怪しげな“治療”を行った呪術医を逮捕(画像は『Khaleej Times 2017年10月23日付「Court files: Witch doctor cons childless woman of Dh60,000」(Alamy)』のスクリーンショット)

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少し前にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで、「魔法の力で問題を解決する」と偽ったアラブ人姉妹が逮捕されたことをお伝えしたが、この国で今度は不妊に悩む女性に確実な妊娠を保証するという“治療”を行い多額の金を巻き上げた“呪術医”が逮捕された。『Khaleej Times』など複数のメディアが報じている。

被害者の女性は6年前に結婚して以来子供を授かることができず、不妊治療を受けていたものの妊娠の兆候が見られなかったことから友人に悩みを打ち明けた。すると不妊治療を行う呪術医に、助けてもらうのはどうかと提案されたという。

不妊治療のみならず、イスラム教由来の「ジン」と呼ばれる霊魔撃退や夫婦間など人間関係を改善するなどと称するアラブ人のこの呪術医は、アル・アインにある被害者の友人宅で治療を行うことを同意した。

だがこの治療とは女性の顔と体にパウダー状のものを塗り、「特別な効力のある水」を渡して家で浴びさせ、土曜日の夜明けの時間に卵を1個、自宅の玄関のドアにぶつけるというなんとも奇妙なものであった。その卵の殻を呪術医が後日墓地に埋めることで治療は完了、被害者は妊娠することができるようになるだろうと言われたそうだ。

かなり怪しい治療法だが、結婚して子供を持つことが重要視されている中東で、子供が欲しいのに妊娠できないこの女性は藁にもすがる思いで頼ったのであろう。

だが玄関に卵を投げるため、夜中にベッドを抜け出した被害者のあとを彼女の夫が密かにつけたことで事態は明るみに出た。妻の尋常ではない様子を目にした夫は彼女を問いただし、これらの治療に6万ディルハム(約188万円)もかかったことを知ったため、アル・アインの警察に通報、呪術医は逮捕された。

取り調べにおいてこの呪術医は、呪術による治療を行っていたこと、自分から顧客に支払いを強制したことはないなどと供述した。だが後日、アル・アインの裁判所で行われた初公判で、彼は自分の罪状を否認したと報じられている。また、治療の際に家を貸したことから被害者の友人もこの呪術医とグルであったようだが、この友人に関するその後の動向は伝えられていない。

イスラム教の戒律が厳しい中東諸国であるが、今回のように魔術や呪術が絡む事件は珍しいことではなく、国も対策を講じているようだ。ドバイやアブダビよりもさらに戒律の厳しいサウジアラビアでは2016年に勧善懲悪委員会(宗教警察)がこうした事件に対処するため、呪術医や魔術師の特定方法、呪術や魔術への対処及び撲滅の仕方など、論理的及び実践的内容を含む5日間の特別な訓練を職員30人に対して行ったことを発表していた。

画像は『Khaleej Times 2017年10月23日付「Court files: Witch doctor cons childless woman of Dh60,000」(Alamy)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 椎名智深)