仏ル・モンド紙が「安倍首相の改憲の本質は、大日本帝国の復活」と喝破!「天皇が安倍の歴史修正主義に抗っている」との記述も

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 衆院選で大勝した安倍首相は、「謙虚」をくり返し強気な言葉こそ控えているものの、このあと改憲に向けた動きを本格化させるのは明らかだ。安倍改憲の背後にあるもの、その危険性について海外メディアも大きく報じている。

 フランスのル・モンド紙は、今月20日の電子版に「安倍晋三、受け継がれし歴史修正主義」(Shinzo Abe, le révisionnisme en heritage)と題した特集記事を掲載。約3000語に及ぶ長文で、内容は安倍晋三の家系や生い立ちを紹介しながら、安倍の歴史修正主義の危うさを鋭く指摘するというものだ。海外から安倍首相がどう見えているのか、その視点を知るうえで極めて興味深い記事なので、部分的に訳しながら紹介してみたい。

 まずル・モンドは、北朝鮮との緊張関係や中国との対立によって、安倍の「国難」との主張が強化されていると指摘。興味深いことにル・モンドは、第二次安倍政権発足以来、防衛予算が増加し続けていることを指摘する一方、「安倍氏は、各国の多くの指導者と比べればとりわけナショナリストとは言えないし、再軍備に熱狂しているわけでもない」と評すが、「その代わり」と続け、こう強調している。

〈そのかわり、安倍氏は歴史修正主義者(révisionniste)である。たとえば、彼の礼賛する憲法改正は、日本の帝国主義の復興を目指し、1930年代初頭から第二次世界大戦終戦までの日本軍が犯した残虐行為の数々を過小評価ないしは否定しようとする広大な企てのなかの一つだ〉

 さらにル・モンドは、日本でも大正時代には民主化運動や反戦運動が盛んだったことに触れたうえで、戦後日本が大正デモクラシーと似た傾向に回帰したことを「日本の歴史の断絶」として否定的に捉える右派の文脈のなかに安倍を位置づけている。

〈1945年の敗戦は、日本の歴史の深い断絶となっている。しかしその断絶は、1910〜1920年に日本が経験していた民主主義への回帰と軍国主義の拒絶を導いた。安倍晋三を生み落とした日本の右派は、国際社会におけるコンプレックス(劣等感)から解き放たれ、経済的にも軍事的にも強い、ある種のJapon éternel(引用者注:悠久不滅たる神国日本というような意味)を取り戻すため、戦後という"ページをめくって"この断絶を抹消したいのだ。「Japan is back!」。安倍氏は第二次政権初期の2013年(引用者注:2月、米ワシントンのシンクタンクSCICでの演説)に、そう宣言している。歴史的観点からみれば、安倍氏が権力にいたる道において目立った事実として残るであろうことは、激しい外交活動と経済政策よりも、その否定的な色彩を帯びた歴史修正主義だ〉

●大日本帝国の復権を狙う安倍首相と、それに抗う天皇というパラドックス

 その後、記事は岸信介が戦争を引き起こした政権の重要メンバーであったこと、戦後戦犯として逮捕されたことなど一族のヒストリーを紐解きながら、安倍晋三の右派政治家としての経歴を紹介。ネットを駆使したメディア戦略や報道に対する圧力の問題にも触れながら、森友・加計学園問題で支持率を急落させたが北朝鮮のミサイル問題で復調、これを奇貨として解散総選挙に打って出ると報じ、「勝てば修正主義のアジェンダ(行動計画)を続けることができる。それは、敗戦以来の右派のアジェンダではあるが、同時に安倍氏の家系的遺産の賜物でもある」と分析している。

 さらに、ル・モンドは安倍晋三という政治家が伸長したもうひとつの背景として、バブル崩壊による経済ナショナリズムへの致命的打撃と、その後の長引く不況を指摘。平和主義に対する疑念も膨むなかで、右派が、日本の"作られた神話"に遡る歴史に根差したナショナルアイデンティティの感覚をかきたてようと企てていると記している。

〈第二次世界大戦をめぐる歴史認識は常に左右の思想対立の中心にあったが、日本の精神の特異性に基づく神話的アイデンティティは副次的なテーマであった。それ以降、ネオ・ナショナリズムのアイデンティティは、論争の的となっている歴史の書き換えと組み合わされて、国家の最高レベルが示す統合の物語を志向している。それには二つの面がある。安倍氏の言う「美しい国」、起源への回帰と、軍国主義時代に犯した残虐行為を最小化どころか否定しながらなされる帝国日本の復権とである。逆説的だが、明仁天皇は、天皇という立場に課された制約上可能な範囲で、こうした歴史修正の動きに抗っている〉

 本サイトでも度々触れてきたように、安倍政権は単なる外交問題の一つとして歴史認識問題を位置付けているのではない。安倍が日本会議らと歩調を合わせ進める歴史修正主義は、復古調の国家主義と確かに対になっている。日本国内のマスコミが歴史修正主義と国家主義の綿密な関係をほとんど報じないなか、海外メディアがこうした指摘をしているのは極めて重要だろう。

 事実、2016年の伊勢志摩サミットの際、自らの強い意向により各国首脳を伊勢神宮に招いたが、周知のとおり、皇祖神とされる天照大神が祀られている伊勢神宮は、戦前・戦中の日本を支配した国家神道の象徴である。ル・モンドの記事では、わざわざ安倍首相が伊勢神宮に各国首脳を招いたことこそ、日本の右派が取り戻そうとしている「Japon éternel」であると強調したうえで、安倍が当選後すぐに身を置いた自民党の「歴史・検討委員会」とその系譜を継ぐ活動を支援していることに言及。〈日本の戦争は自衛であって侵略ではない〉という認識に積極的に加担してきたことを記している。

●愛国を謳いながら対米従属という右派の矛盾を体現する安倍政治

 記事の最後の章では、安倍政権の国際政治が、ナショナリストでかつ対米従属派であるという「右派の両義性」の象徴であると断じ、安倍の歴史修正主義も相まって、東アジア情勢にも悪影響を与えているとする。そのうえで、再度、安倍の悲願である9条改憲についてこう述べている。

〈日本が独自の権限を主張し、軍隊の法的地位を付与し、国際安全保障協力を促進する法的枠組みを有することを妨げるものは何もない。しかし、帝国日本軍の残虐行為(1937年の南京虐殺や「慰安婦」など)に関する立場を争う人物が憲法改正のタクトを振るっていることは、日本の世論に明らかに不安感を与えているのである。〉

 どうだろうか。ル・モンドといえば、これまでも戦後70年の安倍談話について、「安倍総理大臣個人として、過去の侵略や植民地支配に対する謝罪を一切行っていない」とはっきり指摘。サミットのときに安倍首相が"世界経済の現状はリーマンショック前の状況とそっくりだ"という趣旨の捏造発言を行なった際も、「安倍晋三の無根拠なお騒がせ発言がG7を仰天させた」と銘打ち、しっかり批判していた。

 ル・モンドだけではない。同じく仏高級週刊誌「ロブス」や英経済紙「エコノミスト」は、日本のマスコミが安倍政権と日本会議の関係に注目する前から〈経済的改革者のイメージとは程遠く、日本の総理大臣は大日本帝国への回帰を目指す極右、歴史捏造主義団体と一心同体である〉(ロブス)、〈(日本会議は)憲法改正に必要な国民投票の実施を目指し、100万人の署名を集めている。憲法9条を撤廃し、伝統的な家族観を大事にするような憲法を求めている。2012年に作成された自民党改憲草案は、こうした日本会議の主張をいくつも採用している〉(エコノミスト)などと報じていた。他にも、安倍首相がオバマの広島訪問を政治利用したときも、米紙「ニューヨーク・タイムズ」や英紙「ガーディアン」などは安倍政権に批判的に報じていた。

 一方の日本のマスコミはどうだろう。東京新聞など一部を除いては、安倍首相を名指しして歴史修正主義者と批判することもほとんどない。今回の選挙でも、「極右集会」「おとなの塚本幼稚園」と評された安倍首相の街宣の実態をまともに報じるメディアもほとんどなかった。海外メディアから安倍政権が「極右」「ナショナリスト」「歴史修正主義」などとたびたび批判されていることについても、ベタ記事で触れるだけだったり、わざわざ政権を擁護する文化人や学者のコメントを入れるなど、あからさまに"忖度"している。しかもこのままでは、衆院選に大勝した安倍首相が、憲法改正に動き出すなかで、今後、さらに国内マスコミが萎縮していくのは必至だろう。

 しかし海外メディアによる安倍政権批判の多くは、ネトウヨや右派が喧伝するような陰謀論的日本叩きなどではなく、今回のル・モンド紙がそうであるように、いずれもきわめて冷静かつ客観的な指摘だ。国内メディアにもなんとか気骨ある報道をのぞみたいのだが......。
(編集部)