FBI実践"人の心のウラを見抜く"スゴ技21

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人の心が読めたら、どんなに楽だろう。実は人が無意識に見せる反応やしぐさの意味を知れば、特別な能力がなくても、人の心を読み取ることができるという。どんな点にポイントがあるのか。元FBI特別捜査官で、現在はウエスタンイリノイ大学教授を務めるジャック・シェーファー氏に聞いた――。

■経験と科学によって裏づけられたテクニック

人の心を読み取り、相手を意のままに動かすなんて、おとぎ話だと思うかもしれないが、けっしてそんなことはない。かつてFBIで捜査と行動分析を担当し、犯人を自白させたりスパイを寝返らせたりすることに幾度も成功したジャック・シェーファー博士によれば、経験と科学によって裏づけられたテクニックが存在するのだという。

そこで今回、シェーファー博士に、ビジネスシーンで応用できるテクニックを教えてもらった。今回紹介したものは、いずれも人が無意識に見せる反応やしぐさの意味を知り、それらを見逃さないようにすることに尽きる。特別な能力がなくても、誰にでも習得できそうだ。

 

【上司・部下編1】あなたは本当に好かれているか?

▼OK!

1. あなたのしぐさを真似る
たとえば、あなたが腕を組んで立っているとしよう。一緒にいる部下が同じ位置で腕を組んでいたら、その部下はあなたに好感を持っている。人間には好きな相手の動作を真似るという傾向があり、これをミラーリングという。逆に、あなたのしぐさに同調しない部下とのあいだには、信頼関係ができていないことを意味する。
2. 眉がさっと上下する
近づくと眉が瞬間的に上下する部下は、あなたに好感を抱いている。これは反射的に出現する6分の1秒ほどの動きで、本人がほぼ無意識のうちに送っている友情のシグナル。「私はあなたのことを脅威と見なしていません」というメッセージなのだ。互いに好感を抱いている人どうしが近づくと、双方にこの現象が起きる。
3. 頭を少し傾けている
あなたを慕っているならば、部下はあなたと話すときに自然と頭を左右どちらかに傾けている。首の両側には脳に酸素を送る頸動脈があり、損傷すれば数分で死に至る。つまり、頸動脈を見せるということは、あなたに脅威を感じていない証拠。逆に脅威を感じていれば、頸動脈を守ろうとする意識が働いて肩をすくめる。
4. 本物の笑顔を見せる
実は嫌っているのに、それを悟られないようにするために、作り笑いを浮かべることはよくある。その笑顔が本物かどうかを見極めることができれば、自分が部下に慕われているかどうかを判断できる。本物の笑顔の場合、両側の頬が上がる動きに合わせて両側の口角も上がり、目じりにしわが寄る。

▼NG!

5. 作り笑いをする
作り笑いの場合は、右利きの人なら顔の右半分が左半分よりも大きく動き、片側に偏った笑顔になる(左利きはその逆)。あなたが近づいたときに眉を動かさない、笑顔を見せない、頭を傾けない部下とのあいだには、互いに信頼し共感し合える関係がまだ築けていないことがうかがえる。ちなみにその部下は、あなたが目の前にいるときにこうした「敵意シグナル」を発していることを、自分では気づいていない。一方で、あなたと一緒にいてミラーリングをしない部下は、あなたを嫌っている可能性がある。ふたりの関係において、なにか問題があるのではないだろうか? それを確かめるためには、「リード&フォロー」というテクニックを使うとよい。まず、上司であるあなたが先に、部下のしぐさを真似る。数分後、今度はあなたが体の向きを変える。このときに部下があなたと同じように体の向きを変えたのであれば、ふたりのあいだに信頼関係が生まれたことになる。

■「肩のすくめ方が左右非対称」なら嘘つき

「仕事ができる人ほど、人の心をすばやく読み取ることを体得していて、しかも彼らのほとんどが、それを無意識のうちに学んでいます」とシェーファー博士は言う。自身は研究論文を読み漁って練習を繰り返し、FBIで何千もの聞き取り調査を担当する中で、このテクニックを編み出した。それを一般向けにわかりやすく分類したものを学べば、たとえ社会経験が少ない人でも短期間に人の心を見抜くことができるようになるというから朗報だ。

たとえば、あなたには部下がいて、ある重要なプロジェクトが進行中だとしよう。その進捗について部下から「問題はありません。すべて順調です」と報告されると、上司としては、本当に大丈夫なのだろうかとつい疑念を抱いてしまう。

「しかし、それが真実かどうかを直接的に問いただしてしまうと、ふたりのあいだの信頼関係が傷つき、最悪の場合は仕事に支障をきたします。ところが、相手を怖がらせないテクニックを使えば、部下に恥ずかしい思いをさせずにプロジェクトの進捗を確かめることができるのです」とシェーファー博士は言う。これを可能にする基本的なテクニックは10と11なのだが、ほかにもある。

【上司・部下編2】「大丈夫です」は本当に大丈夫か?

▼OK!

6. 手のひらが上向きのジェスチャー
手のひらが上を向いているジェスチャーは、その人のオープンな気持ちを物語っている。誠実な人であれば、真実を口にしているときにこのジェスチャーを見せることが多い。胸に手をあてて話すという動作が加われば、部下の話の真実度はアップする。なお、このジェスチャーは、両肩をすくめる動作と連動している場合が多い。
7. 話の中身と同じ向きに首を振る
首を振る向きは発言の方向性と一致していなければならない。たとえば「はい、あの店に行きました」と言いながら首を横に振っていたら、それは否定を暗示する動作なので嘘をついている可能性が高い。その店に行ったことが事実であれば、首を縦に振るはずなのだ。部下の言葉と動作が一致しないときには、話の中身を疑おう。

▼NG!

8. 頭を後ろへ引く
不誠実な人は、自分に不安を与える人から距離を置こうとする傾向があるので、質問に対して正直に答えられないときは1、2秒間頭を後ろへ引くことが多い。これは嘘をつく人が最初に示す無意識の反応で、数秒後にはもとの姿勢に戻る。この反応が見られたら、部下は事実を報告していない可能性がある。
9. 肩のすくめ方が左右非対称
両肩が均等に少し上がる動作は、その人が真実を語っていることを示す信頼度の高いシグナルだ。肩をすくめる動作は特殊内臓求心性線維(SVA)という脳神経が部分的に支配しているため、自分で動きをコントロールするのは難しい。嘘つきは誠実を装ってわざとこのしぐさをするので、大抵は左右の肩が非対称になる。
10. 「ええ、あの〜」で答え始める
「はい」か「いいえ」で答えられる直接的な問いかけに対して、部下が「ええ、あの〜」とか「まあ、その〜」などの言葉で話し始めたら、その部下はほんとうのことを言わない可能性が高い。あなたが「はい」という答えを期待していることがわかっているので、正直に「いいえ」と言えず、こうした言葉で応じてしまうのだ。
11. 「現在」についての明言を避ける
直接的な問いかけに対して部下が「はい」か「いいえ」で応じなかったら、少し表現を変えて同じ質問を繰り返してみよう。「はい」または「いいえ」を回避した人が、さらに現在への言及を避けた場合、その報告には本人の希望的観測や言い訳が混入しているので、100%事実ではないという可能性がかなり高くなる。

■しぐさを観察して確率を高める

「誠実な人は単純に事実を伝えますが、嘘つきはその餌食となる人に対して、自分の話を信じ込ませようとします。そこで、あなたはこうした人間の性質を利用するわけです。それには疑問を投げかければいい」

部下が「万事順調です」と言ってきたら、少し眉をひそめて「ほう」「ふーん」「へぇ」とだけ言ってみよう。そうすることで、さりげなく猜疑心を提示することになる。

これに対して部下があれこれと新たな情報を追加したり、ありとあらゆる言い訳を口にしたりしたら、その部下は自分の報告内容を信じるようにあなたを説得しようとしているのだ。真実をありのままに伝える部下であれば、そもそもあなたが「プロジェクトは予定どおりに進んでいるか?」と聞いたとき、万が一うまくいっていないとしても即座に真実を答えるだろう。

「こうしたシグナルは、相手が確実に嘘をついていることを示す証拠ではありません。あくまでも、これらが見られれば嘘をついている確率が上がる、ということです」とシェーファー博士は強調する。「人の心を完璧に読み取ることなど誰にもできません。ただし、しぐさという言葉を伴わないシグナルを観察することによって、限りなくそれに近いことができるようになる。たとえば、14〜16を見てもわかるように唇の動きは言葉以上に多くを語るんです」。

【取引先編】あなたの提案に乗る気はあるか?

▼OK!

12. オープンな姿勢
取引先が【上司・部下編(1)】で紹介した(1)(2)(3)(4)のしぐさに加えて、オープンな姿勢(腕も足も組んでいない、身振り手振りを多用して話す、手のひらが上向き、「なるほど」「続けてください」「ふむふむ」などあなたを促したり勇気づけたりする言葉を使う)になっていれば、あなたの提案についてかなり興味を持っている証拠だ。
13. 前のめりに頷く
前のめりになって頷くことも、あなたの提案に乗り気であることを示すシグナルだ。人は好感を持ったものに対しては前のめりになり、苦手なものからは遠ざかる。理解力の高い人や物事を受容する能力が高い人も、前のめりになる。契約などが合意に至る場合、大抵は「私たち」のように相手を含む包括的な人称が使われる。

▼NG!

14. 唇をすぼめている
唇にしわが寄ったり唇がすぼんだりしたら、その取引先は難色を示している。これらのシグナルがよりはっきりと出ていれば、その人の「不賛成」の度合いはより高い。セールストーク中は相手の唇を見るように心がけよう。これらのシグナルが表れたら、その直前にあなたが話していた内容について、相手は不満を抱いているのだ。
15. 唇を噛む
上唇か下唇を軽く噛んでいる、または歯で引っ張るようにしているときは、言いたいことがあるのに躊躇している心理を表しているので、取引先の唇を見るときはこのシグナルも見逃さないようにしたい。相手の気分を害したくない、自分が悪者になりたくないという気持ちが働いて、人はとかく言葉をのみ込んでしまいがちだ。
16. 唇をきゅっと結んでいる
上下の唇が固く閉じられ、場合によっては唇が隠れるほどきつく結ばれているときも、言いたいことを我慢している。しかも、唇を噛むときよりもさらに否定的な言葉を抑え込んでいる。このサインを見つけたら、「お考えがあるようですが、今日は話していただけないのでしょうか」と語りかけると、相手から本音を引き出せる。
17. 否定を暗示する頭の動き
人は話を聞きながら無意識のうちに、自分の思考に合わせて首を横に振ることが多い。「それには同意できない」というシグナルだ。セールストークのあいだ、あなたは努めて頭を縦に振るようにするといい。相手がこの影響を受けやすい状況をつくるのだ。そうすれば、あなたの提案に好意的な反応を示すように、相手を誘導できる。

■自分自身に焦点を当てないようにする

これらのテクニックはすぐに現場で使えるが、「行動分析はあっという間にさびつくスキル」ということなので、つねに技を磨く努力が欠かせない。

さて、相手の心を読む技とともに、シェーファー博士は、人に好かれるテクニックも指南している。ビジネスパーソンがこれを学ぶことには、どのようなメリットがあるのだろうか。

「相手に好意を持ってもらうことが、仕事を完遂させるためのカギです。世界のどこでも、いかなる年代のどのような地位の人に対しても、100%通用する『黄金の法則』があります。それは相手をいい気分にさせること。そうすれば相手はあなたを好きになり、助けてくれます」

それほど確実な「黄金の法則」だが、世界は自分を中心に回っていると考える人が多いため、この法則の威力に気づいて実践している人は実は少ないのだとシェーファー博士は指摘する。

「自分自身に焦点を当てないようにすること。それが成功の秘訣ですよ」。

▼まだある! 自分を好きになってもらうためのサイン

18. アイコンタクト
相手に「好意シグナル」を送るには、ほんの一瞬目を合わせるようにするとよい。1秒以上見つめると「敵意シグナル」と受け止められ、逆効果になってしまう可能性がある。相手に警戒されないようにするためには、微笑みながらアイコンタクトを送るようにしたい。あなたがアイコンタクトをしたあとで、その相手が一瞬目をそらし、目線をいったん下に落としてからアイコンタクトを返してきたら、自信を持って近づいても大丈夫だ。
19. 体の近さ
信頼関係を築きたいと思う相手に対しては、つい体を近づけてしまうものだ。反対に、苦手な人とのあいだには距離を置こうとする。話している人たちの距離を見ていると、そのふたりがこれから親しくなっていくのか、あるいはすでに親密な関係にあるのかなどが判断できる。あなたが身を乗り出しても相手が上半身を反らさなければ、拒絶されていない証拠だ。逆に、その人の足先があなたとは別の方向に向いていたら要注意だ。
20. 大げさな身振り
身振りを大げさにして表情豊かなジェスチャーを見せると、言葉によるコミュニケーションの力が強まるので、相手から好意を持ってもらうことができる。親しくなりたいと思う相手に対しては、深く頷いたり微笑んだりして、熱心に話を聞こう。身を乗り出したり、頭をわずかに傾けたりするのも効果的。ただし、あまりにも頻繁に頷くと急かしていると誤解されてしまうので、「よい聞き手」として認識してもらえるように、適度にやろう。
21. ときおりミスをする
わざと文字を読み間違える、字を誤るなど、自分の信用が傷つかない程度の小さなミスを、ときおりあえて犯してみよう。そして、間違いを指摘されたらちょっとバツが悪そうな顔をして、正してくれた人に対してきちんと指摘してくれたことに礼を言うのだ。すると、その人はとてもいい気分になるし、あなたに対して親しみを抱くようになるだろう。ときおり些細なミスをするような人には人間味が感じられ、相手はより好感を持つようにもなる。

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ジャック・シェーファー
元FBI特別捜査官。現在は心理学者、ウエスタンイリノイ大学教授、諜報コンサルタント。FBIではスパイ防止活動とテロ対策の捜査官を15年、行動分析プログラムの行動分析官を7年務めた。著書に『元FBI捜査官が教える「心を支配する」方法』。

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(ジャーナリスト 原賀 真紀子)