美輪明宏が「人付き合いは『腹六分』でいい」と説くワケ

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お金のこと、男女間のこと、親子関係のこと。人生には悩みがつきものです。

しかし、そうした悩みについて、頭では「解決の糸口がまったく見えない」と考えつつも、心のなかでは既に「本当は○○したい」と思っていることは少なくありません。

であれば、悩みの解消に向けた一歩を動き出せるかどうかは、「背中を押してくれる言葉に出会えるかどうか」の違いだけではないでしょうか。
そしてもしも、リアルにそうした言葉に出会うことができず、「次の一歩」を踏み出せないというのなら、読書を通して出会うのも一つの手です。

ここでは、10代から70代まで様々な人々の悩みに、美輪明宏さんが実に歯切れよく答えている一冊、『楽に生きるための人生相談』(朝日新聞出版刊)のなかからいくつか例を紹介します。

■「友人関係がなかなか長続きせず、将来が不安」という18歳・男性学生の例

この悩みに対し美輪さんは、「いつまでも付き合える人は一生に何人も出てこない」「親友なんて一人できればいい方」としたうえで、「人間の付き合いというのは、『腹六分』がちょうどいい」と回答しています。

では、「腹六分」とは、何をいわんとしているのでしょうか。
美輪さんは、作家・三島由紀夫さんとの交友関係を例に、その意味するところを説いています。

二人の交流は18年にも及びました。そして18年のあいだ、三島さんが年末年始の挨拶をしに美輪さんの家に来たのは、たった2回。
でも、このように「つかず離れず」の関係こそが、大人の友情として健全なのだ、というのが美輪さんのメッセージです。

少し想像しづらい話かもしれませんが、美輪さん世代にとっての「年末年始の挨拶」は、いまの30〜40代でいえば「飲み会の2次会、3次会に行くこと」のようなもの。
つまり、あまり気を遣う必要のない相手と、リラックスした時間を過ごせる機会を指しています。

でも、心地よい時間だからこそ「ほどほど」にしたほうが相手と慣れ合いにならず、よい関係を保てるのではないか、というのが美輪さんからのアドバイスのようです。

ちなみに三島さんは、切腹事件の直前にわざわざ「最後のあいさつ」をしに美輪さんのもとを訪れたそうです。そして、彼が自殺をほのめかすことはありませんでしたが、なんとなく「ただことではない」と察した美輪さん。本書では、ふたりが最後に交わした会話の一部も明かされています。

■「夫の浮気で失った自信を取り戻したい」という30代・女性の例

結局、浮気は短期間で終わり、いまは元通りの生活に戻ったというこの女性。
しかし、夫の浮気相手が自分よりも「美人で優秀であった」ことにショックを受け、いまだその状態から立ち直れずにいるといいます。

この悩みに対する美輪さんの答えも、実に明快。

「そもそも浮気をしない男は『無形文化財』」「セックスなんて、所詮、排泄行為にすぎない」「『隣の芝生』とちょっと比較してみたくなっただけ」と、この女性を励ましつつ、「結局はあなたのところに戻ってきたのだから、勝ちを誇ればいい」と答えています。

たしかに、人は落ち込んでいるときほど、論理より感情が先走り、誤った言動をして、ますます悪循環に入っていくことがあります。そうした状態からいち早く脱するには、美輪さんのように、冷静に状況を分析することが大切なのかもしれません。

■「年上の人とうまくいかない」という40代・女性の例

最後は、「相手に尊敬するところがないと、つい自分の心を閉ざして」しまうために、年上の人との関係がうまくいかないという女性の例を紹介しましょう。

「また、やさしい言葉をかけるのかな…」と思いつつ読み進めてみると、そこはさすが美輪さん。まず、「あなた自身は他の人が尊敬できて、近づいていきたいと思えるような人間なのか」と一刀両断します。

しかし、「突き放して終わり」ではないのも美輪さん節。
「自分が変われば、世の中の人も変わる」「あなたには、ほほ笑みの練習が足りない。ほほ笑むだけで人生は好転する」と背中を押しています。

このやりとりを見て、「耳が痛い」と思う人は少なくないはず。まさに「人の振り見て…」で、まずは自分を変えることの大切さに気づかされます。

本書では他にも、「夫の年収が足りません」という30代女性、「子供がいる人に嫉妬する」という39歳女性、「再就職せず、作家の夢を追いたい」と語る30代男性などに対し、美輪さんは次々と力強い言葉で解決の糸口を示していきます。

人生を前に進めるためのきっかけになる一冊といえるでしょう。

(新刊JP編集部)

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