「中国ファースト」警戒のテック企業 米中関係は冷え込み予測

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10月18日に開催の中国共産党の党大会で、習近平総書記は今後数十年にわたる中国の野心的プランを掲げ、イノベーションや軍事力の面で世界をリードしていく意気込みを語った。

しかし、習が掲げるプランは海外企業らに危機感を抱かせる内容でもあった。習が打ち出した方針は保護主義的な側面も強く、中国市場に期待を注ぐ海外企業を失望させる内容もある。アナリストからは今後の5年間で、米中の関係は冷え込むとの見方もあがった。

習は3時間半に及ぶ演説で自らが率いた開放政策を自賛し、今後も海外企業に市場を開き、参入障壁を引き下げていくとした。しかし、ここで気になるのは中国が自国のテクノロジーやイノベーションの育成に大きな重点を置く、中国ファーストの姿勢を強めている点だ。

アナリストらは2025年にかけて中国が航空機製造やバイオテクノロジー、半導体や新エネ車の分野で国産化を推進し、この分野の海外企業らは困難に直面すると見ている。

「中国は科学や技術領域での覇権を高めようとしている。海外企業への依存度を引き下げ、海外のテクノロジー企業に頼る姿勢を過去のものにしようとしている。今回の習の演説には繰り返しこのテーマが登場した」と米国外交問題評議会のデジタル政策担当のAdam Segalは述べた。

国内メーカーの保護姿勢は特に新エネルギー車の分野で顕著だ。全米商工会議所は、新エネ車を中国で販売する海外企業はモーター等の主要部品に、中国製の部品の採用を求められるケースが増えてくることを懸念している。

医薬品業界でも類似した状況は見られる。製薬分野では現地工場を立ち上げ、中国側と情報共有を積極的に行う企業らが、優先的に中国で許認可を得られるとのレポートをデロイトと米国通商代表部が発表している。

「最大の影響を被るのは中国側が重要とみなす、決済や金融のインフラ構築に関わる業界だ」と語るのはニューヨークのコンサルタント企業Eurasia GroupのMichael Hirsonだ。

中国政府はシスコやマイクロソフト等の企業に、国家の安全上の見地からソフトウェアのソースコードの開示を求めているが、企業らは開示情報が中国企業の手にわたり、競合製品が生み出されてしまう懸念を強めている。

トランプ政権は半導体企業買収を阻止

「中国進出を狙う海外企業には、より大きな困難が待ち構えている。国内企業を保護しようという政策の下で、これは当然の流れだ」とHirsonは述べた。

一方で、中国側の要求に沿う形でビジネスモデルを修正する企業も現れた。クアルコムは2015年、独禁法違反で9億7500万ドル(約1100億円)の罰金を中国政府に支払った後、地方政府と合同でジョイントベンチャーを立ち上げようとしている。

クアルコムのDerek Aberleは国営メディアのChina Dailyの取材に、「今回のジョイントベンチャーで我が社のテクノロジーを、中国市場向けにカスタマイズした製品を生産する」と述べた。GMの中国プレジデントも「中国市場に最適なテクノロジーを投入していく。技術移転に関する懸念は抱いていない」と述べていた。

しかし、中国は海外の技術を自国の市場に適用するだけでなく、その技術で国際競争力を高め、やがて第三国に向けてより安価なサービスを提供し始めるとの懸念がある。

中国の鉄道会社は日本の川崎重工から提供された技術をもとに、2009年に高速鉄道を作りあげたが、その後中国は「独自技術」としてこのテクノロジーを第三国に売り込もうとしている。

米国政府は、ロボット技術や半導体分野でも中国に対する警戒心を高めている。米国通商代表部のRobert Lighthizerは今年8月、知的財産権に関する調査団を立ち上げ、両国の取引で米国が被害を被っていないかの調査に乗り出した。

米国政府は海外からの対米投資を監査する団体(CFIUS)を立ち上げ、ここでもその主眼は中国企業に向けられている。中国の金融企業アントフィナンシャルが、米国の送金サービスのマネーグラムを買収した際にも、安全保障上のリスクが指摘された。

今年9月、米トランプ政権は中国ファンドによる半導体メーカー、ラティスセミコンダクターの買収を阻止した。これはラティス社のチップが軍事面での通信に用いられており、国防上の懸念があると判断されたためだ。

「米国政府は中国への技術移転に対する監視の目を一層強めている。その一方で、習近平が国内企業の保護と、技術力の向上による経済発展を打ち出したことで、今後の5年で米中の対立はますます深まるだろう」とEurasia GroupのHirsonは述べた。