就活生は働きやすい職場環境を実現する企業にいきたいと考えている (写真:saki / PIXTA)

「本当に願うのは1つだけ。入社した会社で長く続けられるような企業づくりに期待したいです。やはり、新卒で就職した企業に、一生お世話になりたいんです」――。

これは「働き方改革に期待すること」というアンケートに書かれた男子学生のコメントです。安倍晋三政権が掲げる「一億総活躍社会」の実現に向け、長時間労働や正規非正規の待遇差、単線型キャリアパスなどの是正といった「働き方改革」には、学生も高い関心を寄せています。

学生の場合、冒頭の男子学生のように自分の一生を託す企業を選択する意識が強いことから、注目が集まるのは必然かもしれません。「働き方改革」に関して、学生はどのように受け止め、今後の社会の変化を期待しているのでしょうか。今回は学生視点で捉えた「働き方改革」について考察してみたいと思います。

AIに関心、無くなる職業にも現実味?


まず学生がどの程度「働き方改革」に興味を持っているのでしょうか? 今年7月に実施した「2018年卒マイナビ学生就職モニター調査」の中で、「今年のニュースワードのうち、自身の就職活動に影響のあったもの」を選んでもらいました。その結果、最も多く挙げられたのは、「人工知能・AI」、続いて「IoT」でした。

「将来存続する職業、無くなる職業」などと同時期にメディアで報道されたことや、身近なテクノロジーに未来を感じている影響なのか、この2つのワードは男子学生を中心に票を集めました。

「働き方改革」は30.4%と、全体の3番目に挙げられており、改めて安定した関心の高さが示されています。文理・男女別で比較すると、文系学生において選択した人の割合は、男女とも3割を超えています。


学生は「働き方改革」に対して、どんなイメージを抱いているのでしょうか?「『働き方改革』が実行された結果、どのようなことが起こると思うか」というアンケートで、最も多かったのは、「残業時間が減る/無くなる」46.2%で、半数近い学生が、働き方改革は長時間労働の是正を目指していることを理解しています。

次に「ワークライフバランスが整う」30.7%、「女性管理職が増える」18.5%と続きます。この2つの項目と、「女性の就業率が上がる」を男女別で比較すると、女子の割合が高く、長く働き続けたいという、昨今の女子学生の思いが数字となって表れています。

「正規非正規の格差」については、「非正規雇用が減る(派遣社員や契約社員など)」が8.0%、「同一労働同一賃金になる」が3.3%と、低い数値にとどまっています。「単線型の日本のキャリアパス」を変えていくことについては、「転職する人が増える」9.3%や、「副業を行う人が増える」6.6%、「テレワークで働く人が増える」5.7%と、こちらも少数派で、まだ明確なイメージはできていないようです。

「残業を減らしてほしい」が多数


就労経験のない学生の場合、身近に非正規問題や単線型キャリアを考える機会が少ないため、このような結果になるのは致し方ないかもしれません。

一方で、「『働き方改革』では何も起こらないと思う」とする回答も17.7%と、期待を持てない学生も存在しています。

受け止め方に各種ある「働き方改革」ですが、自由記述で、もう少し詳しくみていきましょう。

全815件のコメントを見ていくと、最も期待しているのはやはり「残業時間(もしくは労働時間)の削減」で、全回答の2割強を占めています。その中でも、単純に「残業を無くして(減らして)ほしい」という意見と、「サービス残業を減らしてほしい」という意見がみられました。

今回の調査では、学生が回答した「敬遠するブラック企業のイメージ」(複数回答可)の上位に、「残業代が支払われない(上限がある)」(65.3%)、「休日が取れない(休日が少ない)」(64.8%)、「労働時間が長い(残業が多い)」(61.9%)の3項目が挙がりました。それとあわせると、単に残業をなくせば良いと考えるだけではなく、賃金を支払ってくれれば良い、と考える学生も少なからずいることが分かります。

女子学生からはワークライフバランスや女性活躍推進に関する意見が多く寄せられています。それ以外には「給与の底上げ(現在低給与な業界や基本給について)」や、「成果に基づく公正な判断(年功序列制度の廃止)」などの内容が挙がっていました。

■学生が働き方改革に期待すること(期待する人の意見)
サービス残業がなくなるように、社会全体で策を打ってほしい(文系男子)
休暇が正当に取得できること 労働法にのっとった勤務ができること(文系男子)
・働きすぎよりは、いかに仕事を早く進められるかが重要。働く時間は問題ではない。働くことが好きな人もいるから(文系男子)
長時間労働を美徳とする風潮を根絶してほしい(理系男子)
・裁量労働制を取っているのにもかかわらず、契約した時間を超えた分の残業代が支払われていないような違法企業が駆逐されること(理系男子)
・ただ残業を減らす方向にするのではなく、残業したくない人はしなくても済むように、残業したい人は残業できるようにと、どちらにとっても働きやすい雰囲気を作ってほしいです(理系男子)
・労働時間を短縮するだけでなく、限られた時間の中で仕事を終わらせることが出来るための環境の整備(文系女子)
・残業時間や長く働いた人が評価されるのではなく、少ない時間でも成果を出した人が評価され、評価を出していれば休暇を多くとっても構わない、という働き方が主流になること(理系女子)
結婚出産を経た女性が男性と同じように昇進したりするのは難しいかもしれないが、そんな女性でも責任ある仕事を任せてもらえるような体制や周囲の人の理解が育まれてほしい(理系女子)
・ひとりひとりに合ったフレキシブルな働き方ができ、周りがそれに対して苦言を呈さない環境ができてほしい。制度だけできてもそれを実行できない雰囲気が残っているのは意味がない(理系女子)

自分たちに何も恩恵はないとの声も

一方、「特に期待していない」とする回答も、全体の1割を占めています。以下に具体的なコメントをいくつかピックアップしてみました。

もっと辛らつな意見もありましたが、要は「今の大人が決めていることだから、自分たちの世代には何も恩恵が無いだろう」という意見のようです。日本の将来を担う学生が未来に希望を持てるようにするため、表面的ではなく、抜本的な改革が望まれていることが分かります。

■学生が働き方改革に期待すること(期待しない人の意見)
・長時間労働が横行している現状で、個々の働き方について考慮している余裕があるのか疑わしい(文系男子)
・今行われているような改革では何も変わらないと思うので、もしやるならもっと抜本的な改革が必要だと思う(文系男子)
・「働き方改革」ではなく「働かせ方改革」なのだから、その面を正直に言えば納得できる。企業に都合のいいことだけやるのではなく、労働者の立場に立った考え方をしてほしい(理系男子)
・結局は個人の問題だと思うので、それほど期待をしていない(理系女子)
・期待していない。これまでとほぼ変わらない。変える気のない世代の方が役員になっていると考える(理系女子)

いずれにせよ、働き方改革が就活に少なからず、影響を与えているのは間違いありません。では実際、学生が企業の取り組みを見極めるためには、どうすれば良いでしょうか。

企業の働き方改革の取り組みを包括的に発信している情報サイトや冊子はありません。マイナビでも、企業の特色欄で検索が可能になっていたり、初任給表記の統一化など、さまざまな取り組みを行っていますが、働き方改革にフォーカスした項目があるわけではありません。

そこでいくつか参考になる方法をご紹介します。

IRや企業表彰を見るほか、直接社員に聞く

(1)IR情報や『会社四季報』を参考にする。

まずは企業の数字を比較することです。そのためには就職情報サイトや企業の公開情報、『会社四季報』などで企業の平均勤続年数や離職率といった数字を比較するようにしましょう。『就職四季報』では全ての企業ではないものの、月の残業時間平均が明記されている企業もあります。

また企業によっては、「働き方改革宣言」をし、具体的な残業時間の削減目標や、有給休暇の促進策を公表している会社もあります。そうした文面から、働き方に対する姿勢を読み取ることができます。

(2)官公庁や社団法人の認定制度や表彰制度を受賞している企業を調べる

官公庁や社団法人が優良企業の取り組みを一般に周知する目的で実施している企業表彰制度や認定制度があります。「くるみんマーク」をはじめ、女性活躍推進企業データベース、グッドキャリア企業アワード、イクメン企業アワード、均等・両立推進企業表彰などがあります。これらの企業は一定の基準をクリアした企業や特に優秀と認められる企業が選ばれています。ひとつの指標としては参考になると思います。

(3)働く社員から直接話を聞く

企業にとってマイナスな情報は、企業のHPやインターネットなどに出回りにくいため、直接社員から聞くのが一番です。新卒の場合、その機会は十二分にありますので、OB・OG訪問や会社説明会で積極的に情報収集をしましょう。

反対に企業の採用担当者側は、学生の要求が今後高まることを前提に、準備をしておく必要があるでしょう。本来は開示したくない情報でも、学生に対する伝え方次第では、印象が大きく変わります。たとえば「平均残業時間は○○だが、繁忙期に集中しており、繁忙期以外では△時間になる」など、数字を使ってどう説明するかを検討するべきでしょう。

今回は学生が「働き方改革」をどのように捉え、期待しているかをまとめました。新卒学生はまだ就労経験が無く、「働き方改革」に関する理解も乏しいのが現状です。ただし、冒頭の男子学生のコメントのように、懸命に自分の将来を託せる企業との出会いを求めて就活に挑んでいます。

この学生たちが社会に旅立つにあたり、できる限り将来に向けて羽ばたける環境を整備していくことこそが、本当に重要な改革になるのではないでしょうか。