抜歯の後にちゃんとケアをしないと…(写真:kou / PIXTA)

歯科医院で虫歯治療や歯列矯正などをする際に、歯を抜く=抜歯をしなければならないときがあります。成人の男性・女性共に親知らずを抜いた経験のある人も少なくないでしょう。

「ドライソケット」とは?

筆者は歯科医師としての知見や経験を基に、歯や口周りの情報を「ムシバラボ」というサイトで発信していますが、その中で紹介していることの1つが、抜歯後の「ドライソケット」という症状です。

多くの方は歯を抜く瞬間の痛みを心配します。歯を抜くときは麻酔をするので、そこまで痛くないことがほとんど。麻酔が切れた後のほうが痛いという人も多いでしょうが、痛み止めを飲むことである程度抑えることができますし、数日経てば痛みは徐々になくなっていくのが一般的です。ところが、強い痛みがいつまで経っても治らない場合があります。その原因の可能性の1つがドライソケットです。

ドライソケットとは、ドライ(乾いた)ソケット(窩=穴)。つまり、乾いた穴を指しています。通常は抜歯をした後の穴には、血の塊ができ、特別な処置を施さなくても徐々に穴がふさがっていくのですが、自然に穴がふさがらず、ポッカリと穴が空いて骨がむき出しになったままになってしまいます。

「抜歯窩治癒不全」とも呼ばれるドライソケットは、治りが遅くなり、さらに骨が露出していることで刺激を受けやすい状態になり強い痛みとなって表れるのです。

抜歯後の2〜4%の割合となりますが、比較的多いとされるのが下の親知らずを抜いた後のドライソケット。耐えがたい痛みが10日〜2週間、ひどい場合だと1カ月も続いてしまうことがあります。

こんな症状があったらドライソケットかもしれません。

(1)抜歯後2、3日経ってから痛みが増してきた

抜歯後の痛みは通常、抜歯直後がピークです。麻酔が切れた施術の2〜3時間後が、最も痛みを感じるときだといえます。ドライソケットになってしまった場合は、麻酔が切れた瞬間よりも抜歯後2、3日経ってからのほうが強い痛みを感じるようになります。

痛み止めが効かない…

(2)痛みの程度がひどく、長引いている

痛み止めを飲んでもすぐ切れてしまう、痛み止めを飲んだのに効いているような感じがしないという症状がある場合は、ドライソケットを疑うことができるでしょう。「ちょっと痛いかも」といった程度ではなく、痛すぎて何も手につかないというような激痛が1週間以上続くこともあります。

(3)飲食時に痛みがひどくなる

食べたり飲んだりするときに痛みがよりひどくなります。これは、ドライソケットによって骨が露出しているために起こります。食べ物や飲み物が神経部分に直接触れるわけですから、痛みも激しいものになると予想できます。

(4)悪臭がする

ドライソケットになると、抜いた穴から悪臭がします。口臭が強くなったなと感じたり、話している相手の表情が気になったりしたときは、ドライソケットの可能性を疑ってみることができます。

(5)穴がポッカリと空いて白っぽい

骨が露出しているため、抜いた穴が大きく空いていて内部が白っぽく見えます。通常なら血の塊ができてきますので赤〜濃い紫に見えることが多いのですが、白っぽい影が見えたらドライソケットの可能性を疑うことができるでしょう。

そもそもドライソケットになってしまう原因とはなんでしょうか?

〃譴硫瑤鯲してしまった

「うがいのしすぎ」「何か吸う動作をして穴に吸引力がかかった」「舌でいじった」などが原因で、せっかくたまった血の塊が剝がれてしまうことがあります。再度、血の塊が形成されればいいのですが、そのままになってしまい、骨が露出した状態で維持されてしまうこともあるのです。

血の塊ができなかった

血が固まる前に血行がよくなりすぎることをしてしまった場合(飲酒、激しい運動、風呂につかるなど)、血が流れてしまって塊状に固まらないことがあります。

7譴あまり出なかった

麻酔に含まれる血管収縮薬の影響で、正常に出血が起こらない場合があります。血の塊の元になる血の量が不足するために抜歯部分がふさがらず、ドライソケットになってしまうのです。

骨が空気にさらされる時間が長いと起こりやすくなる

て颪靴と柑だった

特に深く埋もれた親知らずなど、時間のかかる抜歯の場合、骨が空気にさらされる時間が長くなることがあります。このようなケースでは骨が外部に露出した状態で落ち着いてしまい、出血も少なくなり、ドライソケットも起こりやすくなるのです。

サ扮譴鬚靴

たばこに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があります。そのため、抜歯後にたばこを吸うと血流が悪くなってしまい、傷の治りが悪くなったり、ドライソケットを起こしやすくなったりするのです。

Υ鏡を起こした

抜歯した部分に何らかの感染が起こると、歯茎に炎症が起こり、血の塊が炎症によって溶けてなくなってしまうことがあります。そのため、いつまで経っても血が固まらずにドライソケットになってしまうことがあるのです。

ドライソケットは基本的に自然治癒します。時間が経過するにつれて徐々に抜歯部分がふさがり、露出していた骨も隠れるようになります。ただ、場合によっては、放置している間に骨炎を起こして骨を削り取らなければならなくなることもあります。そのようなリスクを冒さないためにも、ドライソケットに気づいたらすぐに治療を開始したほうがいいのです。

治療には3つのプロセスがあります。

【1】

ドライソケットによる強い痛みに対しては、鎮痛剤で対処していきます。また、抜歯部分の感染予防に対しては抗生剤が投与されます。一定期間の治療が必要になりますので、長期的な投薬で胃腸が荒れてしまわないよう胃薬や整腸剤が一緒に処方されることもあります。

【2】抜歯した穴に軟膏をつける

抜いた穴を洗浄・消毒し、軟膏を直接塗布することでドライソケット部分の治療を行います。唾液や飲み物などで軟膏薬が流れてしまわないように、軟膏を塗ったガーゼで露出した骨の表面を覆って保護することもあります。

【3】抜歯した穴を再掻爬(さいそうは)する

ドライソケットの自然治癒が見込めないときは、再度局所麻酔を実施し、抜歯部分の内部を引っかいて故意に出血させて血の塊を作ることもあります。炎症が強いと痛みを伴うことがありますので、手術後には鎮痛剤などが処方されます。

ドライソケットにならないよう予防するには

抜歯した部分がドライソケットにならないよう、ある程度自力で予防することができます。

●抜歯前

<1>体調を万全にしておく

体調が悪いときや疲れがたまっているときなどは、体の抵抗力が落ち、さまざまな感染症に感染しやすくなります。抜歯部分が感染してドライソケットにつながってしまわないためにも、抜歯の日を万全な体調で迎えられるように体調管理をしておきましょう。

<2>きちんと歯磨きをして口の中を清潔にしておく

口の中の細菌が多ければ、それだけ感染を起こしやすくなります。特に親知らずは最も奥にありますので、歯磨きがきちんとできていない人も少なくありません。

「どうせ抜く歯だから」と歯磨きをしないでいると、歯の周りに細菌が多く潜むようになり、抜歯と同時に感染し、ドライソケットを起こすこともあるのです。抜かない歯はもちろん、抜く予定の歯も、丁寧にブラッシングをして清潔に保つようにしてください。

○抜歯後

<1>血が止まるまでガーゼをしっかりとかむ

きちんと血の塊ができれば血は止まり、抜歯によって生じた穴がふさがっていきます。出血している間にガーゼを外してしまうのではなく、血が止まるまでガーゼをしっかりかむようにしましょう。

<2>口を極力ゆすがない

「血の味がするから気持ちが悪い」、また「食べ物が入ったから取り除きたい」といって、抜歯後に水でぶくぶく口内をゆすぐのはNGです。うがいが多すぎることが、ドライソケットを起こしやすくする最大の原因といわれています。抜歯後数日は、ぶくぶく口の中をゆすぐのは避けるようにしましょう。

気になって何度も触れるのはNG

<3>抜いた部分を触らない

抜いた部分の穴が気になって、指や舌で何度も触ってしまう人がいますが、このように何度も触れると、抜歯部分が細菌感染を起こしやすくなってしまいます。また、せっかくできた血の塊が剝がれてしまうかもしれません。気になっても触らないようにしてくださいね。

<4>抜いた部分を吸わない

抜いた穴に食べかすが入ったとしても、吸い取ったりしてはいけません。勢いよく吸い取ると、抜歯部分にせっかくできた血の塊を剝がしてしまうことにつながります。

<5>当日は血行がよくなることを避ける

抜いた当日は激しい運動や飲酒、湯船につかるなどの血行がよくなることを控えましょう。血が止まりにくくなり、血の塊ができなくなる原因となります。

<6>たばこを吸わない

喫煙は治りが遅くなったり、血行が悪くなったりする原因になります。抜歯後最低1週間ほどはたばこを控えるようにしてください。

ドライソケットになりやすいのは下の親知らずです。

歯茎に埋もれているなどの理由で不潔になっていることが多く、細菌感染を起こしやすい下顎の骨が緻密で硬いため、出血しにくい。硬い骨にがっちり埋まっていることが多く、難抜歯になることが多い。

これらの理由によって、ドライソケットになりがちです。自然にドライソケットになってしまうケースもありますが、上にあげた注意事項をしっかり守ることでドライソケットになることを回避できることも多いのが筆者の実感です。