在米中国政治評論家の陳破空氏(陳柏洲/大紀元)

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 「今回の党大会では、王岐山氏は仕方なく『以退為進』(前進するためにひとまず後退すること)したのだろう」。このように話したのは米ニューヨーク在住の中国政治評論家で、80年代後半中国の民主化運動に関わった陳破空氏だ。

 18日から24日まで約1週間の日程で開催された共産党党大会で、最高指導部人事の刷新が行われた。習近平政権のむこう5年間を占うポイントの一つとなったこの人事刷新は開会前から大きな注目を集めていた。

 陳破空氏は米の中国語テレビ放送局「新唐人」の番組で、党大会で習近平氏は主に2つの成果を収めた一方で、不首尾に終わったことも2つあると分析した。

習氏、権力基盤を盤石に

 側近の多くが最高指導部や上層部入りを果たし、権力基盤を一層強化したことが、習近平氏にとって最大の勝利だと陳氏は分析した。

 新最高指導部である第19期中央政治局常務委員会の7人のうち、習近平氏と李克強氏は再任したが、他の5人はすべて入れ替えられた。新しいメンバーとなったのは、栗戦書、汪洋、王滬寧、趙楽際と韓正の各氏。

 「この7人のうち、習氏の側近は栗氏と趙氏。胡錦濤前主席に近いのは共青団派(中国共産主義青年団)の李氏と汪氏の2人。王滬寧氏と韓正氏は江派寄りだ」。

 陳破空氏は、王滬寧氏と韓正氏は江派出身だが、同派の中心人物ではないとの見方を示した。「胡錦涛政権、習近平政権に変わっても、両氏が表立って対抗姿勢を示していなかったため、激しい派閥闘争を乗り切ることができた」

 また、中央政治局常務委員会に次ぐ中央政治局委員の新メンバー25人のうち、「15人が習氏の側近や元部下だ」と陳破空氏は言う。

 今後の政治・経済方針を制定する中国指導部で、江派勢力が明らかに後退したことは、習近平氏が党大会で獲得した最大の成果に違いない。

 もう一つの大きな成果は、次世代後継者の指名という党内の不文律を実質上、廃止したことだ。党大会開催の前、次世代リーダーとして、胡春華・広東省党委員会書記と陳敏爾・重慶市党委員会書記の最高指導部入りの可能性が高いと予測されたが、両氏は最高指導部に次ぐ中央政治局委員の職に留まった。

 陳破空氏は「習氏が文化大革命後に設けられた最高指導者の任期に関する掟を廃止した」と評した。

王岐山氏の退任を不本意にも容認した習氏

 

 一方、習近平氏にとって最も不本意なことは、王岐山氏の退任だ。習氏の右腕として反腐敗の戦いを仕切った王氏の去就をめぐっては、早い段階から「留任」「退任」「新しいポストにつく」など様々な説が流れており、反対勢力の激しい抵抗ぶりを物語っている。しかし、習氏が党内の反対派に妥協し、王氏の退任を容認したと、陳氏は指摘する。また、「党主席制」が復活できなかったことももう一つの不首尾な点としてあげた。習近平氏は、権力を一段と集中させるために1982年に廃止された「党主席制度」を再導入しようとしていたと伝えられている。

 党大会の開催前までに、海外の中国語メディアが相次いで、王岐山氏のスキャンダルを流した。「王氏にとって大きな圧力となったに違いない」「党内でも江沢民・曽慶紅らからの攻撃が激しかったのだろう」と陳氏は話した。

 党内「68歳定年制」の慣例から、王岐山氏など5人の常務委員が退任になる予定だった。この5人のうち、張高麗氏と張徳江氏と劉雲山氏は江派閥の重要人員だ。

 しかし、王氏が率いた中央規律検査委員会は習近平氏が掲げた「トラもハエも一緒に叩く」とのスローガンの下で、過去5年間、数多くの腐敗・汚職官僚を摘発した。失脚させられた「トラ」級大物はほとんど、江派重要人物で、江派を中心とした幹部の恨みを買ったのも事実だと陳氏は指摘する。

 「習近平氏が王岐山氏を留任させるとしたら、張高麗氏などの江派は強く反発するだろう。王氏を現職に留めたら、その代わりに江派からも一人ぐらいを留任させるべきだという意見が出てくるだろう」「江派らの抵抗を抑えるために、習近平氏が妥協案として、筋金入りの江沢民派も退任させることを選んだ」と陳氏は推測。

 「王岐山氏も、今後党内の情勢を習派に有利にするために、常務委員の再任をあきらめた」と陳氏は話した。

 陳破空氏は、習近平氏の盟友であり、反腐敗運動でも辣腕ぶりを発揮した王岐山氏は今後、国家主席の特使、国家副主席など他の重要ポストに任命される可能性もあるとみている。

(翻訳編集・張哲)