社長・上司が「上から目線」で過ごしているような会社は衰退していきます(写真 : tkc-taka / PIXTA)

風通しがよい会社とは、どのような会社でしょうか。「情報を社員が共有していること」「社内に自由な雰囲気があること」「社内の意識が縦関係ではなく横関係であること」などが、その要素といえるでしょう。

あるいは、お互いが自分の考えを自由に伝えることができる、ということも重要かもしれません。風通しのよい組織にするにはいろいろな方法がありますから、これですよと限定して言うことはできませんが、いくつかのヒントを記そうと思います。

なお、ここでは「社長・社員」という言葉を使いますが、自分が部長や課長の場合には、それぞれを「上司・部下」と置き換えてお読みください。

「上から目線」で接してはダメ


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なにより重要なことを1つだけあげるとすれば、社長が、「上から目線で社員に接しないこと」です。この連載で繰り返し伝えていますが、社長という肩書は役割を示しているにすぎません。にもかかわらず、まるで上下関係であるかのように勘違いする人がいかに多いことか。

上から目線で、傲慢そうに言われれば、社員も萎縮して、ものを言いにくい、尋ねにくい、確認しにくいということになるでしょう。いきおい意思疎通は不十分となり、社員は、社内は言いたいことも言えず、聞きたいことがあっても聞けない重苦しい雰囲気が漂うようになります。

したがって、なにより大事なことは、それぞれの立ち位置を、上下関係、縦関係ではなく、水平関係、横関係で考えることです。社長は、そのことを十分承知して振る舞い、発言し、社員と接するべきでしょう。

社内の風通しが悪いという場合には、99%は、社長の責任であるということを、社長は心しておくべきです。おおよそ、ひとつの組織の問題は、「社長一人(いちにん)の責任」と言われますが、まったくそのとおりだと思います。風通しのいい会社・組織をつくるためには、まず、社長が上から目線で社員と接しないことが重要です。

2つ目に重要なことが「規則、拘束を可能なかぎり少なくすること」です。おおよそ、人間は自由でありたいという願望を持っています。その自由であるということによって、自分で自分の持って生まれた能力を、自分でも思いがけず発揮することができるわけです。民主主義が「自由」を、人間の基本的人権として認めるのはそのゆえんです。社員が、風通しがいいと感じるのは、この「自由」を感じるときです。

そういうことから、社員をできるだけ規則や拘束で縛らないこと、官僚的な繁文縟礼(はんぶんじょくれい)を廃すことでしょう。

「自由だ」と感じさせることが重要

そのためには、社長が、「方針(=基本理念+具体的目標+最終目標)」を明確に提示し、この方針に沿って活動しているかぎりにおいては、社員の自由にさせることが求められます。社員に規則や拘束、束縛を感じさせない、いや、むしろこの会社は自分の考えで活動できる、自由だと社員に感じさせる。そうなれば自然に社内は風通しがよくなると思います。

3つ目は、可能なかぎり、「役職、階層を少なくすること」。日本の会社は役職が多すぎます。どちらがどのような立場なのか、役割なのかわからない。部長がいて、副部長がいて、部長代理がいてとなると、誰に頼めばいいのか、役割の違いはどうなのか、また、会社によって内容が異なりますから、外部的にも大いに困ります。

ある大企業にはなんと40以上の肩書があるということです。もう「肩書のインフレ」「過の災い」としかいえない状態。これでは決済も時間がかかりすぎますし、また、意思疎通もそれぞれの「役割の壁」で遮られ、なかなか円滑に行き交うことはできません。社員も誰に確認したらいいのか、誰に相談したらいいのかわからない。わからないから、なんとなく、ものが言えない。心のなかで思い悩んでいるだけということになります。

ということからすれば、肩書というか、階層というものはできるだけ簡素にしたほうがいいと思います。以前、名誉会長、最高顧問、顧問、相談役、副会長などというポジションはやめたほうがいいのではないかと書きましたが、それだけでなく、副部長、部次長とか部長代理、あるいは課長代理、課長代行などは廃止し、簡素な階層や役割分担にすべきでしょう。

もちろん、それぞれの事情がありますから、一概には言えないとは思いますが、階層の多さが往々にして、風通しを悪くする一因であることは確かなように思います。

4つ目は、それぞれ、「社長は社長の、社員は社員の役割を明確にすること」です。社長は監督。社員は選手。社長は方針を明確かつ的確に提示した後は、大局を見て指示を出す。そして社員は懸命にグラウンドでプレーする。そういう関係といえるかもしれません。

それにもかかわらず、プレーしている選手のなかに監督が入っていって選手のやる気をそぐようなことを言う。まして、試合の邪魔をするとなれば、これは監督失格ということでしょう。

同じように、社長として、助言、アドバイスをすべきは当然でしょうが、社員の働きや努力に言わずもがなの口出しをしたり、やる気を失わせるような言動や過度の介入をしたりすると、社員は萎縮し、もの言わざる社員になっていくでしょう。そうなれば、社内の風通しが悪くなるのは当たり前です。それぞれの役割を可能なかぎり完璧に果たす。果たしつつ、お互いに横の関係、水平関係で心をひとつに合わせていくということが、社内の風通しをよくすることになるのではないかと思います。

可能なかぎり情報を共有しよう

5つ目は、「社内で可能なかぎり、情報を共有すること」。とりわけ、経営実績、あるいは、会社が今なにに取り組んでいるのか、具体的に社員や部下に話をすることです。自分は与えられている仕事は一生懸命やる。しかし、その今の自分の仕事が、会社にどれだけ貢献したのかわからない。さらには、自分の今取り組んでいる仕事が、会社全体のどの部分なのかがわからないということであれば、社員同士で会話すらできない。相談すらできない。なにより、自分の仕事に誇りが持てない。やる気が出てこないということになるでしょう。

社長は、経営結果を社員に公表することもすべきでしょう。経営幹部だけが承知しているという、いわば秘密主義は必ず、腐敗、隠蔽、そして倒産ということになります。また、社員にガラス張りで接することで、社員からも助言やチェックをしてもらえるということは、社長自身にとっても、いわば「経営の杖」を持って歩くようなものですから、自分自身の経営を進めていくうえで、転ばないことにもなります。

そのようなことをすれば、経営数字、経営内容が、外部に出てしまう。それは困ると思うかもしれませんが、およそ外部に漏れて困るような経営こそ問題です。しかし、社長が正直に社員に伝えれば、社員はかえって責任を感じて口外しないものです。秘密にするから、外部に漏れるのです。言えないから、内部告発になるのです。社員と疑心暗鬼で接しては、風通しのいい社内、風通しのいい組織をつくり上げることはできないでしょう。

「風通しのいい会社」「風通しのいい組織」をつくるための方法は、まだまだあるでしょう。もっといいやり方で、成果を上げている会社もあるでしょう。それぞれに工夫をしながら、「風通しのいい会社」にするために努力を重ねていきたい。それが、社員が心と力を合わせ、自分が立っている踏み台=会社なり組織を確実に強固なものにしていくことになるということです。