トップ下で先発したが、アピールできなかった前田。「仕掛けても取られる回数は多いし」と反省しきりだった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[天皇杯準々決勝]横浜 1-0 磐田/10月25日/三ツ沢
 
 はっきり言って、ガッカリした。トップ下で先発した前田直輝に、だ。
 
「チームのことうんぬんより、自分のプレーに納得がいっていない。身体のキレも全然良くなかった。反省点しか残っていない。勝ったことが唯一の救い」
 
 前田本人も、自身のパフォーマンスにダメ出しをする。
 
 たしかに、褒められた内容ではなかった。前田のところで攻撃が“切れる”場面は少なくなかったし、磐田の集中した守備の前になかなか局面を打開できずにいた。
 
 もっとも、記者が落胆したのは、80分の交代直前のワンプレーだ。相手のペナルティエリア付近で、前を向いてボールを足下に収める。ワンフェイク入れて、シュートを打ってもおかしくないシチュエーション。実際、そうした前田の切れ味鋭いフィニッシュワークは何度も見てきたし、そこで“違い”を示すのが真骨頂でもある。
 
 しかし、前田が選択したのは、近くにいる味方へのパスだった。この試みは磐田DFのカットに遭い、チャンスはもろくも潰れた。
 
 極めて、消極的な判断だった。厳しい言い方をすれば、自らの存在価値を否定するようなプレーだった。どんな時も強気で、果敢に突破を図り、攻撃に勢いと迫力をもたらすのが持ち味ではなかったのか。
 
――あそこで打ってほしかったし、仕掛けてほしかった。
 
 正直に感想をぶつけると、前田は次のように応じた。
 
「たぶん、チームの全員、サポーターのみなさんもそう思ったはず。あそこで、打つところまで持っていけないのが、今の自分の力量。そこはもう、認めるしかない。シュートブロックされるイメージがちょっと湧いてしまったというか。試合勘とかドリブルのスピードとか、もっと上げていかないと」
 
 まるで負けたチームの選手のように、表情は冴えない。「仕掛けても取られる回数は多いし……。F・マリノスに来て1年半、こんなにも対人が弱くなっているのかと痛感するような試合だった」と反省しきりだ。
 
 このままフェードアウトするわけにはいかない。意地を見せてほしいし、もっとできるはずだ。アピールできたとは言えないが、この磐田戦が“底”だったとすれば、これ以上、落ちる心配はない。あとは這い上がっていくだけだ。
 
「チームの勝利をみんなに感謝するだけ。自分もステップアップできるようにやっていきたい」
 
 その静かな決意表明に期待したい。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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