日本の将来を左右する、重要な争点が目白押しだった今回の総選挙。与党の勝利でその公約が進められたら、私たちの暮らしはいったいどうなるのか、識者に聞いた。
 
「改憲については、憲法9条ばかりがクローズアップされていますが、いちばん怖いのは、自民党が公約に記していた“緊急事態対応(条項)”です。たとえば、安倍首相が『いまは北朝鮮有事だ』と言って緊急事態宣言を発令すれば、憲法にいくら崇高な理念が謳われていても、すべて吹っ飛ばされてしまいます」
 
そう警鐘を鳴らすのは、「明日の自由を守る若手弁護士の会」の武井由起子さんだ。自民党の改憲草案には、「外部からの武力攻撃や、内乱、あるいは東日本大震災のような大規模な自然災害が起こったときなどに、内閣総理大臣が、閣議にかけて“緊急事態の宣言”を発することができる」と記されている。
 
「実は、ドイツの民主的なワイマール憲法下でナチスの独裁を生んだのも、“緊急事態条項”が原因でした。緊急事態条項が発令されると、三権分立がなし崩しになり、“立法・行政・司法”のすべての決定権を内閣が掌握します」(武井さん)
 
自民党は、「“緊急事態条項”はほかの国にもある」と主張しているが、諸外国と比べて、日本の縛りはユルユルだ。
 
「たしかにフランスの憲法にも“緊急事態条項”はありますが、フランスは大統領制なので、大統領が発議しても、議会の長である首相がノーと言えば通りません。日本は発議するのも、決定する議会の長も首相なので、安倍さんが暴走しても誰も止められない。それに、フランスは、発議を12日以上延長するには、議会の承認を得なければなりませんが、日本は100日たつまで必要がありません」(武井さん)
 
来年行われる見通しの改憲発議。国会での議論を注視する必要がある。
 
■幼児教育無償化で保育園のブラック化が
 
少子化対策として教育無償化を公約に掲げて、衆議院解散総選挙に踏み切った安倍首相。自民党は公約で「3〜5歳までのすべての子どもたちの幼稚園・保育園の費用無償化」「0〜2歳児についても、所得の低い世帯に対して無償化する」と掲げている。だが、その効果について疑問視する声がある。
 
「乳幼児の教育費はすでに、生活保護世帯に対しては無償化されており、それ以外でも、所得に応じて負担が軽減されるようになっています。公約で掲げている“低所得者”というのが、具体的に年収がどれくらいの世帯なのか、はっきりしていません」
 
そう語るのは、保育研究所所長の村山祐一さん。
 
「待機児童がいちばん多いのが、安倍首相が無償化すると言っている0〜2歳児。しかし無償化だけでは待機児童の解消にはつながりません。安心して子どもを預けるには、保育の質を保つことも必要。そのために保育士の待遇改善も必要ですが、財源は確保されていません。保育士の給与が上がらないので、保育士になる人が減っています。人材を確保しないまま無償化したら、保育士に負担がかかりすぎて、保育園での子どもの事故が増えかねません」(村上さん)
 
少子化対策のためには、より幅の広い対策が必要になりそうだ。