親が亡くなったら、健康保険や年金などいろいろな手続きが必要。しっかりやればおカネが数十万円戻ってきたり、もらえることも(写真:PHOTO NAOKI / PIXTA)

親だけに限りませんが人が亡くなると、遺された親族はさまざまな手続きをする必要があります。戸籍、健康保険、年金、預金……など、すべきことはたくさんあり、実際のところ、本当に大変です。でも、手続きをすることで「戻ってくるおカネ」「もらえるおカネ」もあることを知っていますか?

払いすぎた保険料が戻ってくる


私は昨年、実の母を亡くしました。母の介護施設を決めるところから旅立ちまでについては、前回の「親の介護を決める際のチェックポイント」でも触れたとおりです。

亡くなった後、お葬式を行うのも大仕事でしたが、そのあとにも、さまざまな手続きが待っていました。今回は、もともと社会保険労務士として得ていた知識に加え実体験も踏まえ「戻ってくるおカネ」「もらえるおカネ」についてお話しします。

まず健康保険から戻ってくる「過誤納金還付」です。

75歳未満の人は国民健康保険、75歳以上の人は後期高齢者医療制度に加入しており、被保険者が亡くなると14日以内に市区町村の担当窓口に「資格喪失届」を提出します(会社員の場合は勤務先に連絡)。

この手続きによって健康保険の加入者ではなくなりますが、国民健康保険、後期高齢者医療制度とも、先々の保険料を前納するしくみになっており、先々の分も保険料を払い込んでいます。そのため、死亡したあとの保険料を払いすぎたことになり、これが戻ってくるのです。

資格喪失届を提出すると、後日、還付のお知らせが届きますから、振込先などを記入して返送すれば、手続きは完了です。少ない額とはいえ、私も母の後期高齢者医療保険の過誤納金を2460円、介護保険料を213円、受け取りました。納めている保険料が多いほど、また払いすぎになった日数が長いほど、戻ってくる額が多くなります。

国民健康保険、後期高齢者医療制度からは「もらえるおカネ」もあります。「葬祭費、埋葬費」です。

葬儀費用の一部として支給されるもので、金額は市区町村によって異なりますが、少なくても1万円程度、多いところでは7万円程度となっています。なかなか大きい金額ですよね。

葬儀費用の領収書の写しや会葬礼状など、葬儀を行ったことを証明できる書類が必要で、市区町村などに申請をしないともらえません。忘れないよう、くれぐれもご注意を。亡くなってから2年以内なら申請できますから、確実に手続きしてください。

医療費も、手続きで一部が戻るかもしれない

亡くなる前は多額の医療費がかかることもありますが、金額によっては、支払った医療費が戻ってくる可能性があります。

国民健康保険や後期高齢者医療制度では1カ月に自己負担する医療費の上限を設けており、それを超える分が健康保険などから給付される「高額療養費」という制度があります。

たとえば70歳以上・世帯年収370万円未満の人は外来では1万4000円、入院では5万7600円が1カ月の負担の上限です。入院時の食事代や差額ベッド代は別途自己負担になりますが、入院して、手術を受けて100万円かかっても、1カ月(毎月1日から月末までの1カ月)の上限は5万7600円で済むのです。

医療機関に「限度額認定証」を提出しておけば医療機関の窓口で請求されるのは上限額までですが、提出しなかった場合、また外来の場合はいったん請求された額を支払い、上限を超えた分があとから戻ってくるしくみです。もし、死亡した人が65歳以上であれば、計算して自動的に還付してくれるため、待っていれば大丈夫です。

とはいえ、手続きをすることにより、もっとたくさんの額が戻ってくるかもしれません。

高額療養費には、生計を同一にする家族の医療費も合算できる「世帯合算」や、同世帯で1年に4回以上、自己負担額が一定額を超えると4回目から自己負担額の上限が軽減される「多数回該当」という制度があります。これらに該当すれば、戻ってくる金額はもっと大きくなりますが、「世帯合算」や「多数回該当」は、自ら申請する必要があり、申請しないと受けられないのです。知らないと大損です。

ウチは「世帯合算」や「多数回該当」に該当するかも……と思ったら、市区町村の窓口(亡くなった人が会社員なら勤務先)に問い合わせてみましょう。診察を受けた月の翌月の初日から2年以内は申請することができます。医療費がどの程度かかったのかを把握するためにも、かかった医療費を記録したり、領収書を保管しておいたりするといいですね。


介護保険サービス利用料も、多く払った分が戻ってくる

介護保険を利用するとサービスに応じて料金がかかりますが、そのサービス利用料にも上限が設けられており、上限額を超えた分は払い戻されることを知っていますか?

これは「高額介護サービス費」という制度で、上限額は同じ世帯の人の収入によって異なります。

たとえば夫婦2人暮らしで2人とも住民税非課税なら、1カ月の上限は2万4600円。どちらか1人が利用していても、2人とも利用していても、合計で2万4600円を超えた分は戻ってきます。1カ月の上限を超えているかどうかは市区町村が確認しており、払い戻しが受けられる場合は通知がきます。

個人事業主や、収入が一定の額を超えていた人が亡くなった場合は、家族が故人に代わって確定申告(準確定申告)を行う必要があります。

収入が公的年金だけでも一定の額を超えると所得税がかかりますが、年金から源泉控除されているので、確定申告して納税する義務はありません。

だからといって、申告しないのでは損になる可能性があります。介護保険料や後期高齢者医療保険料などの社会保険料は所得から引くことができますし、みなさんも年末調整で経験していると思いますが、生命保険料、地震保険料なども所得から控除でき、所得が減る分、税金が安くなります。準確定申告をして各種の控除を受けることで、源泉徴収された税金が戻ってくる、というわけです。

戻ってくるおカネは、まだまだあります。1年間(1月〜年末)の医療費が年間10万円または所得の5%以上かかった場合は「医療費控除」が受けられ、自己負担した医療費から10万円または所得の5%を引いた額を所得から差し引くことができます。たとえば社会保険料の控除と医療費控除で所得が30万円減った場合、税率20%の人なら単純計算で30万円×20%=6万円が戻ってきます。大きいですよね。

「未払い分の年金」は遺族が受け取れる

最後は年金のお話です。亡くなった人の年金についても、厚生年金では亡くなってから10日以内、国民年金では12日以内に「年金受給権者死亡届」を提出する必要があります。

亡くなれば年金の支給は止まりますが、実はここでも、もらえるおカネがあります。年金は偶数月に過去2カ月の分が振り込まれるしくみで、たとえば8月に支給されるのは6月、7月の分。9月に亡くなった場合、8月分と9月分の一部は受給する権利があり、それが遺族に支給されるのです。これを「未支給年金給付」といいます。年金の平均受給額は20万円程度。1カ月半分なら30万円です。

支給の対象となるのは、故人と生計を一にしていた遺族で、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、3親等以内の親族の順です。生計を一にしていた、というのは同居に限らず、定期的に仕送りをしていた、してもらっていた、という場合でも大丈夫です。「未支給年金給付」も、「未支給年金・保険給付」という手続きが必要ですから、もれなく手続きをして、しっかり受け取ってください。使い道はもちろんいろいろですが、受け取ったおカネで、故人を偲ぶために使ったりすればきっと喜んでくれるはずです。