次世代デザインコンセプト「VISION COUPE」。クルマ本来の美しさを表現する(撮影:風間仁一郎)

2年前の東京モーターショーで、待望のロータリーエンジン復活を匂わせるコンセプトモデル「RX-VISION」を発表したマツダ。しかしこの間、ロータリーの市販化に関する発表はなく、今年の東京モーターショーでアップデートがあるのかが、ファンの間では議論を呼んでいた。

10月25日、報道陣に公開された東京モーターショー(一般公開は10月28日から)。結局、マツダブースではロータリーを載せた車両が登場することはなかった。代わりに世界で初めてお目見えしたのが、次世代のデザインや技術を盛り込んだコンセプト車2車種だ。

「魂動」デザインが深化


シンプルな「ワンモーションフォルム」が特徴という(撮影:風間仁一郎)

1つ目が次世代デザインコンセプト「VISION COUPE(ヴィジョン・クーペ)」。2012年以降マツダ車に採用されてきた「魂動」デザインを深化させた。マツダのデザインを統括する前田育男常務は「マツダのデザインは哲学であり普遍的なもの。今回は要素を極限まで削り、落ち着きのある凜とした表現を目指した」と語る。

コンセプト車はクルマらしい美しさを持つクーペデザインを守りながら、シンプルさを追求した。その凹凸から生まれる光は男性的。デザインを担当する田中秀昭氏によると、艶やかで躍動的なスポーツカーをイメージしたRX-VISIONは女性的で、両者はいわば「夫婦関係」にあるという。


「魁コンセプト」。次世代技術「SKYACTIV-X」を搭載した(撮影:風間仁一郎)

もう一つのコンセプトモデルは、ハッチバックの「魁(かい)コンセプト」だ。環境性能と走行性能を高い次元で両立した「SKYACTIV(スカイアクティブ)」技術は2019年に刷新され、新型車への導入が始まる。「魁コンセプト」はその第一弾をイメージしているという。

近年のマツダらしい鮮やかな赤で華やかさを出しつつも、角の取れた”まろやかな”デザインになっている。スカイアクティブ技術の要ともいえる次世代エンジンは「SKYACTIV-X」と名付けられ、魁コンセプトにも搭載されている。

自己着火するガソリンエンジン

SKYACTIV-Xは他社が研究開発しながら、かなえられなかった「圧縮着火」を取り入れた「SPCCI」というマツダ独自の技術を取り入れたものだ。

この新エンジンの特徴は、パワーと環境性能を持ち合わせているところにある。平たく言うと、ガソリンの力強さとディーゼルの燃費のよさを両立できるよう、ガソリンをディーゼルのように自己着火させようとするものだ。そうすることで、従来よりも少ないガソリン量で同じだけのパワー(出力)を出すことができる。

そのためにはガソリンと空気を混ぜた混合気を高圧にする必要がある。高圧化までは現行エンジンでもある程度メドがついていたが、開発の途上で自己着火が可能な温度範囲がたったの3度しかないことがわかった。

それ以外の温度ではノッキングと呼ばれる爆発的な異常燃焼が起きてしまう。そこでマツダは火花を飛ばし点火するスパークプラグの制御に独自の調整をし、エンジン内部を高圧に保つことで、自己着火が可能な温度範囲を50度と飛躍的に広げた。

開始から2年超、マツダはようやく次世代エンジンの商品化のメドをつけた。この新技術には他社のエンジニアもそろって賞賛を送る。

現在、開発陣は約2年後に迫った製品化に向け、最後の調整を進めている。ノッキングによるカラカラ…という振動が出るのを抑えることが最大の課題だ。点火のタイミングを適正化したり、空気量を調整して混合比率を安定させたりすることで、ノッキングは解消できるという。

「まだエンジンをやっています」

東京モーターショーでの出展の目玉は、何といっても電気自動車(EV)や自動運転技術だ。そうした他メーカーの動向を横目に、マツダはあくまでもエンジンにこだわる。SKYACTIV-Xの開発責任者・人見光夫常務は「まだエンジンやってる人見です」と自らを紹介する。その裏にあるのは、このエンジンの環境性能に対する強い自信だ。


ガソリンの自己着火を可能にした新世代エンジン。マツダの技術がつまっている(記者撮影)

「2030年でも内燃機関車が全体の7割を占める。そこで実質的かつ効率的なCO2削減を実現する。社内的には、火力発電を使った電気自動車よりもトータルのCO2排出を減らそうと話している」(人見常務)

エンジンだけではない。魁コンセプトでは、車のボディや足回りもすべて刷新した。ボディの接合面に特別なボンド材を使い、不快な振動を吸収して熱エネルギーとして放出する技術や、人間の歩き方をマツダ病院や大学と研究し、歩行時の身体の動き方をもとに足回りやシートを設計した。これらによって、ドライバーにとってバランスのとりやすい運転が実現されるという。

では、ファン待望のロータリー技術は置き去りなのだろうか。マツダのある役員は「ロータリースポーツも開発を続けている」と打ち明ける。EV開発はトヨタ自動車との提携を軸に進めるマツダだが、独自の技術開発にこだわり続ける。ファンにとっては、これからも目が離せない存在となりそうだ。