今年9月、毎日新聞は全国警察本部を対象に実施した調査結果を発表した。その内容とは、「'14〜'16年の3年間で、203件の遺骨が警察に“落としもの”として届けられた」というものだった。弁護士の外岡潤さんはこう語る。
 
「遺骨を無断で置き去り、あるいは捨てる行為は刑法第190条『死体遺棄罪』に該当する犯罪で、3年以下の懲役に処されるものです。遺骨は自治体の許可を受けた墓地や納骨堂に埋葬することが法律で定められており、庭に遺骨を埋めることも認められていないんです。しかし、家で遺骨を管理することは公で認められており、何も問題はありません」
 
前出の調査では、3年間に警察に届けられた203件の遺骨のうち、8割以上の166件は落とし主が見つかっていないことが明らかになっている。そして、《寺院や墓地で拾われたケースが多いが、駅のコインロッカーや図書館に放置されたものもあった》とし《警察当局は、遺骨処理に困って家族らが捨てたケースが大半だとみている》という。
 
計203件の年度別件数は、'14年に63件、'15年に68件、'16年に72件と増加傾向にある「遺骨遺棄」――。引取り手のない遺骨=無縁遺骨の事情に詳しい葬送・終活コンサルタントの吉川美津子さんは、次のように解説する。
 
「社会問題化している老後貧困や、家族関係の問題などがこの根底にはあります。'07年に、病死した夫の遺骨を遺棄して書類送検された女性は、『お墓を建てるお金がなかった』と供述し、不起訴処分となりましたが、供養したくてもできない人がいることも事実。お寺の門前に放置されていたり、電車の網棚に、あたかも“忘れ物”のごとく置きっぱなしにするケースも報告されています。今年1月にはJR東京駅のコインロッカーに妻の遺骨を納めた骨壺を捨てたとして、74歳の男が死体遺棄容疑で逮捕された事件もありました」(吉川さん・以下同)
 
放置された遺骨の引取り手が見つかったとしても、こんなケースも……。
 
「実の父親の遺骨なのに『もう何十年も音信不通だったんだし……』と拒否する娘さんもいたようです。引取り手のない遺骨は全国的に増加中で、静岡県浜松市では自治体に届けられる遺骨が納骨堂の収容限界の1,000件に近づき、500人分の遺骨を業者に委託したほどです」
 
配偶者や肉親の遺骨を捨てる、受け取りを拒否する――。“お骨はお墓に入る”という従来の考えからは、一見かけ離れた行動にも見える。しかし、いつかは必ず直面するであろう自分や親族の死について「少しでも考えてほしい」と吉川さんは語る。
 
「かつては『先祖代々のお墓に入る』という『供養の定型』がありました。昨今は生き方や価値観が多様化していると同時に、核家族化が一気に進んだ団塊の世代も高齢者になってきています。『自分のことは自分で決める』と個人が優先される世の中、“決められる人”もいれば“決められない人”も当然いる。ここでいう“決められない人”とはつまり『死者をどのように弔ったらいいのかわからない人、考えたことがない人』のこと。そういう人は、突然目の前に置かれた遺骨に、パニックを起こしてしまう場合があるんです。そしてそれが、遺骨の放置や遺棄につながることも……」
 
吉川さんは「『死んだ後、どうするか』の選択肢・方法を知ることが大事」と続ける。
 
「新しく墓を建てるのに数百万円もかかり、さらにそれを守っていくとなると、途方に暮れてしまいます。しかし最近は、屋内納骨堂のほかにも樹木葬や海洋散骨などスタイルは多様化しています。供養に関する悩みや心配事を聞くコンシェルジュやアドバイザーに相談してみるのもいいかもしれません」