行政やNPOとの提携は「地域への通行手形」になる

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これまで、「買い物弱者問題」と単独で向き合ってきたココネット。子どもの貧困の解決を目指す「こども宅食」で、行政やNPOと連携を試みた狙いとは。

ココネットは、地域の小売店と連携した「ご用聞き」による買い物代行「喜くばり本舗」や、買い物代行を通して、高齢者の見守りを行う「おやここネット」といったサービスを展開する企業。現在セイノーホールディングス・オープンイノベーション推進室室長を務める河合秀治が、2011年に設立した社内ベンチャーだ。

特徴は、「ハーティスト」と呼ばれる女性を中心として配送スタッフが業務を行うこと。これまで本業を通して、「買い物弱者」という社会問題に独自に取り組んできたココネットは、なぜNPOや行政が連携する「こども宅食」に参加したのか? その理由を同社取締役社長の河合は、企業による寄付やCSRではなく、「地域での新たなビジネスモデル」構築への狙いがあったと話す。

─こども宅食に、どのような経緯で参加されたのでしょうか。
 
こども宅食の企業連携担当であるRCFより、物流担当としての協力依頼を、セイノーホールディングスにいただきました。物流と一言で言ってもグループ内の企業でも得意とする分野が異なります。特に、こども宅食は、お届け先の方々とのコミュニケーションが重要な取り組み。「ここに受領印をお願いします」という一言の会話だけで終わり、というわけにはいきません。

そこでココネットが既に事業を開始している文京区のみが対象で、お届けするのも食品だけに限定されていたことから、西濃運輸の幹線物流とココネットを組み合わせて協力できないかという提案を私からしたのが発端です。

─依頼が来た際、なぜこども宅食への事業としての参加に関心をいだいたのでしょうか。

現在のココネットの事業では、配送車両が稼働していない時間帯があります。こども宅食を請け負うことで、「稼働率」を高められると考えました。同時に、ココネットは石巻市から鹿児島市まで全国展開、セイノーホールディングスは47都道府県に事業展開しています。文京区でのこども宅食がうまくいけば、全国に持続的に展開可能なモデルに発展できるという可能性に魅力を感じました。

─パートナー企業として、これまでにどんな貢献を行ったのでしょうか。

我々が参加する際には、それぞれの領域のプロフェッショナルによってコンソーシアム団体が既に立ち上がっており、物流以外の仕組みは完璧といっていいほど構築されていたので、物流設計のみ、プロとしてご協力しました。各メーカーから提供された食品を集めてストックするところまでの大きな物流を西濃運輸、食品を折りたたみコンテナに詰め替えて各家庭にお届けしコミュニケーションを図る、いわゆる「ラストワンマイル」の部分をココネットが担当するという設計です。

また、これまでの買い物代行事業で、お客様の冷蔵庫の中まで見せていただいてきた我々は、対面コミュニケーションに関する知見を活かして、「配送はダンボールではなく、折りたたみ式コンテナ」といった専門的な提案で、貢献できたと自負しています。

─企業経営において、行政やNPOが参加するコレクティブ・インパクト型事業に参加する理由は何でしょうか。

事業を新しい地域で展開する時に、その地域にスムーズに入り込めるからです。ココネットが買い物代行と見守り事業を始めたのは福岡からでしたが、認知されるまで3年もの歳月がかかりました。見ず知らずの企業が「お買い物を代行します」と言っても、誰も信用してくれません。地域のスーパーとの連携などからようやく周知され、信頼されるに至ったという経緯がありました。

今回のように行政やNPOも参加しているコレクティブ・インパクト事業への参加は、いってみれば「地域への通行手形」をいただくようなもの。それは企業にとっては大きなメリットですし、物流のような、行政やNPOからすれば彼らではできないことを我々はすぐに実現できます。こうしたそれぞれの持つ強みの掛け算によって、地域に社会的なインパクトを生み出せると考えています。

─今後の構想を教えてください。
 
ココネットで配達しているスタッフも子育て中の母親は非常に多く、こども宅食のモデルが全国に広がった際に、配達先のお母さん方からも働いていただける方が出てくれば、とも願っています。この事業のために我々は運送費を大幅にディスカウントしていません。CSRではなくあくまでも事業との位置づけです。

買い物代行事業もそうですが、こうした社会性のあるサービスは利用者にとって、いわばライフライン。企業の事情で勝手に止めるわけにはいけません。だからこそ、美談の裏には綿密なビジネス設計が必要なのです。

ココネットによるこども宅食事業が、民間企業が異なるセクターの団体と連携し、経済合理性を担保しながら、社会のためになるイノベーションを起こせるという象徴的なモデルになるべく邁進していきます。

河合秀治◎ココネット社長。専修大学経済学部卒業。西濃運輸、セイノーホールディングスの現場を経験し現職に就任。セイノーHDオープンイノベーション推進室室長を兼務、各種プロジェクトを仕掛ける。