ソフトバンク・千賀滉大【写真:藤浦一都】

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パ・リーグ各球団のドラフト戦略は成功しているのか

 10月26日、プロ野球の一大イベントであるドラフト会議が行われる。最大の注目は、競合が確実と言われている早実高の清宮幸太郎内野手が、一体どこの球団に行くのか。また、履正社の安田尚憲内野手や広陵高・中村奨成捕手、青藍泰斗高の石川翔投手、立命館大の東克樹投手、JR東日本の田嶋大樹投手、ヤマハの鈴木博志投手と評価の高かった選手たちが、それぞれどこの球団に指名されるのか、注目ポイントは尽きない。

 例年、数多くの選手がドラフトで指名され、プロの門を叩くのだが、果たして、各球団の過去のドラフト指名選手で、どれだけチームの主力、1軍クラスとして活躍しているだろうか。2006年以降の各球団ドラフト指名選手で1軍での実績がある選手を挙げ、各球団のドラフト戦略が成功しているかどうかを分析し、また、各球団での“当たり年”を探ってみたい。

 まずはパ・リーグ編だ。

◯ソフトバンク
2006 高1福田秀平 大希 大隣憲司 3高谷裕亮 4森福允彦(巨人) 5長谷川勇也
2007 高1岩嵜翔 2中村晃
2008 2立岡宗一郎(巨人) 5摂津正
2009 1今宮健太
2010 2柳田悠岐 育4千賀滉大 育6甲斐拓也
2011 1武田翔太 5嘉弥真新也 育2亀澤恭平(中日)
2012 1東浜巨 3高田知季 6山中浩史(ヤクルト) 育3飯田優也
2013 2森唯斗 4上林誠知 育1石川柊太

 コンスタントに1軍の主力級が出てきているソフトバンク。2010年はパ・リーグ屈指の打者となる柳田が指名され、育成ドラフトでは侍ジャパンメンバーでWBCにも出場した千賀滉大が指名されている。今季、急成長を遂げた捕手の甲斐も同期入団。将来的に投打のチームの中核となる選手が加わった2010年は、結果的には当たり年だったのではないだろうか。2014年以降は将来性重視で高校生中心の指名となっており、3年後、5年後に成果が出れば、成功といえるだろう。

◯西武
2006 高1木村文紀 希 岸孝之(楽天)
2007 4武隈祥太
2008 2野上亮磨 3浅村栄斗
2009 1菊池雄星 6岡本洋介
2010 1大石達也 2牧田和久 3秋山翔吾
2011 1十亀剣
2012 1増田達至 3金子侑司 4高橋朋己 育1水口大地
2013 1森友哉 2山川穂高 6岡田雅利
2014 1高橋光成 2佐野泰雄 3外崎修汰
2015 1多和田真三郎 3野田昇吾
2016 3源田壮亮 5平井克典

 2008年以降は浅村、菊池、秋山と、毎年のようにチームの中心になる選手がドラフトで加わり、2012年以降のドラフト指名選手は年に2人、3人が1軍の戦力となっている。コンスタントにチームの強化を進められている印象だ。森、山川と打線の核を担いつつある選手2人を1、2位で獲得した2013年は、なかなかの当たり年だったのではないか。2016年にはドラフト3位で新人王最有力候補の源田を指名しており、ここ数年は上々のドラフトを送っている。

楽天、オリックスもコンスタントにルーキーを“補強”

◯楽天
2006 高1田中将大(ヤンキース) 大社3嶋基宏
2007 大社4聖澤諒
2008 6辛島航
2009 1戸村健次
2010 1塩見貴洋 2美馬学
2011 2釜田佳直 3三好匠 4岡島豪郎 6島内宏明
2012 2則本昂大
2013 1松井裕樹
2014 1安楽智大
2015 1オコエ瑠偉 3茂木栄五郎 6足立祐一
2016 1藤平尚真 3田中和基 5森原康平 9高梨雄平

 2006年は田中、嶋とのちにチームの核となる2人が加わっている。2011年の指名選手は実に4人もの選手が1軍の戦力となり、現在はチームの中心となっている。その後は則本、松井裕といったチームに不可欠な存在を加えたが、それ以外の選手の台頭が少ない。直近2年は茂木、足立、高梨らが戦力に。2016年の指名選手は4選手がルーキーイヤーの今季、1軍の力となり、現時点では成功といえるのではないか。やはり2011年と2016年は当たり年か。

◯オリックス
2006 大社3大引啓次(ヤクルト)
2008 3西勇輝
2009 2比嘉幹貴
2010 1駿太 3宮崎祐樹 4塚原頌平
2011 1安達了一 3佐藤達也 7小島脩平
2012 1松葉貴大 4武田健吾
2013 1吉田一将 2東明大貴 3若月健矢 8大山暁史
2014 1山崎福也 7西野真弘
2015 1吉田正尚 2近藤大亮 3大城滉二
2016 1山岡泰輔 2黒木優太

 2010年から6年連続でドラフト1位で指名した選手が、1軍で戦力となっている。だが、駿太や松葉、山崎福らはチームの中心となっているとは言い難く、物足りなさも残る。1軍に定着している選手は数多くいるものの、球界を代表するような大物は近年出てきていない。そこに1番近いのは、2015年の吉田正だろう。ドラフト1位から3位が1軍の戦力となっている2013年、2015年は悪くない。

今季低迷の2球団もドラフトで中心選手獲得

◯日本ハム
2006 高1吉川光夫(巨人) 大社7今浪隆博(ヤクルト)
2007 高1中田翔 大社3宮西尚生
2008 1大野奨太 5中島卓也 6杉谷拳士 7谷元圭介(中日)
2009 5増井浩俊
2010 1斎藤佑樹 2西川遥輝
2011 2松本剛 3石川慎吾(巨人) 4近藤健介 6上沢直之
2012 1大谷翔平 3鍵谷陽平
2013 2浦野博司 3岡大海 4高梨裕稔 6白村明弘
2014 1有原航平 2清水優心 3浅間大基 4石川直也 8太田賢吾
2015 1上原健太 2加藤貴之 5田中豊樹 6横尾俊建
2016 2石井一成

 自前で選手を育てる球団スタイルらしく、毎年のように複数人の選手が1軍の戦力となっている。その中でも2011年組は松本剛が今季レギュラーに定着し、近藤はヘルニアでの離脱があったものの、シーズン中盤まで打率4割をキープ。上沢もローテの一角を担うようになった。この3人は来季以降、チームの核となりそうだ。2014年は実に5人が1軍で出場機会を得ており、これからの日本ハムを背負う選手たち。2011、2014年は上々のドラフトだったのではなかろうか。

◯ロッテ
2006 高1大嶺祐太 大社7角中勝也
2007 高1唐川侑己
2008 6香月良仁 育5西野勇士 育6岡田幸文
2009 1荻野貴司 2大谷智久 3大嶺翔太 4清田育宏
2010 1伊志嶺翔大 2南昌輝 5江村直也
2011 1藤岡貴裕 2中後悠平(Dバックス3A) 3鈴木大地 4益田直也
2012 1松永昂大 3田村龍弘 4加藤翔平
2013 1石川歩 2吉田裕太 3三木亮 5井上晴哉 6二木康太
2014 1中村奨吾
2015 1平沢大河
2016 1佐々木千隼 2酒居知史 5有吉優樹

 今季最下位に沈んだロッテだが、ドラフトでの選手獲得に関しては、それなりの成果を残しているのではないか。特に2009年は素晴らしい。指名した全4選手が全員1軍の戦力となっており、これはなかなかに珍しいことだ。2011年や2013年もチームの中心となる選手を獲得している。ただ、2014年以降は少々寂しい成果となっている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)