プロ野球のクライマックスシリーズが終わりました。毎年のことではありますが、クライマックスシリーズでシーズン2位以下のチームが勝ち上がると、必ず「クライマックスシリーズ不要論」が持ち上がります。曰く、シーズンの価値を無為にするものであると。

これはまったく的を射ない意見です。

一年間の戦いは、すでにシーズンの順位として評価されています。クライマックスシリーズ・日本シリーズと、シーズンは別物です。広島東洋カープはクライマックスシリーズに敗れても、セ・リーグの優勝チームであることは変わらないのです。別物であるならば、現状のように盛り上がっている試合を止める理由など何もないはずです。一年間の戦いは無為になっていたりしないのですから。

「一年間頑張ったのに気分が悪い…」「スッキリしない…」とお思いであれば、それはそう思う人の認識の問題です。ハッキリ言えば、「本当は自分自身でもクライマックスシリーズの負けは、負けである」と心の底で認めているからモヤモヤするのです。まったく意味のない試合だと思っているなら、無視すればいいだけ。気になるのは「負けた」という負い目があるからです。

そもそも、一年間程度の戦いで決めた順位にどれほどの意味があるでしょうか。オリンピックのチャンピオンは、4年間をかけて自分を高め、世界ランキングを上昇させ、出場権を獲り、ようやく決着戦に臨みます。4年単位で戦っているのです。そして、世間は多くの場合、途中の4年間には見向きもしません。最後の決着戦で勝ったものだけをメダリストとして迎えます。それが普通の受け止め方です。

4年間の途中でどれほど強かろうが、最後の決着戦に負ければ敗者となる。それが多くのスポーツの現実なのです。自分の胸に手を当ててみてください。世界選手権に勝った選手でも、オリンピックで金メダルを獲っていなければ「王者」と認めていないのではないですか。「真の王者」と認めていないのではないですか。ならば、クライマックスシリーズで負けたほうは、やっぱり「負け」なんじゃないでしょうか。

真の勝者は短期決戦で勝った者、もっと言えば「この日この時この試合」に勝った者だけです。その日に駒を進めるものを厳しく選抜するために、4年なり1年なりをかけているのです。言うなれば「予選」です。そして、「この日この時この試合」に最高のチカラを発揮するのが勝者の条件です。1年間の戦いで順位が上だろうが、それだけでは真の勝者とは到底言えないのです。「この日この時この試合」に勝ち切るチカラがなかったのですから。

広島東洋カープは敗者です。

阪神タイガースは敗者です。

埼玉西武ライオンズは敗者です。

東北楽天ゴールデンイーグルスは敗者です。

そのことから目を逸らしてクライマックスシリーズ制度に難癖をつけるのは不見識です。ホーム開催であったり、1勝のアドバンテージであったり、有利な条件で始まった「この日この時この試合」に勝てないのは「弱い」のです。取り返しがつかない試合でチカラを発揮できないのは「弱い」のです。そういう試合でミスをしたり、不運に見舞われるのは「弱い」のです。

むしろ、クライマックスシリーズ導入以前よりも、現在のプロ野球はより正しい姿になったと言えるでしょう。1年間かけて地力を見定める期間と、「この日この時この試合」に勝ち切るチカラを見定める期間の、両方を備えるようになったのですから。

制度のせいではなく、広島は弱いから負けたのです。

(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)