手術中のツキノワグマ“ニャン・トゥー”(画像は『Herald Scotland 2017年10月23日付「In pictures: Bear with gigantic 3Kg tongue saved by Scottish vets」』のスクリーンショット)

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あまりに大きな舌を持つクマの話題がミャンマーから届いた。このクマの舌は頭ほどの大きさに肥大し移動する際も常に引きずっていたことから、命に関わるとして舌を切除する手術が行われたという。『USA TODAY』『La Libre.be』『Herald Scotland』など世界中のメディアが伝えている。

舌が肥大化したのは生後18か月のツキノワグマで、名前はニャン・トゥー(Nyan htoo)といい「明るい」という意味を持つ。ニャン・トゥーは違法な動物取引の犠牲になるところを、兄弟であるカン・トゥーと一緒に僧侶によって救出された。

そして2頭はミャンマーの修道院で暮らすこととなった。救出後にニャン・トゥーの舌に異変が見つかったが、時が経つにつれ舌は徐々に大きくなっていったという。これを見かねたイギリスのエディンバラ大学ロイヤル(ディック)獣医学部の専門チームが昨年、地元の獣医らと協力して舌の余分な組織を摘出する手術を行った。

ニャン・トゥーはこのまま回復すると思われていたが、再び舌が肥大化してしまったのだ。カン・トゥーとじゃれ合いながら遊んでいる時もニャン・トゥーは地面に舌を引きずっており、巨大な舌は鋭い歯に当たってしまうため傷を負っていた。しかもニャン・トゥーは、檻の中にあるバーに頭を預けて休んでいることが多くなった。

このままではニャン・トゥーの命が危ないことは誰が見ても明らかだった。今年6月、動物福祉専門家でエディンバラ大学の獣医ヘザー・ベーコン氏、動物保護団体「Animals Asia」ベア・レスキューセンターのキャロライン・ネルソン動物看護師、そして野生動物の手術を専門に行う「Wildlife Surgery International」のロメイン・ピッツィ医師が中心となり、ミャンマーで再手術を行うことになった。手術費用はクマの保護・福祉活動を行うチャリティ団体「ウィントン基金(Winton Foundation for the Welfare of Bears)」と「フリー・ザ・ベアーズ(Free the Bears)」によって集められたという。

ニャン・トゥーの頭ほどもある舌の余分な組織は約3キロもあり、4時間もかけて取り除かれた。舌の巨大化は、蚊が媒介する感染症「象皮病」にかかっていたものと見られている。

象皮病はミャンマーの人々とって珍しくはないというが、クマが感染した事例は初めてだったそうだ。今回の手術を終えてベーコン獣医はこのように語っている。

「ニャン・トゥーの生活は以前と比べものにならないくらい改善されました。『ニャン・トゥーを救いたい』という専門家が知恵を出し合って共同プロジェクトを立ち上げ、このような良い結果を残せたことに感謝しています。今後も我々は、動物福祉と獣医のトレーニング促進のためにミャンマーで仕事を続けたいと思っています。」

またネルソン獣医看護師も「今回の病状は今までに見たことのないものでしたが、私達は諦めるつもりはありませんでした。本当に彼の生活が歴然と改善出来たことに大きな喜びを感じております。今のニャン・トゥーは元気よく食べて、よく眠り、身軽に動き回っています」と明かしている。

画像は『Herald Scotland 2017年10月23日付「In pictures: Bear with gigantic 3Kg tongue saved by Scottish vets」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)