ついにお披露目となったキヅール。華麗なサイドステップやゴールネットを揺らす姿は、 Jリーグの枠を超えて世間を賑わせたようだ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 10月15日、日曜日の午後になんの気もなしにスマホをいじっていた指がピタリと止まった。『Yahoo!』のリアルタイム検索ランキングの堂々1位に、「キヅール」の文字を見つけたからだ。
 
 以前、サッカーダイジェスト本誌のコラムでも触れたグルージャ盛岡のマスコット、キヅールがJ3どころかJリーグの枠を超えんばかりの勢いで話題になっていた。スマホを眺める私の顔が、にやけていたのは言うまでもない。
 
 折り鶴をモチーフとしたマスコットが立体化され、初お披露となったこの日。いわぎんスタジアムにはいつも以上に多くの観客が詰めかけていた。それだけ期待が大きかったということだろう。SNS上には降臨したキヅールの雄姿が、動画、静止画ともにたくさんアップされていた。
 
 折り鶴ゆえにその直線的なフォルムは美しく、にもかかわらず登場しただけでどよめきと笑いが巻き起こる上々のデビューとなったようだ。
 
 私は勝手に、キヅールのアジリティに不安を抱いていたのだが、それも杞憂に過ぎなかった。デモンストレーションのサッカーでは9人をドリブルでかわし、最後はGKをよく見て冷静にゴールネットを揺らしてみせる。くるくると回ったり、華麗にサイドステップを踏んだりとフットワークも軽快。てっきりポジションはGKだと思っていたが、実際は決定力抜群の大型CFだった。
 
 疲れるとピッチ上に置かれた座布団に座るという、新手のパフォーマンスも披露。その姿も趣がある。お披露目では頭部が外れるアクシデントもあったようだが、人間の形をしていると噂の内臓は、それだけでは露わにならない。これも、「子どもたちの夢を壊したくない」というキヅールの優しさに違いないのだ(関係者はひやひやだっただろうが)。
 
 羽の部分はハンググライダーの翼をイメージしたものなのか、かなり融通が利く安心設計。これなら狭い場所でも問題ない。今後はグッズ展開も楽しみだし、キヅール体操なんかも編み出して、子どもたちと一緒に盛り上がる姿も見てみたい。将来的には結婚し、キヅールファミリーが登場するかもしれない。
 
 こうなると、とにかく早く実物をこの目で見てみたい。ゆるくない、直線的なフォルムを拝みたい。Jリーグに、新たなスターが誕生した。
 
文:平畠啓史(芸人/サッカーコメンテーター)
 
◆プロフィール
ひらはた・けいじ/1968年8月14日生まれ、大阪府出身。高校時代にサッカーの全国大会に出場した経験を持つ。関西大卒業後、山口智充とお笑いコンビ『DonDokoDon』を結成し、ツッコミを担当。国内外を問わず1日5試合を見る時もあるなど、芸能界屈指のサッカー通として知られ、芸人ならではのマニアックな視点でサッカーの本質に爛張奪灰〞を入れる。現在、スポーツ番組MCやゲストコメンテーターとしても活躍している。
 
※『サッカーダイジェスト』11月9日号(10月26日発売)「平畠啓史のアディショナルタイムに独り言」より加筆修正