脱北者が中心のシンクタンク、北朝鮮戦略センター(NKSC)は19日、ワシントンDCにある米下院の議員会館で「北朝鮮の麻薬取引の実態」と題した調査報告書を発表した。調査報告書は、119人の脱北者に対するアンケート調査と12人の脱北者に対する深層インタビューで構成されている。

NKSCの朴イルファン調査チーム長は発表の席上、北朝鮮がかつて、外貨獲得のために国家ぐるみで薬物密輸を行ってきた点を強調した。

また今回の調査では、北朝鮮が薬物密輸のために工作船を用いていただけでなく、潜水艦が動員されたこともあったとの証言が得られたという。密輸先は中国と日本、ロシアはもちろん、インドネシアやマレーシアにまで及んでいた。

その後、中国と日本の強力な取締を受けて密輸ルートがつぶされると、生産された薬物は、北朝鮮の内部を破壊し始めた。犯罪組織が国内での密売に乗り出し、「氷毒(ピンドゥ)」と呼ばれる覚せい剤の乱用が広まったのだ。

今や空腹と不安を忘れるため薬物に依存する人々の数は膨大となり、薬物が北朝鮮国民の人権を破壊する主な原因となっていると報告書は述べている。

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朴氏はまた、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁により、貿易の道をほとんど絶たれた北朝鮮が、外貨稼ぎの手段として再び薬物密輸に乗り出す兆しが見られると指摘した。

これについては、デイリーNKの内部情報筋も同様の指摘を行っている。具体的には、北朝鮮を代表する研究機関である国家科学院の科学者たちが、覚せい剤の原料のひとつであるシアン化ベンジルを製造しているというのだ。おそらく科学院の幹部と人民保安省(警察)、国家保衛省(秘密警察)が黙認、または結託しているものと思われる。

平城(ピョンソン)の情報筋によると、科学院からはシアン化ベンジルはドラム缶1本(200キロ)が1万ドル(約110万円)で卸され、どこかへ運ばれて覚せい剤の製造に使われているという。

製造された覚せい剤の多くは中国に密輸されるものと思われるが、もし大量に流入するとなれば中国政府は黙っていないはずだ。

ブルッキングス研究所の2010年の報告書によると、吉林省朝鮮族自治州延吉市では、1995年には44人に過ぎなかった麻薬中毒者の数が、2010年には2100人に達するなど、北朝鮮産の覚せい剤により深刻な社会問題が発生している。

製造が増えれば、北朝鮮国内への流通量も増え、薬物汚染がさらに深刻になりかねない。