT(情報通信技術)、AI(人工知能)、制御、ロボット、材料化学、エンジニアリングなど多岐にわたり、先端分野における日本の強みが生きる。人工光型植物工場に使う「照明」「計測・制御技術」は日本からの特許出願件数がともに世界一だ。

 発光ダイオード(LED)などを活用した人工光型植物工場産の生産物は洗わず食べられるため省資源。なおかつ、腎臓病患者でも生で食べられる低カリウムレタスや機能性成分に富んだスプラウトなど、露地では得られない特性を持った高付加価値野菜を安定した品質、量で出荷するのに適する。

 特許庁は「従来の大型施設でなく、一般家庭やレストラン、小売店向けなど小回りの利く小型施設、装置が新たな市場を作り出す可能性もある」と分析。「人工光型植物工場の特長を生かして作物の高収益化・高付加価値化を図り、施設園芸農業市場を拡大することが望まれる」と提言している。

存在感増す中国勢
 90年―14年の施設園芸農業の出願人別出願状況(出願先=日本、米国、欧州、中国、韓国)を見ると、日本が8315件で最多で全体の32・7%を占める。2位の中国(6176件)、3位の韓国(3659件)、4位のオランダ(1752件)、5位の米国(1613件)を大きく引き離し、6位のドイツ以下は1000件未満だ。

 日本からの出願では企業単独によるものが全体の約70%を占め、米国の同約50%、中国の同約37%に比べて高い。90―14年における出願人別ランキングではパナソニックが首位、三菱化学が2位になるなど日本企業が上位20社中14社を占め、大きな存在感を示す。

 ただし、調査対象期間を90年代、00年代以降に区分すると顔ぶれが少し変わる。90―00年は1位が三菱樹脂、2位が井関農機、3位がデンマーク・ロックウールインターナショナルだった。01年―14年になると1位にパナソニック、2位にオランダ・ロイヤル フィリップス、3位に韓国・農村振興庁と入れ替わり、6位にシャープが食い込むなどエレクトロニクス系企業が台頭する。

 また、90年代に上位20位までに6社が食い込んでいた欧州勢は00年代以降は2社に減り、かわって米ダウケミカル、中国・中国農業大学など米韓中の出願人が上位に入った。

 一方、施設園芸農業にかかわる国籍別の論文発表件数(研究者所属機関)をみると、中国の力の入れ方が浮き彫りになる。施設園芸農業に関連して90―15年に発表された論文の総数は9008件。

 このうち中国籍が1435件(全体の15・9%)で首位。2位は米国の1290件(14・3%)、3位は日本の608件(6・7%)。シェアを急速に拡大する中国に対して、相対的に日本、米国、欧州の存在感が低下している格好だ。

 世界の食市場は09年の340兆円から20年には680兆円へと倍増すると予想されている。自然環境に影響されず、日照時間が少ない地域や水資源確保が困難な地域、寒冷地、紛争で荒廃した地域などでも有効な施設園芸農業は、アジアやアフリカ、中東、ロシア、北欧など世界中で商機が広がるのは確実だ。

(文=鈴木真央)