来年2月の平昌五輪を目標にしつつ、その先も見据える次代のエース、宇野昌磨は10月27日、カナダのレジャイナで行なわれたスケートカナダのショートプログラム(SP)で、ただひとり100点台の103.62点を出して首位発進。五輪シーズンのグランプリ(GP)シリーズ初戦で好スタートを切った。


スケートカナダのSPで首位発進した宇野昌磨

「すごくいい調整ができました。6分間練習では体が動きすぎて、ジャンプが回りすぎてどうしようという感じで、ヤバイヤバイと笑顔で言いながら楽しく滑れていたのでよかったかなと。今日は、自分の力がちゃんと出せたと思います。(連続ジャンプの)3回転トーループが2回転になりましたけど、許容範囲だったかな。自分(の状態)をよく知って、いい対応ができた」

 大会会場入りは開幕1週間前の20日。苦手の時差調整にしっかり取り組み、SP前日の朝の公式練習には「よく寝すぎてしまった」とバッチリ寝癖のついたヘアスタイルでリンクに現れるなど、コンディションは万全の状態だった。

 この日のSPでは、大トリの最終滑走で登場。冒頭の4回転フリップを鮮やかに成功させて波に乗った19歳は、動きに勢いがあった。ミスも連続ジャンプの2本目を3回転から2回転にあえてするなどで最小限にとどめ、続くトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は2.43点のGOE(出来映え)加点がつくほど美しいジャンプを決めた。

 SPの四季『冬』の選曲は、振付師の樋口美穂子コーチによると、宇野の母親がやってほしいと数年前から希望していたという。それを、今季やっとこの『冬』を演じられると判断した樋口コーチが振り付けたもので、陣営にとって、ある意味思い入れのあるプログラムだ。本人は「特別な思いはない」と素っ気ないが、五輪が控える大事なシーズンに勝負のプログラムができ上がったと言ってもいいだろう。このプログラムに関しては、何かをイメージして演技しているのではなく、宇野が音楽を感じたそのままを表現しているという。

「何かを表現しようかと、いろいろやってみたんですけど、僕には難しかったので、いまは自分の動きやすいように動いています。だから、僕は毎回演技が違うくらいの勢いで、気持ちに左右される表現でいいんじゃないかと思ってやっているので、本当に毎回変わると思います。それが自分のいい味だと言っていただけるように演技を磨き上げていきたいです」

 シーズン初戦だった9月のロンバルディア杯で出した自己ベストには1.25点及ばなかったが、見る者を引き込む演技を見せて、この日一番多くの観客からスタンディングオベーションを受けていた。滑り終わった瞬間は何も覚えておらず、何も頭に入ってこなかったという宇野は「アドレナリンが出すぎた」と、高い集中力を見せて演じ切り、満足のいく演技ができたと胸を張ってみせた。

「ちゃんと実力を出せればできるかな、という構成になっているのが今季のSP。いまの実力の100%はちゃんと出せたかな。でも、これ以上を目指すには、やはり練習がまだまだ足りていないです。いまの100%ではありますけど、自分が一番いいとする100%にはほど遠かったです」

 元世界王者のパトリック・チャンらを向こうに回して、余裕のSP首位スタートにも宇野に浮き足立った様子は一切ない。しっかりと地に足をつけて、自分がやるべきことが何かを把握して、大きな目標に向かってまっしぐらに突き進んでいる。

 シニアデビュー以来、2年連続出場しているGPファイナルが、今年は12月上旬に名古屋で開催される。3年連続のファイナリストとして地元に凱旋(がいせん)するためにも、このGP初戦のスケートカナダで優勝したいところだ。

「(フリーは)SP同様に自分の実力を100%出せるように最後まで全力で、最後までコンビネーションジャンプを気合い入れて跳びたいです」

フリー『トゥーランドット』では4回転ループを入れ、今回は4回転サルコウを跳ばない。その上で、プログラム後半にリカバリーできないリスクを負う3つの連続ジャンプを組み込む構成にするという。10月初旬にあったジャパンオープンで、ひとつも連続ジャンプが跳べなかった自分に甘さがあったことへの反省がある。あえて攻めのジャンプ構成に挑むのは、常にチャレンジャーである立ち位置を再確認する意味が込められているに違いない。

 今季も「攻める!!」がテーマの宇野に注目したい。

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