『「ぜんそく」のことがよくわかる本』(講談社)

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「ぜんそく」といえば、子どもの病気と思っていませんか? 先日、フィギュアスケートの羽生結弦選手がぜんそく持ちであると発表し話題となりました。羽生選手は幼少期からでしたが、実は最近、成人になってからぜんそくを発症する人が増えています。それも中高年以降に多いそうです。

 ぜんそくの原因はアレルギーだけと思われがちです。ですが、アレルギー体質ではない人もぜんそくになりうるのです。では何がぜんそくを引き起こすのでしょうか。“大人”のぜんそくなんて他人事と思っているあなた、決して他人事ではないのです。ある日突然発作を起こして苦しむ前に、正しい知識を身につけておきましょう。

 ぜんそくの正しい知識を教えてくれるのは、東邦大学医療センター大橋病院教授・松瀬厚人先生。呼吸器内科が専門で日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2015」作成委員を務めた人物。この度、『「ぜんそく」のことがよくわかる本』(講談社)として、子どものぜんそくも大人のぜんそくも一般の人に分かりやすく、情報を網羅した書籍を監修されました。

■発作が出る前のケアが大切

 ぜんそくにも種類がありますが、ひと言でまとめるなら、「のどから肺にかけての気道の粘膜が炎症を起こしていること」。

 ときどき激しい発作を起こし、息苦しくなるのがぜんそくと思われがちです。しかし、ぜんそくの一番の問題点は、気道に炎症が“常に”あることです。炎症が続くと、粘膜は過敏になります。ちょっとした刺激に反応して発作が起こります。したがって、ぜんそくのケアは、「発作が起こっていない時期に」気道の粘膜の「炎症を抑えておく」ことが大切です。ぜんそくは、発作の起こっていないときでも粘膜が炎症を起こしている。このことを忘れてはいけません。

 ではぜんそくにはどのような種類があるのでしょうか。大きくはふたつに分けられます。ひとつは、「アトピー型ぜんそく」。ダニ・花粉・食品などアレルギーが原因で気道に炎症が起こるものです。子どものぜんそくのほとんどは、このタイプと言われています。

 もうひとつは「非アトピー型ぜんそく」。アレルゲンが特定できないタイプです。大人のぜんそくは、この非アトピー型が比較的多いです。

 その他にも、「アスピリンぜんそく」「運動誘発ぜんそく」「食物依存性ぜんそく」など多くはありませんが、このタイプを発症する人もいます。

 症状も「せき」が出るだけではありません。息苦しさや気道がゼイゼイ、ヒューヒューと鳴るもの。さらに、胸に痛みや違和感を持つ人もいます。これは、気道が狭くなると、周辺の神経が刺激されるためです。胸の痛みが強くなると、せきなど、ほかの症状に気づきにくくなることもあります。

■かぜやストレス、喫煙がきっかけに!

 大人に多いと言われる「非アトピー型ぜんそく」。これは意外な理由から発症することがあります。

 まず、かぜ。せきがいつまでも引かない場合、「せきぜんそく」と診断され、放置するとぜんそくに移行することもあります。そして喫煙。煙を吸い込むと気道の粘膜を刺激しぜんそくを引き起こします。ストレスもぜんそくを誘発します。体力を低下させたり、自律神経を乱し免疫力を低下させたりします。さらに冷たい空気など気候の変化。温度差が粘膜を刺激。また低気圧や悪天候も発作の引き金になるそうです。

 また、喫煙は一度起こったぜんそく発作を悪化させる要因にもなります。悪化させる要因は他にもあり、それは肥満。太っていると気道が圧迫されやすくなります。さらに体内にたまった大量の「脂肪細胞」が炎症を悪化させる物質をつくりだします。結果、発作を起こりやすくさせるのです。

■自覚がなくても炎症は悪化

 ぜんそくの治療は、病気の重症度によって変わってきます。一度決まった薬がずっと続くわけではありません。症状に合わせて調整します。そのためには、定期的な受診が不可欠です。

 残念なことに、ぜんそくは完治を目指すのではなく、「コントロール」するという、長い付き合いの病気です。発作が起こらないからといって、薬を飲むことを勝手に止めたり、病院へ通わなくなったりする人もいます。けれども、ぜんそく患者さんに自覚がなくとも、気道には炎症が常にあります。症状がなくとも炎症が進んでいくことがあり、軽症だったはずなのに、重度の発作が起こることも。

 軽症だからと放置することが何よりもよくありません。ぜんそくという病気と向き合うことが大切です。

 自身の一部であるぜんそくと付き合いながら日常生活を送る。どんな生活習慣が悪化をまねくか、またどんな日常的なケアをすれば良いのか。ぜんそくのことを知れば知るほど、情報が大切になってきます。本書には、患者さんが知っておいて損のない情報が一冊にまとめられています。子どものぜんそくが気になるご両親も、成人になって発症してお困りの人も、治ったと思っている人も正しい情報を手に入れ生き生きとした生活を送ってください。ぜんそくがあっても、楽しく日々を過ごすことは可能なのです。

文=武藤徉子