瀬戸内海に浮かぶ愛媛県越智郡に属する孤島「魚島(うおしま)」。その名の通り、豊富な魚介類がとれる漁場に恵まれており、古くから蛸壺漁で栄えた島でした。しかし、進む人口減少の影響で、現在の人口はわずか160名ほど、正に消滅の危機に貧しています。そんな魚島の漁業組合の職員の一人が起こした「魚島ならではの島おこし」が注目を集めています。

※本記事はジモトのココロに掲載された記事です。(2017年10月25日)

魚島の島おこし

篠塚漁港 / ©上島町

その島の名前は魚島。瀬戸内海に浮かぶ隔世たる感のある離島だ。今年 8 月、この島を初めて訪れた。

魚島の玄関である篠塚漁港

昔、堤防があった名残

本州あるいは四国から島に行くなら広島県の因島もしくは愛媛県の弓削島を経由しなければならない。それらの地と魚島を結ぶ 1 日 4 便の「ニューうおしま」号が瀬戸内の海に大きな飛沫をあげる。

1.49 ㎢の小さな島の人口は約 160 人。島の玄関口、篠塚漁港付近に民家が集中する。

島を散策

昔、旅館を営んでいたお宅

この島に暮らす友人に言わせると「島の人は皆、知り合いで小中学校の同級生はきょうだいみたいなもの」。

魚島の島四国巡り

中世には瀬戸内海で活動した村上水軍の見張所があったといわれる島内には村上水軍の財宝伝説が残り、四国霊場を模したミニ巡礼コースである「島四国」のお地蔵さんがあちこちで見られる。

週に2回ヘリコプターでドクターが診療に訪れる

離島ゆえ、コンビニも医療施設もない。島の人々の診療には広島県神石高原町からヘリコプターに乗ってドクターが週に2 回、訪れる。ちなみに神石高原町から魚島まで約 25 分とか。

島の名に「魚」が付いてるだけあり、魚島では魚介類がよくとれる。友人のお母様が腕によりをかけて作ってくださった料理には島で獲れた魚介類がふんだんに使われていた。

イカと大葉の握り寿司にとれたての魚の煮付け。なんと贅沢な…と嘆息しながら、普段は食べられない絶妙に味付けられた海の幸を余すことなく食べ進めたのだった。

魚島産のイカを用いた握り寿司

絶妙に味付けられた魚の煮付け

島を歩くとタコ壷がたくさん目に入った。現在、島の15世帯がタコ壷漁を行う。

タコ壺がいたるところに見られる

しかし、島で漁業を営む人は数は減少の一途をたどる一方で、昔は 100 軒以上を数えたが、現在は 17 軒。高齢化や後継者不足、漁獲量が減ったことなどが減少の要因だ。

蛸壺 / ©上島町

タコのおかげで、若手漁師の収入は約 3 倍に!

この状況を打破するためには、島の長所を伸ばすことが必要だ。魚が沢山とれる島だからこそできることは何だろうか。

そんな思いで漁業を土台とした島おこしに奔走している人がいる。魚島漁業協同組合専務の村上要二郎さんだ。

魚島漁業協同組合専務の村上要二郎さん

 

「魚島の人口は現在約 160 人ですが、役場関係者、小中学校関係者、住基登録のみの方を除けば地元民は 100 名足らずです。10 年後、この島はどうなっているでしょうか。きっと、子供は0、学校関係者も0、島を離れたり、他界する人は 30 名以上、また役場関係者も減り、確実に人口は 50 名を割り込むような状態です。学校がなくなることにより、地域のコミュニティは完全に失われ、静かに消滅への道を進むものと思われます」

と村上さん。

魚島が属する自治体、愛媛県越智郡上島町の町会議員も務める村上さんは、漁協職員という立場で魚島に暮らす。

「島の現状を目の当たりにして、どうにかこの島の消滅を防ぎたいと考えて漁協に飛び込みました。島の産業は漁業のみ。魚価は下がるし、漁獲量も取れない。やる気もお金もないこの島でどうすれば島の消滅を防げるのか?ということを考えたんですよね。その結論は『移住者の確保』でした。方法はいろいろあるとは思いますが、田舎は生産者があってのものだと私は考えています。そこで迷いもなく、漁師の所得、やる気のレベルアップを前提に取り組みを始めました」

魚島にやって来た村上さんがまず取り組んだのは、漁師の所得を上げるための販路を開拓することだった。約 1 年かけて営業した結果、各地に「くら寿司」を展開する株式会社くらコーポレーションとの年間契約が決まった。

この契約には鯛やスズキ、ボラ、アカエイなど定置網で獲れるすべての魚種を販売する「一船買い」というシステムを採用し、現在 3 人の漁師が取り組んでいる。

漁師さんの船が停留する漁港

村上さんは「仲買、市場を通さず直接販売を行い、中間マージンを漁師に還元しました。その結果、若手漁師の収入は約 3 倍になりました」と話す。仕事の収入が上がり、比例してやりがいも生まれる。理想的な循環だ。

また、漁業の活性化とともに、漁協女性部や愛媛県の料理研究家とともに魚島産の魚介類を用いた製品開発も魚島を活性させる 1 つの柱になりそうだ。島の漁協で、「真蛸としめじのアヒージョ」を求めた。

美味な真蛸としめじのアヒージョ

これは経産省の“世界にまだ知られていない、日本が誇るべきすぐれた地方産品”を発掘し、海外に伝えていくプロジェクト「The Wonder 500™」に選ばれた 1 品。やわらかなタコの旨味と香ばしいニンニクが食欲をそそる。

魚島産の魚介類を使った製品には「真蛸柔らか煮」「炊き込みご飯の素 蛸めし」「魚島海苔」などもある。最近、新たに「クラムチャウダー」「ブイヤベース」も開発され、東京では高級スーパーなどで販売される予定だ。

今年に入り、愛媛県済美高校食物科学コースの生徒とともに魚島のタコを使った製品開発も行われた。

魚島差のタコを使ったコロッケを開発 / © jf-uoshima

魚島漁協女性部と済美高校食物科学コースの生徒による製品開発が行われた / © jf-uoshima

 

「魚島タコロッケとして、済美高校生が松山市のお城下マルシェでテスト販売しました。次回は 11 月 18 日に開催される愛媛産業祭りへ出品する予定です。また、済美高校の真横にコンビニがあるので、生徒とコラボして作ったコロッケをコンビニで商品化できるよう営業したいと考えています。コロッケの中身は魚島産タコと梅干し、魚島海苔(味付け)とチーズ入りの 2 種です」

実は今、村上さんのもとに嬉しい知らせが舞い込んでいる。

「現在、2 名が魚島への移住を検討しています。話がまとまるかは別として、今までにはなかった向こうからのアプローチですから、とっても楽しみにしています。私の今後の目標は魚島で 2 世帯の若手漁師が生まれ、家族と子供で暮らしてもらうこと。島の消滅を防ぐことを目標としています」

瀬戸内海の離島、魚島は現状を打破するために舵を切った。船首は漁業でにぎわう島の未来を向いている。

image by: 上島町

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