(写真提供=SPORTS KOREA)

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今年もドラフト会議が終わった。

注目の清宮幸太郎(早稲田実)は7球団の競合の末、日本ハムが交渉権を獲得した。

清宮は、入学式から数日後の春季都大会3回戦の駒大高戦から、常に多くの観衆とメディアに囲まれながら試合をし、結果を出してきた。はっきり聞き取りやすい話し方で、ポイントを外さない受け答えなど、私も取材者の1人として、感心することが多かった。

それにしても、高校の野球部生活は短いなと感じる。プロの世界での活躍を期待したい。

韓国独自の制度“地域縁故指名”とは?

ドラフト会議は、プロもアマチュアも、その成り行きを固唾を呑んで見守るという意味では、日本の野球、最大のイベントと言っていい。

ドラフト会議の盛り上がりを支えているのは、プロ野球人気もさることながら、高校野球をはじめとするアマチュア野球への関心の高さだろう。これは、日本独特のものではないだろうか。

韓国にもドラフト会議はあるが、日本のように注目されることはない。

それ以外にも、制度面も含め、日本と異なる点も多い。

制度面で一番異なるのは、各球団のフランチャイズ地域の高校の選手(出身者を含む)を1人、優先的に指名できる、地域縁故指名の制度があることだ。

1982年に韓国にプロ野球が誕生したころ、高校野球の人気が非常に高かった。

プロ野球は、全斗煥政権下、政府主導で始まったが、行政当局は、この高校野球人気を徹底的に利用することを考えた。それが地域縁故指名のもともとのはじまりであった。

プロ野球が始まり、人気が高まるのと反比例して、高校野球人気はどんどん落ち込んでいった。
(参考記事:韓国映画『海峡を越えた野球少年』にみる、日韓高校野球の1982年

韓国の高校野球部は、学校からの支援がほとんどなく、部員の親が、監督の給料をも賄っている状態で、慢性的に資金難である。

そのためプロ野球の各球団は、地元の高校チームを支援している。現在の地域縁故制度は、その動機付けという側面がある。

その分、韓国の高校野球では、プロの意向を無視できない。

U18ワールドカップへの影響

この夏、U18ワールドカップで韓国は日本を破り準優勝した。

これは、優勝した2008年の大会以来の好成績である。

その要因となったのが、ドラフト会議の日程変更であった。

地域縁故指名は6月に行われたが、全体のドラフト会議は、例年なら8月半ばだが、今年はU18の大会が終わった直後の9月11日に行われた。

そのため選手たちは、少しでも上位で指名されるよう、プレーにも力が入った。

しかも、昨年までのようにドラフト会議の後だと、プロ球団の中には、指名した選手が故障するのを恐れて、選手起用にも干渉することがあったようだ。そうしたしがらみがないことも、好成績の要因とも言われている。

さらし者にされる選手たち

また、野球に限らず、バスケットボールなどでもそうだが、韓国のドラフト会議で、最も違和感があるのは、プロ志望届を出した人は、原則としてドラフト会議の会場に来ることになっていることだ。

今年のドラフトでも、多くの選手が、学校のユニホームを着て参席していた。そして、指名された選手は、指名球団のユニホームを着て、記念写真に応じる。

しかしドラフト指名は、あくまでも交渉権獲得であって、入団が決まったわけではない。

そのうえ、指名されなかった選手は、寂しくさらし者になる。

日本のプロ野球は、ごく限られた、特別な選手がいくところというイメージがある。

それに対して韓国では、高校のチーム数は74であるのに対し、各球団は、地域縁故指名の1人を加え、11人、10球団なので、計110人が指名される。

高校の野球部員は、プロに行くことを前提にしている。

そのうえメディアも、指名が予想される選手のいる学校の記者を派遣するなど、面倒なことはしない。そこで選手の方を呼んでいるわけだが、選手の側の立場の弱さを感じる。

なお、ドラフト指名の選手の数が多いのは、韓国には兵役制度があることも影響している。

プロの世界は入ってからの競争がさらに激しい。

上位、下位問わず、日韓それぞれのドラフト指名選手から、球界を盛り上げるスター選手が育ってほしいものだ。

(文=大島 裕史)