10月25日より報道向けプレスデーが開幕した、「第45回東京モーターショー2017」。日産やスバルなどの不正問題に揺れる日本車メーカーですが、今回最も注目を集めているのはEV(電気自動車)の最新動向です。欧州を始め、中国、そして米国で加速する自動車のEV化の流れ。自身も米国でテスラ車を愛用する世界的プログラマーで、メルマガ『週刊 Life is beautiful』著者の中島聡さんは、このEVシフトへ加速する動きをどう見ているのでしょうか。東京モーターショーの開幕直前に来日した中島さんに、国産車ではEV化でリードする日産と、遅れをとっているとされるトヨタなどの未来についてお話をうかがいました。

EVシフトが加速するなか、好位置につける日産

欧州・中国市場を中心に、日々加速していると指摘されるEV(電気自動車)へのシフト。日本では正直あまり実感が湧かないところだが、ご自身もテスラ車を駆るという中島さんは、お住まいであるアメリカにおいて、その加速ぶりは身をもって感じるという。

「実際に西海岸のゴルフ場なんかに行くと、駐車場に停めてあるクルマの10台に1台ぐらいはテスラなんです。テスラとしては、まずは富裕層に浸透させてEVを憧れの存在にした後に、安価な価格帯に降りて来ようという目論見なんでしょう」(中島さん・以下同)

いっぽう、テスラのメガファクトリーよりも更に規模の大きな施設の建設を計画するなど、EVシフトを国策として強力に推進しているのが中国。こちらが狙うのは、低価格市場だ。

「中国は安くてそれなりにイイものを、低価格市場向けに押し込んでくると。富裕層向けの高級車から浸透を図るテスラと、1万〜2万ドルで買えるEVを世界中に送り込もうと虎視眈々の中国勢。日本の携帯電話市場が、iPhoneとAndroidの挟み撃ちで壊滅したことに近いことが、まさに起こりつつあるのではと思うんです」

世界の自動車産業のメインストリームを長らく突っ走って来た日本の自動車メーカー。しかし、日々スピードを増すEVシフトの波に飲まれて、その覇権を失ってしまうのか。

「日産に関しては、日本企業の中では今のところいいポジションにいるんじゃないでしょうか。リーフ自体はあまり成功はしていませんが、そこから学んだことは多いと思います。最近はテスラの勢いばかりが目立ちますが、たしか延べ台数ではテスラよりも日産のほうが売れてるんです。リーフも最近モデルチェンジをして、課題だったデザイン面も改善され魅力的になりました。それに今度の東京モーターショーでは、新たなEVを発表すると噂されていて、今後ラインナップをさらに充実させてくるんじゃないかと。そうなるとテスラに対しても、いい戦いができるんじゃないでしょうか」

実際、インタビュー当日の25日に開幕した東京モーターショーにおいて、日産は完全自動運転技術搭載と航続距離600km以上を誇るコンセプトカー「ニッサン IMx」を公開。着々とEVシフトに備えた手を打っている。

ニッサン IMx

トヨタがEVへと舵を切る時は来るのか?

いっぽう世界的なEVシフトの流れに対し、どうしても出遅れている感が否めないのがトヨタだ。今年の東京モーターショーにおいても、EVが幅を利かすなかで、トヨタは水素燃料で走るFCV(燃料電池車)も多く展示。エコカー分野において当面は、EVとFCVの両面作戦を展開する姿勢を見せている。

TOYOTA CONCEPT-愛i

「トヨタなどがEVシフトに乗り遅れつつあるのは、その前にハイブリッドの成功があって、それが逆に仇になっているというのはあります。確かに過去15年ぐらいは、プリウスを中心としたハイブリッド車が世界をリードし、省エネ車に関してはトヨタがナンバーワンだった。それだけに、あまり切羽詰まった空気がなかったんだと思います。そんな状況下で、トヨタは“ハイブリッドの先は水素”ということを会社として決めて、そこに散々投資をしていたんですが、そこへ想像以上に早くEVシフトの波がやって来た。これは別に経営判断が間違っていたというわけではなく、ただただタイミングが悪かったというしかないですね」

さらに中島さんはこう続ける。

「ハイブリッドとEVでは技術的に重なる部分もあるし、それに“EVはどこでも作れる”っていう想いもあったのかもしれません。ハイブリッドは結構難しい技術で、だからこそ世界と差をつけることができた。でも、その次を技術的に比較的簡単なEVにしてしまうと、中国などとの戦いになるから、トヨタとしてはより難しい技術が必要で中国企業と戦わなくて済む水素に舵を切ろうという判断があったんだと思います」

とはいえ、EVシフトがどんどん加速していくなかで、トヨタもいつかは“決断”を下さなければならないタイミングがやってくるのではないだろうか。

「今どれぐらい痛みを感じているかどうかですよね。排ガス不正問題で窮地に立たされ、EVで起死回生を狙うしかないフォルクスワーゲンなどと違って、先ほども話しましたが現状としてトヨタはそんなに困っているわけではないじゃないですか。“EVはやればできるけど、やる必要あるのか”ということで、社内でも反対意見は多いでしょうし、ディーラーや部品会社といった関連企業をどうするのかという問題もある。ただ、トヨタの現社長は創業家の出身で、高いカリスマ性を持ち合わせているから、トップが言えば動くんじゃないですか。やっぱりメッセージを出さないと、社内も社外も動いていかないですからね。もちろん高い技術は持っているわけですから、その点ではトヨタも、まだまだ挽回できる余地はあるんじゃないでしょうか」(つづく)

(10月25日、まぐまぐ本社にて。Photo: MAG2 NEWS)

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