創業期の成増1号店

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 誰もが知るあの有名外食チェーンも、最初は街の片隅に生まれた小さな店から始まった。「1号店」──そこは創業者の汗と涙、熱い思いが詰まった聖地である。『モスバーガー』の原点を辿ってみた。

『モスバーガー』は、ジューシーなパティとみずみずしい野菜が特徴のハンバーガーや、「ライスバーガー」など独創的なメニューで知られるハンバーガー店である。現在、国内店舗数は1300を超えるが、創業時は苦難の連続だった。

 誕生は1972年3月。大手証券会社に勤務していた櫻田慧氏が脱サラし、ロサンゼルスのハンバーガー店で修業後に東京・成増の商店街の一角に店を構えた。店の面積はわずか2.8坪。座席はなく5〜6人が立てばいっぱいの狭さだった。

「元々、青果店の倉庫として利用されている物件でした。1階で通りに面した理想の場所でしたが、物件として売りに出ていたわけではなかったので、毎日青果店の手伝いをして、貸してくれるようお願いしたと聞いています」(モスフードサービス広報IRグループ)

 創業者のハンバーガーに対するこだわりは凄まじかった。

「開業資金の約800万円のうち、600万円を商品開発費に充てています。修業した店のハンバーガーはチリソースでピリッと辛い感じですが、日本人に親しみやすい味にするにはどうしたらいいか、『コク』と『まろやかさ』に重点をおき、試行錯誤を繰り返してミートソースが完成しました」(同前)

 オープン当初は売り上げが立たない時期も続いた。しかし、地元客の口コミなどで徐々に広まり、“日本発の本格バーガー”の知名度は全国区へと躍進する。

 櫻田氏は1997年、60歳で急逝するが、その後は甥の厚氏(現会長)がチェーン拡大に尽力した。創業者の思いは今も受け継がれている。店頭清掃をする「朝課」もその一つだ。

「おもてなしの気持ちや清潔感といった基本を通じ、地域の方々との交流がなければ店は根付かない。そこで向こう三軒両隣をいつもキレイにするという創業者が行なっていた日課は、いまも全店で行なっています」(同前)

※週刊ポスト2017年11月3日号