知ったかぶりしたい「乙類焼酎の世界」 原料・製法でこれだけ違う

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〜ビジネスマンのための一目おかれる酒知識 第11回焼酎編その2〜

 ビジネスマンであれば、酒好きでなくても接待や会食で酒に親しむ機会は多いです。そして多くの人は「それなりに酒に詳しい」と思っているはず。しかし、生半可な知識、思い込みや勘違いは危険。飲み会の席で得意げに披露した知識が間違っていたら、評価はガタ落ちです。酒をビジネスマンのたしなみとして正しく楽しむために「なんとなく知っているけどモヤモヤしていた」疑問を、世界中の酒を飲み歩いた「酔っぱライター」江口まゆみがわかりやすく解説します

◆乙類焼酎の蒸留方法は1つじゃない?

 焼酎には大きく分けて2種類あり、甲類は連続式蒸留機で蒸溜した焼酎で、乙類(本格焼酎ともいう)は単式蒸留機で蒸溜した焼酎です。そして歴史的には甲類より乙類のほうが古い蒸溜技術です。

 単式蒸留の技術が、いつ頃どのように日本に伝わったかははっきりわかっていません。「生命の水」と呼ばれた蒸留酒は、8世紀頃中東からヨーロッパへ伝わり、アジアでは13〜14世紀頃には製造されていたようです。

 日本への伝播については、東南アジアから琉球を経て薩摩から南九州に伝わったという「南回り説」と、中国から朝鮮を経由して壱岐から北九州に伝わったという「北回り説」があります。

 私は焼酎の源流といわれているタイやラオスで地酒の米焼酎を飲んできましたが、琉球泡盛と同じ全麹仕込みでしたし、ドラム缶を改造した蒸留機は、明治時代の「カブト釜」と呼ばれる蒸留機とそっくりでしたので、南回り説をとっています。それになにしろそのラオ・カーオという地酒は、どこか泡盛を思わせる味でしたから。

 乙類焼酎の醪(もろみ)は、一次仕込みと二次仕込みに分かれます。一次仕込みではまず麹をつくります。麦に麹菌を生やした麦麹もありますが、一般的には米麹なので、つくり方は日本酒と同じで、温かいところで48時間かけてつくります。ただ、日本酒は麹室(こうじむろ)でつくりますが、麹室がある焼酎蔵は少なく、三角棚、あるいは回転ドラムという製麹機でつくるのが一般的です。

 日本酒との違いはまだあります。麹菌が違うのです。日本酒は黄麹ですが、焼酎は白麹か黒麹を使います。もともと焼酎も黄麹を使っていましたが、暑さで醪が腐ることがよくありました。それが琉球から伝わった黒麹を使うようになると、とても容易で安全に焼酎ができることがわかったのです。

 それは醪にすると、黒麹がクエン酸をつくり出すからなのです。クエン酸には強い殺菌作用があるので、沖縄や九州など温かいところでの酒づくりに適していたというわけです。ですから焼酎の醪はとても酸っぱいです。でもこの酸っぱさは、蒸溜してしまえばお酒に含まれることはないので、焼酎の味には影響ありません。

 泡盛は今も黒麹だけでつくられていますが、現代の焼酎は一般的に白麹でつくられています。これは1920年代に河内源一郎という研究者が、黒麹菌の中から突然変異した白い麹を発見したことに端を発します。

 それまで、黒麹は胞子が蔵中に飛び散って、つくり手や蔵を汚してしまい、扱いづらさが難点でした。私も沖縄で泡盛づくりを手伝ったことがありますが、麹づくりの日は防塵マスクが与えられ、全身真っ黒になって作業したことを思い出します。

 白麹は黒麹の変異なので、クエン酸を出す性質は同じです。そこでまたたく間に白麹が焼酎づくりの主流になり、使ってみると、黒麹よりスッキリとしていて口当たりの良い焼酎になったのです。

 この麹に水と酵母を加えて発酵させるのが一次仕込みです。日本酒の酒母と同じようなものと考えて良いでしょう。