清宮幸太郎の交渉権は日本ハムが獲得した【写真:篠崎有理枝】

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注目の清宮は7球団競合、日本ハムが交渉権獲得

 2017年のプロ野球ドラフト会議が26日に都内のホテルで行わた。最大の注目だった高校通算111本塁打の早実高・清宮幸太郎内野手には7球団が競合した末に、日本ハムが交渉権を獲得。2球団競合となったJR東日本の田嶋大樹投手、広陵高・中村奨成捕手は、それぞれオリックス、広島が交渉権を獲得した。

 ソフトバンクが12球団で最少の5選手で、DeNAが最多となる9選手を指名し、各球団の指名が終了した。高校生、大学生、社会人、そして独立リーグに所属する計82選手が支配下選手としてのドラフト指名を受けた。抽選によって意中の選手の交渉権を確定できた球団、敗れてそれを逃した球団と、悲喜こもごもの結果となったが、ドラフト全体として理想的だった球団はどこになっただろうか。見渡すと、ロッテ、中日、日本ハム、オリックス、DeNAの5球団は上々のドラフトだったように見える。

 その中でも、満点ドラフトだったと言えるのはオリックスではないか。ドラフト1位で西武と重複指名となった田嶋大樹投手の交渉権を抽選の末に獲得。金子千尋や西勇輝、山岡泰輔と投手陣に右投手が多い中で、即戦力の社会人ナンバーワン左腕が指名出来たのは大きい。さらに2位でも、1位指名候補にも挙がっていた日立製作所の鈴木康平投手を指名。3位で社会人侍ジャパン代表の福田周平内野手、4位では将来が楽しみな星槎国際高校湘南の本田仁海投手を指名と、上位候補としても名前が挙がっていた投手を指名。即戦力投手、即戦力野手を揃って指名し、投手と内野手を3人ずつ、捕手、外野手を1人ずつというバランスも悪くない。

 中日は中村を広島との競合で逃したが、結果的に見れば、上々だったのではないか。外れ1位でヤマハの最速157キロ右腕、鈴木博志投手を指名。2位では1位指名の声もあった青藍泰斗高の石川翔投手を指名できた。上位の顔ぶれは決して悪くない。3位で滝川二高の高松渡内野手、4位で甲子園優勝投手の花咲徳栄高・清水達也投手らを指名。鈴木以外は高校生と、即戦力とはいかないながらも、数年後の将来性を期待させる6人の指名となっている。

 日本ハムはなんといっても、清宮の交渉権確定が大きい。大谷翔平、中田翔といった主軸打者の去就が不透明となっている中で、注目度も素質も抜群のスラッガーがチームに加われば、大きな意味を持つ。2位でも最速154キロを誇る即戦力のNTT東日本の西村天裕投手を指名した。3位からは柳ヶ浦高の田中瑛斗投手ら高校生を3人、そして7位では東大の宮台康平投手を指名。7人中5人が投手だった。

12球団で唯一重複指名とならなかったDeNA

 ロッテも抽選で清宮を逃したものの、外れ1位で清宮と双璧を為す高校生スラッガーの履正社・安田尚憲内野手を指名。阪神、ソフトバンクとの3球団競合となったが、クジ引きで交渉権を確定させた。2位で、内外野複数のポジションをこなせる好打者であるトヨタ自動車・藤岡裕大内野手を指名。今季貧打にあえいだ中で、上位は評価の高い野手を補充。3位以下で社会人投手3人も加え、2位から6位まで5人が社会人と即戦力重視といった狙いが見えた。

 DeNAは12球団で唯一、重複指名とならずに、立命館大の左腕・東克樹投手の単独指名に成功。今永昇太、濱口遥大に続き3年連続の左腕指名となり、ルーキーイヤーから活躍した2人に続く存在として期待がかかる。2位では、スピードが武器の日本生命の神里和毅外野手を指名して、即戦力野手も加えた。投手5人、捕手と外野手1人ずつ、内野手を2人の全9選手。高校生2人、大学生2人、社会人3人、独立リーグ2人と満遍なく指名した。

 セ・リーグ2連覇中の広島は将来性を見込んだ6人の指名となった。公言していた通り、地元・広陵高の中村奨成捕手を指名。中日と競合となったが、緒方孝市監督が当たりクジを引き当て、球団としては最高の1位指名となったはずだ。2位では高校生投手を指名。熊本工高の山口翔投手は最速152キロを誇る大型右腕だ。最速151キロを誇り、米国人の父を持つ日本文理大のケムナ・ブラッド誠投手を3位で、最速152キロ右腕の中部学院大・平岡敬人投手を6位で指名した。高校生が4人、大学生が2人。投手4人、捕手1人、外野手1人となった。

 ヤクルトは清宮を抽選で外し、九州学院高の村上宗隆捕手を外れ1位で指名。巨人、楽天と3球団競合となったが、抽選で小川淳司新監督がクジを引き当てた。三菱重工広島の大下佑馬投手、岡山商科大の蔵本治孝投手を2、3位で指名したが、印象度としては、そこまでではないか。田嶋を抽選で外した西武は侍ジャパン大学代表の明治大・斎藤大将投手を1位指名。2位で地元・埼玉の花咲徳栄高・西川愛也外野手を指名した。6人のうち、投手4人の指名で、野手に比べて層が薄い投手陣に厚みを持たせる指名。田嶋を逃したのは痛かったが、バランスとしてはまずまずといったところか。

2度以上抽選を外した巨人、阪神、楽天、ソフトバンクは…

 一方、2度抽選を外したのは巨人、阪神、楽天の3球団。

 巨人は清宮、村上を外し、外れ外れ1位で中央大の鍬原拓也投手を指名。驚きだったのは、2位で大阪ガスの岸田行倫、3位でNTT西日本の大城卓三と、社会人捕手を連続で指名した点だ。さらに育成選手でも2人の捕手を指名している。小林誠司が正捕手となり、宇佐見真吾が台頭している中で、確かにこの2人に続く存在はいないが、育成を含めて4人もの捕手が必要だったのか。投手は1位の鍬原1人だけ。捕手2人、内野手4人、外野手1人と偏ったドラフトになった感は否めない。

 清宮、村上を立て続けに外した楽天は岡山商科大の近藤弘樹投手を1位で、慶應大のスラッガー岩見雅紀外野手を2位で指名。4位までを大学生が占めた。長距離砲が外国人頼みだったところがあり、日本人の大砲候補である岩見を2位で取れたのは好材料だ。地元・仙台育英高の西巻賢二内野手を6位で指名したが、高校生は1人だけだった。

 阪神は清宮、安田を外し、外れ外れ1位で仙台大の馬場皐輔投手を指名。馬場もソフトバンクと重複指名となったが、三度目の正直で金本監督が抽選で交渉権を引き当てた。2位でも高橋遥人投手と、上位で大学生の投手を指名した。今季は投手力に頼りがちなところがあり、野手では大学ナンバーワン遊撃手の呼び声もある立教大の熊谷敬宥内野手を3位で指名。投手4人、野手2人の指名となった。

 12球団で唯一、3度抽選を外したのがパ・リーグ王者のソフトバンク。清宮、安田、馬場と3連続で重複指名に。いずれも最後の残りクジだったため、工藤監督の元に当たりクジは巡ってこなかった。結果、外れ外れ外れ1位で鶴岡東高の吉住晴斗投手を指名。その時点では、他にも1位候補に挙がっていた選手がまだ指名されておらず、予想外のサプライズ指名だったといえるだろう。2位でサブマリンの専修大・高橋礼投手、3位で大砲候補の横浜高・増田珠外野手、4位に国士館大の椎野新投手、5位で秀岳館高の田浦文丸投手と投手4人の指名に。補強ポイントに挙がるのは松田、内川の後継者候補となりうる野手だったが、清宮、安田を逃したのが痛かった。近年は将来性重視の高校生が多かったが、今年は大学生を2人指名した。

 ドラフトの本当の成果が現れるのは、5年、10年先のこと。この中から球界を代表するような選手が何人出てくるだろうか。1人でも多く成功を掴み、野球界を盛り上げていってくれることを願いたい。(Full-Count編集部)