イラスト/藤井昌子

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前回は、ご近所トラブル発生のメカニズムと、車の停め方などで不満が出やすい駐車場のトラブル事例について取り上げました。今回はその続編として、駐輪場でのトラブルに注目し、実際に起こった事例を参考にしながら、未然に防ぐ方法を考えていきましょう。【連載】賃貸管理のプロが賃貸住宅の困りごとを解決
賃貸仲介・管理の現場に20年以上携わっているプロが、賃貸物件に住む人から相談の多い事例と解決方法をご紹介する連載です

駐輪場トラブルの原因は「暗黙ルール」を知らないから!?

私たち管理会社には多種多様なクレームが寄せられますが、同じ建物にお住まいの方に対してのクレームで一番多いのは「騒音」、それに次いで多いのが「共用部の使用方法」についてだと思います。そして、前回取り上げた駐車場と同様に、駐輪場も他人の使い方に不満を感じやすい共用部となっています。

駐輪場が広々としていれば問題は起こりにくいのですが、地域によっては車の利用者が減り、駐車場が空きだらけ、その代わり駐輪場がギュウギュウという賃貸物件も増えています。駐輪場が狭く、自転車の出し入れがしにくい賃貸物件では、利用者間のトラブルが起こりがちです。

そして駐輪場は、契約書などの明文化されたルールがない場合が多く、そのことがトラブルを発生させる一番の原因だと考えられます。

賃貸物件では、「みんなで場所を譲り合って駐輪する」という暗黙のルールで運用されている駐輪場が意外と多いもの。そういう状況では、もしも自分の自転車が出し入れしにくい状態であれば、他の自転車を横にずらすのは自然な行為。しかし、実はこれが災いの元となる場合があるのです。

場所指定のない駐輪場は、特に要注意!

前回、ご近所トラブルの発生のタイミングは、「誰か新しい人が引越して来たとき」が一番多いというお話をしましたが、これは駐輪場を巡るトラブルも同じです。

賃貸マンションは毎日ほぼ同じメンバーで生活していますので、「どの自転車がいつもどのあたりに駐輪されているか」というのはおよそ決まっている場合が多いでしょう。場合によっては「どの自転車が何号室の住人のものか」ということまで、お互いに何となく知っていることも。しかし、新しい入居者が引越してきたら、この暗黙のルールが一時的に乱れることになります。

各自の駐輪場所の指定がない場合は、誰がどこにとめても問題はないはず。しかしいつも自分が自転車をとめている場所にほかの自転車があったら、「自分の場所を誰かに取られた」と感じてしまうのが人間の性というものでしょう。管理会社に連絡したとしても「場所は決まっていないので譲り合って駐輪してください」と言われてしまいますので、自分でその邪魔な自転車を別の場所に移動してしまう方が出てくるのです。

もしそういう状況に遭遇したら「誰かが不満をもって移動したのかもしれないな」と、次から別の場所に駐輪してくださればトラブルには発展しないもの。しかし、「場所は決まっていないのだからここに駐輪して何が悪い」と、どかされた相手の自転車をさらにどかして場所を取り返す方もいます。そんなときは、深刻なトラブルに発展してしまうこともあります。

私の過去の経験では、駐輪場所を巡る毎日の攻防に業を煮やした一方が相手の自転車を押し倒し、もう一方がそれに怒って相手の自転車を敷地外の空き地に捨ててしまったケースがありました。そうなってから私たちに相談が来ましたが、既に深刻なトラブルに発展しており、最終的には捨てられたほうの方が身の危険を感じて退去されてしまいました。

「ルール違反ではないから」という正論だけではうまく行かないのが、ご近所づきあいの難しいところ。知らぬ間に悪意をもたれるのは可能な限り避けたいですから、引越ししたばかりの時期や、自転車を新たに購入される場合は、駐輪場の混雑具合やほかの方々の駐輪場の使用状況を観察されるといいでしょう。勇気があれば、駐輪場の利用者を見かけたときに声をかけてみると、実際の状況が分かることもありますよ。

サイズの大きな自転車もトラブルになりがち

実は、駐輪場所に指定がある場合でも、トラブルは起こります。上下段に分かれている駐輪ラックがある物件だと、下段に大きい自転車があると上段にとめにくくなる場合があります。例えばお子さんが生まれてチャイルドシート付きの自転車に変更したとたんに、「上段に出し入れしにくくなった」と苦情が来ることがあります。特に出勤前は急いでいる方が多いので、ある朝急に自転車が出しにくくなり、イライラしてしまうのでしょう。

自転車のサイズが起因の苦情が来た場合は、私たち管理会社は大家さんと相談しながら、空いている区画があれば移動していただいたり、上段の方と下段の方を入れ替えたりなどの解決方法を探ります。ただ、ほかに空きがない場合だと、なかなか解決できないことももちろんあります。

とはいえ、場所を取る自転車を新たにとめたい場合、まわりに迷惑がかかりそうだと感じたら、まずは私たち管理会社に事前に相談していただけると助かります。解決方法がすぐに見つからない場合でも、迷惑がかかりそうな相手に一言断っておくだけで、感じ方も違ってくるものです。

その他、苦情になりやすい事例として、「私物の放置」があります。駐輪場に空気入れやさび落としスプレー、雑巾などを置く方がいらっしゃいますが、他の利用者の邪魔になりますし、見苦しいので嫌がられます。たとえ自分の借りている区画内だとしても、私物は置かずにお部屋に持ち帰ってください。

また、パンクしたりさび付いたりして不要になった自転車を長期間放置しているのも、苦情になる場合があります。毎日使用する人の邪魔になりますし、近くの自転車を出し入れする際に洋服に汚れやさびが付きそうで迷惑だと思われているかもしれません。不要になった自転車をどうしたらよいかお困りの方が多いと感じますが、粗大ごみとして数百円で処分できる自治体がほとんど。お住まいの地域の清掃事務所のホームページで調べてみましょう。

【画像1】駐輪場でのトラブル(イラスト/藤井昌子)

みんなで使うことが前提の駐輪場では、ルールでは縛れない感情のもつれが発端となってトラブルが発生しがち。私たち管理会社が賃貸物件に行くのは、自転車の数が減っている昼間が多く、駐輪場でのトラブルに気付きにくいという側面もあります。

賃貸物件のことを一番知っているのは、管理会社でも大家さんでもなく、そこに住んでいるみなさんです。もしもトラブルの種に気付いた場合には、深刻な状況になる前に、管理会社や大家さんに相談してみてくださいね。

谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。●「賃貸管理のプロに聞く」記事一覧
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(谷 尚子(ハウスメイトパートナーズ))