「最期は自分の意思で…」韓国でついに施行される“尊厳死法”とは

写真拡大

韓国で、「尊厳死」を選択できることになった。

韓国の保健福祉部(省に相当)は10月22日、患者の意思により延命治療を中断できる「延命治療決定法」を同23日から来年1月15日まで試験的に実施し、来年2月から正式に施行することを明らかにした。

これにより、対象となる患者は、心肺蘇生術や人工呼吸器着用などの延命治療を中断できるようになった。つまり、条件をクリアすれば、自らの意思で一生の終わりを決められるようになったということだ。

報道によれば、試験期間の開始直後から実施機関には問い合わせが殺到しており、10月25日現在、37人が事前同意書を作成したという。

10月24日には、末期ガンの治療のため入院中の女性患者が、試行後初めて「尊厳死」を選択している。

対象となる患者は?

このニュースは日本でも話題になっているが、全43条で構成された同法について詳しく見ていくと、延命治療中断の条件が厳しく設定されていることがわかる。

まず、延命治療中断の対象となるのは、「臨終の過程にある患者」だ。

具体的には、「蘇生の可能性がなく、治療しても回復せず、急速に症状が悪化し、死が差し迫った状態」(同法第2条第1号)を指し、実際には担当医師と該当分野の専門医1人が判断するという。

ここには末期ガン患者だけではなく、病気や事故によって同様の状態となったすべての患者が含まれる。

中断できる「延命治療」の内容には、「心肺蘇生術、血液透析、抗ガン剤投与、人工呼吸器着用の医学的施術によって臨終過程の期間だけを延長すること」(同法第2条第4号)が該当する。

なお、延命治療を中断しても、痛みを緩和するための医療行為と栄養分と水分の供給、酸素の単純供給は停止してはならないとされている。

意思確認の方法は?

患者の意思を確認する方法も細かく決められている。

同法によれば、担当医師は、次のような場合にのみ延命治療を中断できるのだという。

一つは、患者が医療機関で「延命治療計画書」を作成している場合だ。

「延命治療計画書」とは、患者の意思に沿って、医師が延命治療を行わないことを記した文書のこと。患者から作成を希望することはもちろん、医者が患者を説得して作成を要請することもできる。

作成の際、医師には、病気の状態や治療方法、延命治療の方法、計画書の変更・撤回の手続きなどについて説明する義務があると定められている。

もう一つは、患者が「事前延命治療意向書」によって意思表示をしている場合だ。

「事前延命治療意向書」とは、その名の通り事前に延命治療中断などに関する意思を表明したものを指す。

「延命治療計画書」がガンなど特定の疾患の診断を受けた「末期患者」や臨終過程にある患者が作成すると規定されているのに対し、「事前延命治療意向書」は19歳以上であれば誰でも作成できる。医療機関など指定された機関で登録できるが、本人が直接作成すること、本人の自発的な意思によって作成することなどの条件が定められている。

医師が「事前延命治療意向書」の内容を患者に確認できる場合は、この書面の内容が患者の意思として認められる。

また、患者に十分な意思能力がないことを担当医師と該当分野の専門医1人が認めた場合なども、「事前延命治療意向書」が患者の意思とみなされる。

なお、「事前延命治療意向書」はいつでも変更・撤回が可能だ。

最後に、どちらの文書も作成しておらず、患者が医学的に意思表示ができない状態にあると判断されている場合は、家族の陳述を基に患者の意思を判断することになる。

ただし、その場合の条件は厳しい。

延命治療中断に関する患者本人の意思として判断するに十分な期間、一貫して示された意思について、家族2人以上が一致した陳述をできる場合にのみ、認められるのだという。ほかの家族から異なる証言があった場合には延命治療を中断できない。

韓国では精神病院への“強制入院”問題も起きていただけに、細かい条件が設けられているのかもしれない。
(参考記事:健康な人が“強制入院”させられる!? 韓国で精神病院の患者数が増加するワケ

ここでいう「家族」とは、配偶者、直系卑属、直系尊属、そして上記3つに該当する人がいない場合は兄弟姉妹を指すという。「家族」が1人しかいない場合は、その1人の陳述でも認められる。

それでも本人の意思が確認できない場合は、「家族」全員の合意があれば延命治療を中断できるが、この方法は試験期間中は除外されている。

このように延命治療の中断には細かく複雑な条件が設定されているが、尊い命を扱う問題だけに、それも当然かもしれない。

「延命治療決定法」では、生と死の意味と価値を広く伝えることなどを目的に、毎年10月の第2土曜日を「ホスピスの日」に設定しているが、同法が今後、韓国社会にどんな影響を与えていくか注目していきたい。

(文=S-KOREA編集部)