創業以来税込み500円を貫いている(撮影・渡辺利博)

写真拡大 (全2枚)

 誰もが知るあの有名外食チェーンも、最初は街の片隅に生まれた小さな店から始まった。「1号店」──そこは創業者の汗と涙、熱い思いが詰まった聖地である。『天丼てんや』の原点を辿ってみた。

 てんや1号店はバブル景気まっただ中の1989年、東京駅の八重洲地下街にオープンした。

「100店構想の全国チェーンを見据え、その1号店にふさわしい場所を探していました。結果、東京一といわれる広い面積の地下街、東京の玄関口でもあるこの八重洲地下街で始めることになりました」(てんや広報)

 天丼といえば当時1000〜1500円ほどが相場。そんな時代に500円で食べられる。その驚きが、開業初日から人々に長い行列を作らせた。東京駅地下街だからこその需要もあった。

「テイクアウトの需要があると聞いていましたので、初日からお弁当50個の用意をしていましたが、それでも対応できなかったほどでした。当時は持ち帰れるお店が少なく、コンビニも今ほどなかった時代ですから貴重だったと思います」(同前)

 帰りの新幹線や、長距離バスの旅のお供に買っていく人も多かったのだろう。サラリーマン憩いの地としての顔もあった。

「ちょい飲みがブームになる前から、この店舗ではお酒を飲んでくださるお客様が多かったです。お昼休みは急いで食べて、夜は飲みながら食べるという利用方法は、この店舗ならではだと思います」(同前)

 2001年に当初の目標の100店舗を達成し、現在は海外も含めると200店舗を超えた。その1号店を示すプレートは誇らしげに飾られているのかと思いきや、目立たない足元にある。

「元々はお客様に向けたものではなく、我々の誇りとしてレジ裏にひっそりとありました。それに気づいたお客様の反応などもあり、改装のタイミングで現在の位置に設置しました」(同前)

 時代が変わり、値上げが相次ぐ中、創業当時からのメニュー、天丼はワンコインを守り続けている。

「正直厳しいですが、もともとワンコインで始まっていますので、可能な限り守り続けていきたいと思っています」(同前)

※週刊ポスト2017年11月3日号