鮮魚列車に利用される2680系(画像:近鉄発表資料より)

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 近畿日本鉄道(近鉄)は25日、同社が運行する「鮮魚列車」の撮影会を11月19日に実施すると発表した。近鉄名古屋駅を9時に出発し、湯の山温泉などで車両撮影の時間をもうける。帰路は、観光列車「つどい」で名古屋駅まで戻る。

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 鮮魚列車は、伊勢志摩魚行商組合連合会のために1963年から運用されている団体専用列車で、現在では日本唯一の「行商専用列車」である。平日と土曜、三重・宇治山田駅を6時ごろに出発し、約2時間半かけて大阪・上本町駅まで走る。

 明治時代に開通した当初から、鉄道による鮮魚や魚介類の運搬は行われていた。魚運車と呼ばれる専用の貨物列車により運ばれたが、当時は冷蔵技術が未発達であったため、鮮度低下の問題もあって近距離しか対応できなかった。その後、1908年に日本初の冷蔵車「レ1形」が登場し、長距離輸送にも対応できる体制が整っていくことになる。

 道路網の拡充が進展していくにつれて、1970年代ごろから鉄道を利用した輸送の比重は下がりはじめ、トラック輸送へ急激に切り替わっていくこととなる。1987年に日本貨物鉄道(JR貨物)が国鉄分割民営化により誕生したときには、冷蔵車は国鉄から承継されず、そのまま廃止となった。それ以降は、水産会社等の私有冷蔵コンテナを貨物列車に積載するかたちでおこなわれている。

 一方、漁場から大消費地への鉄道を利用した輸送の形態は、水産会社が仕立てた貨物列車だけではなかった。漁場近くの市場で鮮魚を仕入れ、大消費地へ「行商」に行く形態も存在した。鮮魚そのものはトロ箱に納められ手荷物として運ばれるが、魚特有の匂いが他の乗客から敬遠されるため、1963年から近鉄は団体専用列車として鮮魚列車の運行を開始する。

 近鉄以外の、過去に存在した行商専用列車の有名な例としては、京成電鉄の行商専用車がある。この行商専用車は2013年で廃止となっている。関東大震災以降、物資が不足した都内に向けて地方から野菜などを運ぶ行商人が増えたことから運行を開始し、1982年までは専用列車、それ以降は列車の最後尾車両を専用車扱いにして運行された。

 自動車の普及や行商人の高齢化(後継者不足)により全国で廃止が相次ぎ、現存する最後の行商専用列車となった近鉄の鮮魚列車。19日の撮影会では、列車内で特製弁当を「車中食」できるサービスも行われる。現代ではまずお目にかかれない行商専用列車で、地域の足として貢献する意味合いを、考えてみるのもよいのではないだろうか。