2017-2018シーズン展望(男子編) 

 グランプリシリーズ第1戦でいきなり4回転ルッツを成功させた羽生結弦と、初のオリンピック出場を目指す宇野昌磨の今季は? そのふたりを追うのは果たして誰か? 平昌オリンピックを見据えた戦いはこれから激しさを増していく。オリンピックに2大会連続出場(いずれも入賞)の鈴木明子さんが男子日本代表の戦いに迫る。


今季フリーは2年ぶりの『SEIMEI』で臨んでいる羽生結弦

――グランプリシリーズ第1戦ロシア大会では羽生結弦選手、ネイサン・チェン選手(アメリカ)がいきなり激突しました。羽生選手がフリーで最高得点をマークしたものの、ネイサン・チェン選手には、わずかに及ばず2位に終わりました。

鈴木明子さん(以下、鈴木) ソチオリンピックからの4年間、羽生選手がフィギュアスケート界を動かしてきました。若手は「羽生選手に勝つためにどうするか?」を徹底的に考えて、みんな高難度の技――4回転ジャンプを何種類、何本飛ぶかという戦いになっています。それぞれの選手が成功確率を見ながら、オリンピックでどれを何本入れるかをグランプリシリーズで探っているところです。

――ロシア大会では羽生選手が4回転ルッツを成功させました。

鈴木 羽生選手にはオリンピック2連覇の期待がかかっています。ソチで金メダルを獲りましたが、大きなミスがあったこともあって、本人は満足していないはず。パーフェクトな演技をしたうえで金メダルを獲って、真の王者になりたいと考えているのではないでしょうか。若手は羽生選手に勝つためにいろいろな技をぶつけてきますが、ブレることなく演技できれば、彼のためのオリンピックになると思います。

 フリーの『SEIMEI』は、ほかの選手がやろうと思ってもできないプログラムです。ショート、フリーの両方とも世界最高得点を出していて、いいイメージがあるはず。しかし、以前のプログラムを持ってきたということは、「過去を超えなきゃいけない」ということ。大変なことですが、それを自身に課しているんじゃないでしょうか。

――宇野昌磨選手は、10月28日から始まるグランプリシリーズ第2戦カナダ大会に出場します。

鈴木 宇野選手は、4回転ジャンプの種類を増やして、アグレッシブに挑戦し続けています。公式練習でうまくいかないときでも、本番には決めてくる。それができるのは、普段から追い込んだ練習をしているから。もちろん、ハマらないときもありますが、少々のことでは崩れない。ここ1年で滑りが非常によくなりました。シニアらしい、伸びるスケートをしています。それが彼の『トゥーランドット』というフリーのプログラムにマッチしています。後半に4回転フリップを入れてきますが、攻め続けるのが彼のスタイルであり、最大の長所だと思います。

――平昌オリンピックに出場する男子の日本代表枠は3つ。羽生選手と宇野選手が代表争いの中心になることは間違いありません。

鈴木 このふたりに共通しているのは、攻めたときの結果がいいこと。オリンピックであっても攻めていければいい。

 羽生選手は2回目の出場で、チャンピオンだから「守りたい」という意識がどこかにあるかもしれません。でも、連覇にとらわれすぎることなく、プレッシャーをどうやってはねのけるのか。彼を見ていると、自分の状況を楽しんでいるような感じがしますし、「自分を超えたい」という意欲が見えます。オリンピックという舞台で圧倒的に勝ちたいんじゃないでしょうか。「やっぱり羽生は強かった」と言われるように。

 一方の宇野選手にとっては初めてのオリンピックになりますが、それがどう影響するのか。宇野選手はもともと挑戦的なので、いい方向にいくような気がします。

――3人目の出場権を目指す選手のなかで、鈴木さんが注目するのは誰ですか?

鈴木 無良崇人選手は年齢的にもキャリアの集大成になるでしょう。私も同時期に滑っていた選手なので、頑張ってほしいという気持ちが強いですね。これまではシーズン後半に調子を落とすことが多くて、ここぞというときになかなか力を発揮できなかった。でも、これまでの経験や悔しい思いをオリンピックにぶつけてほしい。あれだけ爽快なトリプルアクセルを跳べる選手は多くありません。彼のジャンプを見ると、2002年ソルトレークシティオリンピックのときのアレクセイ・ヤグディン選手の演技を思い出します。この4年間、自分のスケートを見直してきたので、その努力が実を結べばいい。自分が挑戦者だという気持ちを今シーズン、最後まで貫いてほしいですね。

――無良選手に続くのは誰でしょう?

鈴木 田中刑事選手と友野一希選手でしょうね。田中選手は波の大きい選手ですが、プログラムが醸し出す雰囲気は独特で、味のある選手。友野選手はジュニアから上がってきて、非常に勢いがあります。いまの彼の年齢だからできるプログラムを用意していて、『ウエストサイド物語』はものすごくいい。ハツラツとしていて、彼らしさが出ています。怖さを知らないからこそ、台風の目になるんじゃないかと考えています。

――全日本選手権まで1カ月と少し。厳しい戦いが続きます。 

鈴木 男子シングルはソチからの4年で4回転の新時代に突入しました。平昌はそれぞれの選手がどんな構成で、どんな演技を見せてくれるのか、私も楽しみにしています。

■フィギュアスケート 記事一覧>>