各局の秋ドラマの共通点とは?(撮影:今井康一、尾形文繁、記者)

衆議院議員総選挙の終了を待って23日に放送された「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜」(フジテレビ系、月曜21時〜、篠原涼子主演)で、すべての秋ドラマがそろいました。

あらためてプライムタイム(19〜23時)で放送されている計14本のラインナップを見渡してみると……あることに気づいてしまったのです。

「明日の約束」(フジテレビ系、火曜21時〜、井上真央主演)、「監獄のお姫さま」(TBS系、火曜22時〜、小泉今日子主演)、「相棒」(テレビ朝日系、水曜21時〜、水谷豊主演)、「奥様は、取り扱い注意」(日本テレビ系、水曜22時〜、綾瀬はるか主演)、「科捜研の女」(テレビ朝日系、木曜20時〜、沢口靖子主演)、「ドクターX〜外科医・大門未知子〜」(テレビ朝日系、木曜21時〜、米倉涼子主演)、「刑事ゆがみ」(フジテレビ系、木曜22時〜、浅野忠信主演)、「ユニバーサル広告社〜あなたの人生、売り込みます!〜」(テレビ東京系、金曜20時〜、沢村一樹主演)、「コウノドリ」(TBS系、金曜22時〜、綾野剛主演)、「この声をきみに」(NHK、金曜22時〜、竹野内豊主演)、「先に生まれただけの僕」(日本テレビ系、土曜22時〜、櫻井翔主演)、「陸王」(TBS系、日曜21時〜、役所広司主演)、「今からあなたを脅迫します」(日本テレビ系、日曜22時30分〜、ディーン・フジオカ主演)。

主演の年齢は、60代の水谷豊さん(65歳)、役所広司さん(61歳)。50代の沢口靖子さん(52歳)、小泉今日子さん(51歳)、沢村一樹さん(50歳)。40代の竹野内豊さん(46歳)、篠原涼子さん(44歳)、浅野忠信さん(43歳)、米倉涼子さん(42歳)。30代のディーン・フジオカさん(37歳)、綾野剛さん(35歳)、櫻井翔さん(35歳)、綾瀬はるかさん(32歳)、井上真央さん(30歳)。

そして20代は……誰もいません。計14人の平均年齢は44.5歳と、ドラマ史上まれに見る高齢だったのです。

20代主演俳優は朝ドラ経験者に集中

ちなみに、今年連ドラ主演を務めた20代俳優は、1〜3月の冬ドラマでは、西内まりやさん(放送当時23歳)、吉高由里子さん(同28歳)、波瑠さん(同25歳)、松坂桃李さん(同28歳)の4人。4〜6月の春ドラマでは、波瑠さん(同25歳)、桐谷美玲さん(同27歳)、濱田岳さん(同28歳)、多部未華子さん(同28歳)、窪田正孝さん(同28歳)の5人。

7〜9月の夏ドラマでは、窪田正孝さん(同29歳)、渡辺直美さん(同29歳)、高畑充希さん(同25歳)、武井咲さん(23歳)、福士蒼汰さん(同24歳)の5人。減っているうえに、その大半を中高年視聴者の多い朝ドラ経験者が占めています。

かつて「ドラマ黄金期」といわれた1980年代後半から1990年代は、20代の主演俳優が主流でした。織田裕二さん、福山雅治さん、吉田栄作さん、唐沢寿明さん、江口洋介さん、木村拓哉さん、鈴木保奈美さん、中山美穂さん、山口智子さん、深津絵里さん、常盤貴子さん、和久井映見さん、松雪泰子さんなど、次々に20代のスター俳優が誕生。以降、現在までの十数年でジワジワと高齢化が進んでいたのです。

「平均年齢44.5歳」を一般企業に置き換えると、課長から部長クラスの管理職にあたり、20〜30代の社員とは目線が異なるのは明らか。やはり若年層よりも、中高年層の目線で作られている様子がうかがえます。

以前のドラマ業界では考えられないほど高齢に偏っているのは、なぜなのでしょうか?

1つの収入と評価指標への依存

そのヒントは、今秋に放送されているテレビ朝日の3作に見え隠れしています。「相棒」「科捜研の女」「ドクターX」とすべてシリーズ作であり、主演はいずれもベテラン俳優。さらに、中高年層の好む刑事・医療ドラマでメインターゲットにしているのです。

テレビ朝日ほど顕著ではありませんが、他局も「30代以上の視聴者を重視する」という基本スタンスは同じ。だから30代以上の主演俳優を起用し、事件・病気・社会問題などの骨太なテーマを採用しているのです。

各局が10〜20代の若年層よりも、30代以上の中高年層をターゲットにしている理由は、視聴率の獲得にほかなりません。視聴率を上げるためには、録画やネットではなくリアルタイムで見てもらうことが必須。その点、最もドラマをリアルタイムで見ているのは中高年層であり、長年にわたってしみ付いた視聴習慣も期待できるだけに、徹底して狙い撃ちしているのです。

しかし、ご想像のとおり、この戦略は正しいといえません。みなさんの属する業界や企業に置き換えて考えてください。「数年後、数十年後のことを考えずに、目の前の売り上げだけを追いかけている」「売り上げダウンを止めるための抜本的な対策を講じていない」ことがどれだけ危険かを……。業界は衰退し、企業は縮小へという近未来を想像してしまうのではないでしょうか。

問題の元凶になっているのは、CM収入に依存している収益構造。しかも、テレビ業界の評価指標が、ほぼ視聴率のみであることが現在の苦境につながっています。もしみなさんの属している業界や企業が、「1つの収入に依存している」「評価指標が1つしかない」としたら不安を抱いてしまうでしょう。

顧客と収入が減り、新たな顧客と収入を作り出せていない。この現状を変えられないことが、連ドラ主演俳優の極端な中高年化として表れているのです。

作る人、出る人、見る人すべてが中高年化

高齢化しているのは、主演俳優や視聴ターゲットだけではありません。ドラマのスタッフは脚本家や演出家などを中心に高齢化が著しく、キャストもバイプレーヤーブームで中年の助演俳優が増える一方。実際、取材で撮影現場へ行くと、かつて若手のスタッフと俳優が発していた華やかさはなく、中年のスタッフと俳優とが醸し出すシックなムードであふれています。

現場のスタッフでは、やっと若手社員の起用を進めはじめたテレビ局もありますが、ほかの業界と比べると人材登用や世代交代の遅さは歴然。「50・60代でも管理職にはならず、現場で作り続ける」という人が多く、「育てよう」よりも「自分で作ろう」という発想なのです。

キャストでは、ジャニーズ事務所やオスカープロモーションなど、これまで多くの若手俳優を主演に送り込んできた芸能事務所の主演俳優が減っているという事実もあります。これは視聴者が「俳優にはルックスよりも演技力や演技実績を求める」傾向が強くなったことも影響しているでしょう。

テレビ番組を作る人も、出る人も、見る人も、中高年化する一方。長きにわたってエンターテインメントのトップに君臨し続けるために、目の前の売り上げを追い求め、新規顧客の獲得や若手の育成を後回しにしてきたことが、ここに来て業界や各局にダメージを与えているのです。

ビジネスシーンでも、「トップに君臨している企業ほど、その座を守ることばかり考えてしまい、ピークアウトを招いてしまう」というケースは少なくありません。テレビ業界の苦境は、「成功の陰に潜む課題から目を背けない」「時代の変化に対応し、未来の種をまき続ける」ことの大切さを物語っているように見えます。

衆院選速報番組に見るニーズの偏り

ここではドラマの話を書きましたが、情報番組やバラエティ番組も状況に大差ありません。スタッフ、キャスト、視聴者のすべてで中高年化が進み、ときどき若手が頭角を現しても短期間で埋没してしまうというケースがよく見られます。

思えば22日の20時以降は、ほぼすべてのテレビ局が衆議院総選挙の速報番組を放送していました。国の重大事とはいえ、「4〜8時間超にわたって、業界全体で横並び放送をしなければいけないのか?」は別問題。若年層に限らず、中高年層のなかにも「ほかの番組を見たかった」という人は少なくないでしょう。このあたりに潜在的な視聴者ニーズに応えきれないテレビ業界の危うさが見えるのです。

ツイッターなどSNSの動きを見ると、若年層を中心に「やっぱりテレビは面白くない」「ネットならいろいろ見られて楽しい」という極端な色分けをしていました。「テレビは中高年層が見る古いメディア」と見なされないための変化が求められているのは間違いないでしょう。

一方、テレビにとって頼みの綱である中高年層も、決して安泰とはいえません。Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Hulu、dTV、DAZNなどの動画配信サービス、YouTubeやニコニコ動画などの動画共有サービスが、手軽に自宅のテレビ画面で見られるようになり、ジワジワと中高年齢層にも浸透しはじめています。

さらに、11月2日から4日間にわたって放送される、稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さんの「72時間ホンネテレビ」(AbemaTV)が成功したらインターネットテレビの視聴者層が広がり、地上波のテレビ視聴者に食い込んでいくでしょう。

ただ、危険な兆候があるとはいえ、テレビ業界や各局には底力がありますし、V字回復する可能性を秘めています。その最たるところは制作力であり、社内に蓄積されたノウハウ。これを「中高年層に向けてのみではなく、若年層を虜にするようなコンテンツ作りに使っていけるか」が鍵を握っているのです。このまま中高年化の波に流されてしまうのか。それとも、波にあらがうように若年層にもリーチしていくのか。これまで以上に、テレビ業界トップたちの采配に注目が集まるでしょう。

私がテレビ業界や各番組を取材していて感じるのは、「元気で仕事のできる中高年社員が多い」こと。他業界と比較しても決して劣っていないだけに、無理な世代交代をする必要はありません。求められるのは世代交代ではなく、中高年社員と若年社員が“世代並列”すること。それぞれが強みを活かしてコンテンツ制作することができれば、幅広い世代に対応した番組ができるはずです。

毎日その話題がネット上をにぎわしているのは、いまだ日本中の人々にとって、テレビは身近かつ巨大な業界だから。その行方は少なからず、みなさんの働く業界にとっても何らかの参考になるのではないでしょうか。